ICT(感染対策チーム)の概要・目的
院内感染対策は、患者さんとその家族、勤務する職員、医学生など病院に関わるすべての人々を医療関連感染から守るための効果的で適切な感染対策、感染管理を行っています。
国内および海外から持ち込まれる可能性のある感染症に対して対策を講じる必要があります。
感染対策チーム(以下ICT)では兼任を含め、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務職員がメンバーとして加わり、それぞれの専門分野の知識を生かして病院全体の感染症を減らし、感染症対策の質を向上することを目的として、院内の関連各部署と連携して活動を行っています。
ICTメンバー
ICT環境ラウンド
ICT目標
手指衛生遵守率向上および手指衛生目標使用量を達成させる
医療関連感染を低減させ血流感染を発生させない
ICT活動
1. 発生動向監視
- 感染症発生の確認、感染経路および保菌者を把握するために、定期的なミーティングにおいて情報共有および微生物サーベイランス(JANIS)による感染症発生の確認と院内状況の把握を行っています。
- 外部の細菌検査室と密に連携・コミュニケーションを図ることで、タイムラグのない情報管理に努めています。
- 各種耐性菌や血液培養陽性時は至急報告対象とし、検査課から各部署・主治医・ICTへ随時報告を行っています。
- 安全管理室と連携し、感染関連のインシデント・アクシデントに対応しています。
- 血液培養2セット実施率は月ごとに算出し、各監視菌の発生状況と併せて病院全体へ情報発信を行っています。問題と思われる事例があった場合は、注意を促すなどの介入を行っています。
血液培養2セット実施率 | ||
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2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
97.62% | 97.33% | 98.03% |
算出定義
分子:血液培養2セット以上の患者数(年)
分母:血液培養採取患者数(年)
2. 感染対策の実施の適正化
- 感染予防策の正しい方法の周知徹底と継続的な実践をICTチームで確認しています。
- 院内感染対策において手指衛生の徹底は最も重要でエビデンスレベルが高い医療行為として遵守いたします。
- 各部署を定期的にラウンドして、環境調査および直接観察法による手指衛生実施状況を確認しています。
- 経路別感染予防策の実践や、抗菌薬の適正使用を推進のため医療従事者全員に対し感染対策教育を実践しています。
- 感染対策ニュース発行、ベストプラクティスの見直し・更新しています。
- 血液培養陽性、届出対象薬剤開始時の情報共有(随時)しています。
3. 感染拡大防止への介入
- 毎週1回以上院内全病棟の環境ラウンドを実施し、効果的な対策が実践されているか確認、支援を行っています。
- 部署内で発生した感染症や対策難渋例については個別に対応を行い、電子カルテに記録します。
- 流行性感染症や多剤耐性菌が院内で発生した場合には、院内マニュアル、フローに則り、該当部署と密接な連携を取り、終息に向けた対策を講じています。
- 連携病院や管轄保健所へ速やかに報告連絡相談を実施し、事態の収束に努めます。
- 医療安全上重大な事例については、適切に対応し、情報公開します。
4. AST活動
- 世界的に問題となっている薬剤耐性菌の発生を抑えるために、抗菌薬治療、検査について各科にアドバイスを行っています。
- 血液培養陽性症例、院内各診療科からのコンサルテーション症例に対しては、治療終了までフォローしています。
- 特定の抗菌薬(抗MRSA薬、抗緑膿菌作用のある広域スペクトルの抗菌薬など)に対してはラウンドの際に診断および治療面のアドバイスを行っています。
- 薬剤感受性率(アンチバイオグラム)、抗菌薬適正使用マニュアルの作成・改訂を通し、院内の適正な抗菌薬使用に従事しています。
- 薬物治療モニタリング(TDM)について薬剤部と共同で対応しています。
5. 職員への感染症・感染対策に関する教育・研修
① 研修医を対象とした教育
- ASTによる感染症診療の考え方、抗菌薬の使い方について定期的にカルテ記載と実際の症例を通じてどの様に感染症治療を行うかについてICDからレクチャーを行っています。
- 現場での抗菌薬治療の活用のため、抗菌薬の適正投与量の一覧、毎年当院のアンチバイオグラムなどのポケットマニュアルを作成し医師に配布し、電子カルテからも閲覧できるようにしています。
- 初期研修医に対してはICNから基本的な感染対策研修および実技訓練を行っています。
- 研修医および指導医は侵襲的処置のシミュレーターを実施し、ガイドラインに則った安全な手技の獲得に努めています。
- ICTリンクスタッフ会議への参加をローテーション形式で行い、研修医で情報共有、周知できるようにしています。また、臨床現場で困った感染対策事例などをICDへ相談できるよう体制をとっています。
② 全職員を対象とした研修
- 全職員を対象とした感染対策に関する研修会を年間2回以上開催し、基礎的な知識の提供および関連情報の確実な周知徹底をはかっています。
- ICTや外部講師による感染対策に関する研修を定期的に実施しています。
- 中途採用者に対しては動画視聴および確認テスト入職時に実施を促しています。
- 標準予防策や経路別予防策の基本的な理解や個人防護具の正しい着脱などを中心に、マスクフィットテストと個人防護具を選択し着脱する認定制度を行っています。
③ 職員以外を対象とした研修
- 委託業者対象として年に1回以上基本的な感染対策についての学習及び実 技訓練を実施しております。
- 実習生および院内に一定以上滞在するものに対し基本的な感染対策について学習および実技訓練を実施しております。
職業感染対策
- 健診センターと連携し、新規入職者および中途入職者を対象として医療関係者のためのワクチンガイドライン第3版を参考に流行性ウイルス性疾患の接種歴および罹患歴調査または抗体検査、抗体基準未満の者、接種歴が確認できない者に対してワクチン接種を推奨しています。
- 流行期前に全職員・委託業者を対象として季節性インフルエンザワクチンの接種を行っています。
- 当院で実習を行う学生等への流行性ウイルス性疾患の抗体検査およびワクチン接種の確認を行っています。
医療連携
- 近隣の連携医療機関との定期的なカンファレンスの開催および各連携施設を直接訪問して感染対策に関する支援を行っています。
- 当院のほか、東京民医連内で感染対策に関する会議を定期的に開催し、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師それぞれが意見交換を行っています。
- 管轄保健所、連携医療機関などと連携して、院内感染対策および国内、海外から持ち込まれる感染症に関する相談や、患者さんの受入れを行っています。
来院・入院される患者さんとそのご家族へのお願い
1. 手指衛生をお願いします
人の手から感染が広がる可能性があります。院内に設置しています消毒用アルコールの擦り込みや石鹸を使って流水手洗いで、手を清潔にしていただくようお願いいたします。
手指衛生(消毒・手洗い)のタイミング
- 病院入口や出口
- 目・鼻・口に触れる前
- 鼻をかんだ後・咳やくしゃみをした後
- 食事の前
- トイレの後
- ※「食事の前やトイレの後」は石鹸を使った流水手洗いが効果的です。
2. 病院内ではマスクを着用してください
病院は感染の原因となるウイルスや細菌にかかりやすい方も来院される場所です。他の人と近距離で話す際には、マスクをしましょう。面会の場合は飲食もご遠慮いただいております。
院内にいる際は必ずマスクを正しく着用していてください。
1階・2階・ERにマスク自販機がございます