東葛の健康 No.399(2017年11月号)

憲法が指し示す医療・福祉の在り方とは – 東葛病院の医療 憲法・医療・福祉
健康の自己責任論・子どもの貧困・健康格差

10月末に行われた総選挙では、憲法9条の「改憲発議」の問題とともに消費税を引き上げ、社会保障の財源とすることなどが争点として問われました。国の姿勢を含めあらためて私たちが目指す医療・福祉とはなにか、下正宗東京勤医会理事長・野田南部診療所所長に聞きました。(編集部)

健康の自己責任

健康に生きていくことは皆が望むことです。
自己責任ということがいろいろな状況でいわれていますが、自己責任というのは、何を指すのでしょうか。
生まれたばかりの子どもは、親を選んで生れて来るわけではありません。すべてのうまれてくる子どもたちがスタート時点で公平なスタートポイントに立っているのではないことは、明らかです。

子どもの貧困

子どもの貧困が、ようやく社会的問題としてマスコミにも取り上げられるようになりましたが、子どもの貧困問題が子どもの自己責任というひとは、いないと思います。
社会問題の取り上げられ方として目の前に現れた現象面をセンセーショナルにとりあつかうことが多いので、報道そのものがある断面だけ取り上げるために社会全体をつかむことは難しいと考えます。
子どもの貧困問題は親の貧困問題です。親をどう支援するかという課題を解決しなければ子どもの貧困問題は決して解決できるものではありません。
親の世代の健康問題に目を向けると、最近はやや改善としたとはいえ、就労の問題があります。
非正規雇用という不安定な雇用形態が法的に認められるような状況ですが、子育てをしている世代にとっては常に不安の中で就労しなければならないということでは非常に問題があるものと考えます。

健康格差の広がり
執務中の下正宗理事長

執務中の下正宗理事長

また、親世代の健康管理の問題に関しても「過労死」ということばが国際的にも知られるようになったように正規雇用の労働者も極めて厳しい労働環境に置かれています。表には出ていないと思いますが、非正規雇用の労働者もダブルワークで主たる仕事を終えた後に別の仕事をするという状況も生まれています。このような労働実態の中で、健康管理が後回しになっています。
また、生きていくうえで基本である食事に関してもとりあえず「腹を満たす」ことが優先となり、貧困家庭ほどいわゆるファーストフードに走らざるを得ない状況にあるといわれています。
かつて日本は最も格差がない国といわれていました。国民皆保険といういろいろな国が真似したいという制度的保障とともに格差がないということが国民の健康状態を維持してきましたが、このいずれもが危機に瀕しています。
この状況を打破するために消費税を引き上げてその財源にあてるということですが、消費税ほど逆進性がある税金はないといわれています。
使い道を整備したとしても貧富の格差を拡大するものでしかありません。一方で、収入に対する税金の累進性の緩和などによりいわゆる大金持ちが支払う税金は減少し、大企業の内部留保が膨大になっているといわれています。

憲法が指し示す医療・福祉

国会の中の情勢は決まりました。国民ひとりひとりに寄り添いながら、国民の幸福を考えるうえで公的な責任とは何か、日本国憲法が指し示す医療、福祉のあり方を改めて考え行動しなければならない状況であると考えます。

シリーズけんさ113【血液検査⑫】
「赤血球・白血球のお話②」

検査課 石原 元太 臨床検査技師

今月は白血球についてお話させていただきます。
白血球というのは、顆粒球・リンパ球・単球をまとめて呼んだ言葉になります。
そして顆粒球には好中球・好酸球・好塩基球の3種類が含まれます。これらの細胞が私たちの体の中でどのような働きをしているのでしょうか? それは、外部から体の中に入ってきた細菌・ウイルスなどの異物を取り込んで排除する免疫に関わる働きをしてくれています。
体の中で異物が発見されると、白血球は活性化し異物のもとへ向かっていきます。白血球はその異物を自身の中に取り込こんで殺菌、また抗体をつくる事で異物を排除しています。前述したように白血球は、いくつかの種類があります。
細菌感染に対しては主に好中球がウイルス感染に対しては主にリンパ球が中心となって活動してくれています。
細菌・ウイルス感染状態では異物を排除するために、多数の白血球が血液中に放出されており、血液検査をすると白血球が高値を示すようになります。
私たちの体は、病気になったり、怪我をしたりすると様々な反応がでてきます。
しかし、それは悪い事ではなく、体を守ろうとする防御反応のひとつなのです。
熱が出るのは異物の繁殖を抑え、白血球が活性化するための防御システムの一つですし、傷口に膿が出るのは、白血球が私たちの体を異物から守ってくれた証なのです。

はい!こちら患者サポートセンターです<隔月掲載>

患者サポートセンター医療福祉相談課長 豊田恵太

経済問題を抱えた相談

数年前から体調が思わしくなかったけれど、お金が無く受診ができないでいた。また、ご本人が体調を崩していて見るに見かねた知人の方が救急車を呼んだ。ともに病院に来院し受診をした時には入院が必要な状態でした。その際に、私たち医療ソーシャルワーカーは、安心して治療を受けられるよう患者様と相談し、必要な制度をご案内したり、手続きの援助を行います。最近はこのような経済問題を抱えた相談が増えてきました。

不安定な労働条件

少し前までは会社に勤めていれば、社会保障があり経済的にも安定しているというイメージでした。しかしながら、社会の変化に伴い、雇用形態も変わり派遣労働や非正規雇用と会社に勤めていながらも不安定な状況下で仕事をせざるを得ないという勤務形態も増えてきています。

8名の医療ソーシャルワーカー

東葛病院患者サポートセンター医療福祉相談課は8名の医療ソーシャルワーカーがおり、経済問題だけでなく、介護について、退院後の生活について、その他制度利用の手続きについてなど、様々な相談に対応しています。

様々な職種でサポート

医療、介護、福祉についてお困りのことがあった際、窓口として患者サポートセンターがあります。
患者サポートセンターには、医師、看護師、事務、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、臨床心理士など様々な職種が配属されています。病院へお越しの際はお声掛けください。

共同組織仲間増やし月間 10月~11月
1万人まであと一歩

院長 井上 均

仲間増やし月間がはじまって1か月。おかげさまで1万人の友の会まで100人を切ることろまできました。
私たちがすすめる「9条改憲・社会保障解体を許さず、平和といのちを守る地域の共同体、東葛健康友の会を強く大きく」の取り組みは大きな共感を地域で呼んでいます。
11月は「仲間増やし月間」最後の1か月となります。貧困と格差の拡大、超高齢化社会の進行、そして社会保障を解体する政治が、地域の困難をいっそう深刻にしている今、いのちをまもり、くらしをまもる、「誰もが安心して住み続けられるまちづくり」をすすめる健康友の会の仲間増やしをさらにすすめていきます。市の人口一割の友の会めざして最期まで頑張りましょう。

いのちと人権の現場から
健康の不公平は社会からの不公平から始まる

社会保障推進 流山市協議会 事務局長 山縣良一

最近マイケル・マーモット氏の「健康格差・不平等な世界への挑戦」という本が民医連の医師が中心となり翻訳されました。民医連新聞でも紹介されています。東葛病院でもHPH委員会が読み合わせを行い学んでいます。
新自由主義が跋扈する時代、多くの人々の健康が害されている。裕福な人々は健康を享受し、貧しい人は過酷な労働、不健康な世界。あの悪名高いインドのカースト制度外不可触民は人間の手による糞便回収業。貧困の連鎖、乳幼児死亡率の桁外れに高いモザンビーク。軍隊を持たず教育に予算をかけるコスタリカの健康寿命は高く、貧しい国において高学歴は低学歴に比べ寿命が長い事がわかっています。

食料品を経済困窮者に届ける病院職員

食料品を経済困窮者に届ける病院職員

では医療に予算を多くすれば健康寿命が延びるのか。世界一医療にお金をかけるアメリカの健康寿命は世界一ではありません。SDH(健康の社会的決定要因)、人間が健康に生きるための生きがい、生きる条件が各国の統計をもとに詳しく緻密に分析されています。日本ではどうでしょう。東葛病院でも経済的事由による手遅れ死亡が毎年発見されます。今年の事例では一人暮らしのその方はあまりにも病気に対する認識が不足、周りに関心を持ってくれる親族や知人がいたのなら違った結果になったと思われます。
今、政府は「我が事・丸ごと地域共生社会」を提唱しています。行政に義務を負わせずに地域住民に義務を課すと言う地域丸投げ強制社会。貧困と格差、社会保障の不備を「人と人とのつながりが希薄になって居る」とすり替え、行政と専門家が取り組むべき問題を「地域の繋がり」で解決させようとしています。
私たちが本当に共生できる社会を作る為には安倍政権が目指す新自由主義を止めさせ、憲法を守り、大企業、大金持ち優先の政治を変えることが必要です。
流山では無料塾やフードバンクが始まっています。難しい闘いは始まったばかり。マーモット氏曰く「健康の不公平は社会からの不公平から始まっている」。これからの日本の針路を決める衆議院選のなか考えました。


東葛病院の医療を良くする委員会報告
あなたの声から
寄せられた意見
車利用の通院患者です。病院1階の貸し出し用車いすを利用させてもらっています。しかし駐車場2階以上にしか駐車できなかった場合はたいへん不便をしています。駐車場の各階に車いすを常備していただく事はできませんか。
対応と対策
ご不便をおかけしました。現在駐車場各階に車いすを常備できるよう、検討しています。もうしばらくお待ちいただくようお願いいたします。ご要望ありがとうございました。

資金募集

介護の手募集

8月1日看多機「いちごいちえ」がスタートしました。現在利用者様も増え、送迎・調理・入浴の時間帯に職員の業務が集中するため、見守りや介護の手が不足しています。
「その人らしさ」を大切にするいちごいちえで一緒に働きませんか。

業務内容‥買物・調理・配膳・片付・トイレ介助・おむつ交換・入浴介助など
時間‥①8時~16時 ②8時30分~16時30分 ③10時~18時 ④12時~20時 ⑤16時30分~翌9時30分(夜勤)
職種‥(非常勤)ヘルパー1級、2級、介護職初任者研修終了者、介護福祉士
賃金‥ヘルパー等‥時給1,000円、介護福祉士時給1,040円~2,000円
連絡先‥いちごいちえ採用係 04-7158-8539 090-5194-6701 担当‥二階堂、大平(おおひら)

東葛病院、駅前診療所、付属診療所(下花輪)の医療活動 (2017年9月分)
駅前診療所 1日平均外来患者数 157人
付属診療所 1日平均外来患者数 28人
東葛病院 1日平均外来患者数 670人
1日平均救急・夜間外来患者数 52人
1日平均入院患者数 302人
手術件数 113件
主な検査 血管造影 29件
内視鏡 740件
CT 1,049件
MRI 381件
心電図 1,021件
腹部エコー 504件
心エコー 320件
救急患者数 1,572人
内 救急車搬入件数 228件

掲載日:2017年11月1日/更新日:2024年10月25日

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