東葛の健康 No.397(2017年9月号)
- 女性の一生に寄り添った医療 – 東葛病院の医療 産婦人科
- シリーズけんさ112【血液検査⑪】
- はい!こちら患者サポートセンターです<隔月掲載>
- 開設しました!
- いのちと人権の現場から
- 東葛病院の医療を良くする委員会報告
- 東葛病院・付属診療所の医療活動(2017年7月分)
女性の一生に寄り添った医療 – 東葛病院の医療 産婦人科
中高年に多い骨盤臓器脱 診断と治療
『妊娠・出産』に焦点が当たることの多い病院産婦人科。東葛病院産婦人科科長の根本玲子医師は、「女性の一生に寄り添った医療が本来の産婦人科の使命」と話します。今回は中高年に多い「骨盤臓器脱」を診断と治療、そして生活習慣から見ていきます。(編集部)
東葛病院産婦人科科長
根本 玲子 医師
東葛病院の産婦人科
東葛病院産婦人科は、女性の一生に寄り添った医療を提供できるよう、日々奮闘しています。妊娠、出産だけではなく、避妊相談、月経に関連した様々な症状、不妊症、女性生殖器の良性・悪性疾患、更年期症候群などのホルモン関連の疾患、そして骨盤臓器脱。それぞれの年代によって出現頻度の高い疾患があります。今回は、中高年に多い、骨盤臓器脱に焦点を当ててみたいと思います。
骨盤臓器脱とは
骨盤臓器脱は、骨盤内臓器が膣及び肛門から下垂・脱出する疾患です。膣から脱出する臓器別に「子宮脱」「膀胱瘤」「尿道瘤」「小腸瘤」「直腸瘤」に分類され、肛門から脱出するのは「直腸脱」のみです。
骨盤臓器脱は二足歩行動物である「人間」特有の病態でもあります。立位であれば、腹腔内の臓器の重さは骨盤骨の前と後ろをハンモック状につなげている骨盤支持組織(筋肉、靭帯、筋膜で形成)に支えられている状態です。その骨盤支持組織の間に尿道や膣、肛門の出口が開いています。骨盤支持組織は骨のように硬くないので、圧力が掛かれば伸びます。女性は膣がある分、男性より出口が一つ多く、臓器の脱出する確率が増えます。
骨盤臓器脱の自覚症状として多いのが、外陰部に何か触れるという腫瘤感です。その他、膀胱が下垂しているために残尿が多くなり、頻尿が目立つ場合もあります。(イラスト参照)
保存的療法と外科的療法
治療は保存的療法と外科的療法があります。
保存的療法として、多く行われるのはペッサリーリングの膣内挿入です。円形の器具で、膣内に入れて子宮や膀胱の位置を正常に近くします。外来ですぐにできる治療ですが、2~3か月毎の通院が必要です。リングを入れっぱなしで、長期間放置すると膣内にリングが癒着してしまうことがあります。下垂程度の軽い方は、漢方薬の内服や骨盤底筋体操という運動療法を選択することもあります。どちらも即効性はないので、毎日続けて行わないと効果の評価はできません。
外科的治療は、保存的治療が合わなくなってきた時に検討します。
膣式に子宮を摘出後、骨盤底筋を再建したり、すでに他の疾患で子宮摘出後の方は膣を閉鎖する手術もあります。子宮は残して、膣粘膜の裏側にメッシュという人工的な膜を埋め込む治療もあります。その他当院では行っておりませんが、腹腔鏡下に膣断端をメッシュで仙骨に固定する術式もあります。手術方法は、メリット、デメリットを説明後、全身状態や年齢などを加味して患者様と選択していきます。
画像診断中の根本医師
原因と生活習慣
骨盤臓器脱になりやすい生活習慣としては、便秘でいきむ回数の多い方、重いものを持つ仕事をしている方、慢性的に咳をしている方、股関節や膝関節、腰の痛みで姿勢が前屈みになりやすい方、前屈みやしゃがんだ状態になることが多い仕事をしている方、体重が重い方、などがあります。
また、出産時の骨盤支持組織損傷も原因になります。目に見えない部分なので、産後に無理をすると損傷部分から骨盤臓器脱が徐々に進行していくこともあります。骨盤臓器脱は、中高年に多いと言いましたが、その原因は若いうちに芽生えていることもあります。自分の体とは一生付き合わなくてはいけません。長く元気につきあえるよう、体の姿勢に気をつけたり、予防的に日々骨盤底筋体操をするのもお勧めです。
>シリーズけんさ112【血液検査⑪】
検査課 石原元太 臨床検査技師
『赤血球・白血球のお話』 ①
今回は赤血球についてお話させて頂きます。
まずは赤血球とは何か?のお話になります。赤血球はひとつひとつの大きさが約6~9μm(μmとは㎝の1/1万の大きさです)、球状で真ん中にくぼみのある形をしています。
この形のおかげで柔軟に形を変えられるので、細い血管を通る事が出来るようになっています。
では、赤血球は私たちの体の中でどんな働きをしているのか?
皆さんは既にご存知かと思われますが、体全体に酸素を運ぶ仕事をしています。
では、どのように運んでいるのか?
赤血球の中にはヘモグロビンというものが存在しています。このヘモグロビンはヘムという色素とグロビンというたんぱく質がくっつく事で出来たものです。ヘムには鉄分子が付いていて、これが酸素を運ぶ力を持っています。このヘモグロビンのおかげで全身に酸素を運ぶ事が出来るようになっています。
またヘムは赤い色をしているため、私たちの血液は赤く見えているのです。
体の中で赤血球中のヘモグロビンが減ってしまった状態を貧血といいます。
原因として一番頻度が高いのは鉄欠乏性貧血といわれる状態です。
前述したヘムの合成には鉄が必要であり、材料である鉄が不足する事でヘモグロビンの量が減ってしまうと酸素を運ぶ力が弱くなり、体が疲れやすい等の症状が出てきます。
予防として鉄吸収率の高いレバー・赤み肉・赤身魚が効果的といわれています。
はい!こちら患者サポートセンターです<隔月掲載>
患者サポートセンター入退院支援課 山田朋子
はじめまして、7月から入退院支援課へ配属になりました、看護師の山田朋子です。これまでは内科病棟で働いていました。病棟業務でも退院支援に関わることはありましたが、院内様々な病棟で行う退院支援の難しさを日々痛感しています。
入退院支援課の仕事
「入退院支援課ってどんなことをしているの?」と疑問を持つ方もいらっしゃると思いますのでご紹介致します。まずは「病院内の入院や退院の調整」「他の病院や診療所などからの転院や入院の相談」「外来受診の際に何科にかかれば良いかの相談」などを受けています。
看護師の目線で
また、看護師の目線に立って退院支援をしています。例えば、入院すると体力が低下してしまい、今までのように家で過ごせるのかと不安を抱える方も多いと思います。このような不安を少しでも解消するために入院した時から退院後の生活についてご一緒に考えさせて頂きます。
入院から退院まで
入院の際に、これまでどのように暮らしていたのか、退院後の生活についてどんな思いがあるのかなどのお話を伺わせていただきます。それをもとに、ケアマネージャーや医療相談員、病棟スタッフなどと共に、退院先の相談、介護保険についてのご案内や利用するサービスの調整などを行っていきます。もちろん、入院されていない場合でも外来受診の際など病院にお越しいただいた際に相談していただくのも大歓迎です!
みなさんが笑顔で安心した毎日を送れるように少しでもお力になれればと思います。お気軽にお立ち寄りください。
開設しました!
看護小規模多機能型居宅介護いちごいちえ
たんぽぽ訪問看護ステーション所長 佐藤 木綿子
去る7月22日(土)「看護小規模多機能型居宅介護(以下「看多機」)いちごいちえ」の内覧会を開催し、ご利用者ご家族を始め、ケアマネジャーや地域住民の方々、また、開設確定にたどり着くまでに大変お世話になった市の職員、さらに法人内からも来場され、121名もの参加者でフロアは埋め尽くされました。
挨拶で戸倉所長は、「施設建設は17年越しの地域の願い」と熱い思いを語られ、来賓の流山市役所健康福祉部の小西和典次長からは、「流山市では、『いちごいちえ』が看多機第1号であり、特に医療依存度の高い方の介護負担の軽減に大きな期待を寄せている」とのお言葉を頂きました。
看多機は、介護と看護で、訪問、通い、泊まりのサービスを施設内のケアマネジャーがその方に合った内容で計画し、「同じ顔ぶれで」「24時間365日」「柔軟なサービス提供」をしながら、医療依存の高い方でも受け入れ可能な施設です。
来場者の方からは、「広くて日当たりがよい」「風呂が充実している」などのお声をいただき、今まさに介護に困って訪れたという方に職員がお話を伺う光景もありました。
8/1の開設を迎えて、現在12名の利用者様をお受けし、さらに利用予定の方も控えています。徐々にではありますが、開設目的であった医療依存度の高い方の受け入れもはじまっています。
いちごいちえ」は、単にサービスを提供するのではなく、地域の方々と一緒につくり上げていく施設でありたいと考えています。地域のお祭りや行事へ参加したり、地域の皆様の豊富な経験を活かしたボランティアもお願いしていきたいと思いますので、今後ともご協力のほどよろしくお願いいたします。
いのちと人権の現場から
勤医会東葛看護専門学校 山田 かおる
―未完のプロジェクトを完成させていくのは私たち―「日本国憲法の輝く社会に」
憲法は完成に向けてたたかうもの
東葛看護専門学校は7月6日、愛知県立大学教育福祉学部准教授 久保田貢先生を招いて、学生・教職員・公開講座参加者140名で憲法学習会を行いました。
久保田先生の講演は、憲法の成り立ちと憲法の内容についてでした。日本国憲法の成立の意味は、二度とあのような戦争・侵略を起こしてはいけないという決意である。そして日本国憲法の内容は、戦争放棄の9条、平和的生存権の全文、そして分厚い人権条項(3条)で出来ており、基本的人権を保障する統治機構の立法・行政・司法、軍事拡大で財政破綻をさせた反省からの財政、そして最高法規の10章へとつながっている事。憲法を破壊する新自由主義と構造改革から日常の生活問題(貧困)が起こってくる事。また人権裁判である朝日訴訟や全国の人権を護る運動、そして民医連の取り組みなども紹介しながら、日本国憲法は「未完のプロジェクト」であり、完成に向けてこれからも闘いを続けていく必要があることを話してくださいました。
自分が何をするのか決める指針
憲法学習会後、3年生から以下のような感想が寄せられました。『憲法には書かれているのに、実際には保障されていないことばかりだと知った。(中略)自分の身のまわりの生活に起きていることから考えると頭に憲法がすんなりと入ってきた』、『日本国憲法がないがしろにされつつある現実。学校で学んできた「患者の願いに沿った看護実践」「地域フィールド」「憲法」すべて1つにつながり、自分が何をしていくのか決める指針が通ったと感じた』『今までの学んできたことがつながり、バラバラだったものがつながって見えてきた。憲法は未完のプロジェクトで自分たちが完成に向けて声を出していく必要がある』などです。
人権を護る医療者
最後に久保田先生から看護学生に「人権を護る医療者になることが、憲法を護っていく繋がる」とエールを送っていただきました。
「未完のプロジェクトを完成に向けて闘っていきたい。」学生とともに、決意を新たにした憲法学習会でした。
東葛病院の医療を良くする委員会報告
あなたの声から
二重駐車で車両通行路が狭くなっています。
充分ご注意ください
バス発着所変更のお知らせ
先月号でお知らせをしましたが、バスの発着場所が8月より変更となり、現在運用しております(写真ご参照)。なにぶん手狭な病院敷地内に発着所を設けたため、とりわけ雨の日など自家用車のみなさまには今まで以上にご不便をおかけしています。お詫びいたします。病院敷地内での事故が起こらないよう十分注意をいたしますので、ご理解とご協力をお願いいたします。
バスの発着に際しましては、病院待合いに向けて運転手のアナウンスもはじめました。安心してご利用いただきますようお願いいたします。 東葛病院院長
東葛病院、駅前診療所、付属診療所(下花輪)の医療活動 (2017年7月分)
駅前診療所 1日平均外来患者数 | 143人 | ||
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付属診療所 1日平均外来患者数 | 28人 | ||
東葛病院 | 1日平均外来患者数 | 661人 | |
1日平均救急・夜間外来患者数 | 61人 | ||
1日平均入院患者数 | 305人 | ||
手術件数 | 117件 | ||
主な検査 | 血管造影 | 26件 | |
内視鏡 | 725件 | ||
CT | 1,094件 | ||
MRI | 377件 | ||
心電図 | 1,124件 | ||
腹部エコー | 539件 | ||
心エコー | 333件 | ||
救急患者数 | 1,893件 | ||
内 救急車搬入件数 | 307件 |
掲載日:2017年9月1日/更新日:2024年10月25日