診療科

産婦人科

Department of Obstetrics & Gynecology

無痛分娩

当院産婦人科は、家族の絆を大切にし、安心・安全な分娩を提供できるように尽力してきました。その方針は変わらず、近年の分娩多様性に対応するべく、2023年9月から、希望者に実施する無痛分娩を開始しました。

無痛分娩とは、麻酔で陣痛の痛みを和らげて行う分娩です。硬膜外麻酔を使用することが多く、その他、硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔を併用する方法もあります。

硬膜外麻酔も脊髄くも膜下麻酔も背中から行う局所麻酔で、意識がなくなる全身麻酔ではありません。手術にも用いる麻酔で、痛みを緩和させますが、副作用もあります。

硬膜外麻酔の仕組みや副作用について、理解した上で無痛分娩を検討することをお勧めいたします。当院では2ヶ月に1回(奇数月、土曜日午後)、無痛分娩の説明会を行なっているので、検討されている方は参加して下さい。

当院の無痛分娩について

1.無痛分娩の麻酔方法

計画分娩誘発で硬膜外麻酔による無痛分娩を行なっております。
もし、計画分娩の予定日前に自然陣痛が発来してしまった場合は、入院してから医師の体制が整い次第開始します。

硬膜外麻酔について:

背骨の中を通っている硬膜の外側(硬膜外腔)まで、細いカテーテルを進めて、そこに局所麻酔薬を注入し、腹部の痛みを和らげます。麻酔の効き具合を確認後、ポンプを用いて持続的に局所麻酔薬を少量ずつ注入していきます。

硬膜外麻酔のカテーテルを挿入するときは図のような体位をとります。
全身状態を確認しながら行うので、血圧計、心電図モニター、胎児心拍モニターなどを装着します。

2.無痛分娩開始のタイミング

目安は子宮口5cm開大する頃です。急に陣痛が進むこともあるので、タイミングがずれてしまうこともあります。

3.無痛分娩担当者と分娩管理(常勤麻酔科医師:1人 非常勤麻酔科医師:2人)

硬膜外麻酔は麻酔科専門医が挿入します。その後の無痛分娩管理は麻酔科専門医、産婦人科専門医、助産師、看護師が行います。
★無痛分娩を安全に行うため、産婦人科スタッフは以下の研修を修了しております。

  • B L S(一次救命処置)プロバイダーコース
  • J―C I M E L S(母体救命システム)ベーシックコース
  • N C P R(新生児蘇生法)専門コース
  • J A L A(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)提供の講習会

4.無痛分娩の効果(メリット)

  • 陣痛の痛みが軽減される。分娩前の恐怖心が減る。産後の体力が温存される。
  • 緊急帝王切開への対応がしやすい

5.無痛分娩の副作用(デメリット)

血圧低下(麻酔効果によるもの) 掻痒感 発熱 尿意を感じにくい 歩行がしにくい。 陣痛が弱くなり陣痛促進剤が必要になる。腹圧がかけにくくなり、吸引分娩や鉗子分娩が増える。硬膜外穿刺後の頭痛の出現。カテーテル穿刺部の感染や血腫形成。
稀ではありますが、重大な合併症

  • 高位脊髄クモ膜下麻酔(硬膜外カテーテルがくも膜下腔に迷入し、下肢の感覚・運動麻痺、徐脈 血圧低下 呼吸抑制、意識消失と広範囲に麻酔効果が及ぶ)
  • 局所麻酔中毒(硬膜外カテーテルが血管内に迷入し、血管内に局所麻酔薬が投与される→耳鳴り、味覚異常、痙攣 呼吸抑制 意識消失)
  • アナフィラキシーショック(重篤なアレルギー反応)

これらの重大な合併症に注意しながら、少量ずつ麻酔薬を投与していきます。

6.無痛分娩申込みと入院の流れ

  • 35週まで・・・無痛分娩説明会に参加 無痛分娩同意書の配布
  • 36週・・・無痛分娩同意書の提出(無痛分娩申込みとなります)
  • 37−38週・・・診察や前回出産週数を参考に分娩誘発日を決定
  • 39週ごろ 入院

7. 費用

  • 無痛分娩説明会に参加した方は10万円、参加していない方は12万円です。
  • 無痛分娩希望だが無痛分娩説明会に参加しそびれた方は、妊婦健診とは別日に来院していただき、無痛分娩の説明(診察料有り)を聞いていただく必要がありますが、10万円です。

8. 2023年4月~3月までの分娩実績

分娩件数 100件(うち帝王切開:22件)

無痛分娩件数 11件