東葛の健康 No.394(2017年6月号)
- 未来の担い手が健やかに育つ環境を – 東葛の医療 小児科・アレルギー科
- 子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)
- クスリ あ・れ・こ・れ<隔月掲載>
- 歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>
- 受療権を守る討論集会
- いのちと人権の現場から
- 東葛病院の医療を良くする委員会報告
- 東葛病院・付属診療所の医療活動(2017年4月分)
未来の担い手が健やかに育つ環境を – 東葛の医療 小児科・アレルギー科
東葛病院小児科の15年
日本国民は、(中略)われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。(中略)日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
ご存知「日本国憲法」前文です。東葛病院小児科が本格的に診療を開始した15年前、伊東繁医師はこの「前文」を思い起こし、行動の支えとしたと聞きました。
伊東医師に東葛病院小児科15年を振り返ってもらいました。(編集部)
小児科・アレルギー科
伊東繁医師
スタート
東葛病院小児科の診療が本格的に始まったのは2002年、筆者が30年以上在籍していた大学医学部から移ってきてからです。それまでは院外の小児科医の協力で外来中心の診療がおこなわれていました。旧病院の病棟の一部を急遽改装して小児科ベッドを開きました。他院の内科医から小児科医に転向してくれた若手医師と一緒に診療を始めました。
救急センターを中心に
当時、小児科は臨床研修の必須科目ではなく、小児科の経験のない医師も小児救急の患者さんに対応していました。
赴任後最初の課題は小児の救急患者の診療をどう援助できるかでした。一つは、救急センターの診療記録をチェックして意見を記載し、当直医に返すという作業で支援することでした。この作業は10年余り毎日続けました。また、特に初期研修の医師たちと小児科の初期対応を勉強する機会を作りました。こうして非小児科医であっても普通に小児の診療ができるようになってきました。
2009年の患者さんの意識調査では、非小児科医の診療でもおおむね不安がなかったという結果でした。
小児科医を育てる
2002年4月から厚生労働省認定の研修指定病院となり、小児科も小児科学会の研修認定施設となり、自前で小児科専門医の養成ができるようになりました。初期研修医が後期研修の場として小児科を選ぶようにもなり、小児科専門医が次々と誕生しました。
診療の発展
2002年には外来の受診者は1日に多くて30人台、救急センターの年間小児受診者は2千人台でした。昨年の外来受診者は1日80人以上、救急センター受診者は年間8千人以上です。
アレルギー外来診療中の伊東医師
医療の中の子どもの貧困
日々の診療の中で気になることがあります。経済格差の広がりの中で、貧困のために病院を受診できず手遅れになるという悲惨な出来事が起きています。子どもも当然影響をうけます。
昨年、当院も所属する全日本民主医療機関連合会の小児科部会の病院が実態調査を行い、貧困層の子どもたちが健康維持の面でも蝕まれている実態が示されました。
流山市の小児医療費助成制度は15歳の3月に打ち切られます。年度末になると該当する患者さんの何人もから、「最後なので、できるだけ沢山薬をください」と頼まれます。また、自己負担分が払えずに低身長の治療を泣く泣く諦める子がいました。この中に子どもの貧困が隠されているのです。子どもの貧困は大人の貧困の反映ですが、制度的に救済することは可能です。なによりも未来の担い手が健やかに育つ環境が必要です。
目指してきたこと
かつて東葛病院は経営の失敗で倒産し、各方面からの支援で再建できました。小児科発足当初、筆者には、日本国憲法の前文になぞらえて、東葛病院と小児科がこの地域において名誉ある地位を占めたいという思いがありました。病院の倒産は世界大戦での日本の敗戦にも重なってみえていたのです。
地域に支えられる病院として、住民の健康を守る砦としてのプライドを持つことが必要であるとの思いが筆者の行動を支えてきたのではないかと振り返っています。
子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)
立ち合い出産について – 東葛病院 産婦人科
今回は読者の皆さんと一緒に立ち合い出産について考えてみようと思います。一般的に立ち合い出産とは、分娩時にパートナーが一緒に分娩室でいのちの誕生を迎えることをいいます。当院でも立ち合い出産される方が多くなりました。
無事に生まれた我が子をパパとママが見つめる姿はとても微笑ましく、私達医療者にとっても幸せなひと時です。当院では妊娠中にウェルカムベビープラン用紙に沿って妊娠が分かった時の気持ちや、分娩時の希望をパパとママで話しあって記入していただきます。妊娠中から産後にかけてプランを基に私達はお手伝いをします。
分娩時にプランの確認をする時はママだけではなく、パパの気持ちも確認します。なぜならパパになる全ての人が立ち合い出産を望んでいる訳ではないからです。中には分娩室のカーテン越しで必死に声をかけてママを応援していたり、面会室で上のお子さんと赤ちゃんの誕生を待っているパパもいます。
参加の仕方はいろいろあってよいのです。大切なことは妊娠がわかった時からパパとママが一緒にいのちを育むプロセスなのではないしょうか。立ち合い出産の意義はそのいのちを育むプロセスにあるのだと私達は思います。
いのちは存在するだけで素晴らしい!産まれてくる赤ちゃんのいのちだけでなく、産み育てるパパやママのいのち、お兄ちゃん、姉ちゃんのいのちもまた同じです。
私達産婦人科はいのちの誕生と家族のスタートをこれからも支援します。
クスリ あ・れ・こ・れ<隔月掲載>予防法・治療薬
日焼けについて
薬剤部 浅野誠斗 薬剤師
日焼けとは軽めの火傷です。皮膚の痛みや水ぶくれなど、炎症が強い時にはお薬を使う場合もあります。
今回は日焼けの原因となる紫外線のことや、日焼けの予防法、治療薬についてお話しします。
国土交通省気象庁ホームページより
紫外線について
紫外線にはいくつかの種類があり、日焼けの主な原因となるのはUVA、UVBです。
紫外線や日焼けは夏だけというイメージがある方が多いかと思いますが、実は紫外線が強いのは夏だけではありません。春先から徐々に紫外線は強くなっていきます。
下の図は千葉県の紫外線量の月別変化量です。3月や10月は真夏の半分ほどの紫外線量があり、5月、6月に至っては真夏と同程度の紫外線量があることが分かります。
日焼けの予防は夏だけでなく、それ以前の対策が必要となります。
予防法
日焼け止めにはPAとSPFという表記があり、PAはUVAに対しての、SPFはUVBに対しての防御効果をそれぞれ表します。PAは+の数が多い程、SPFは数字が大きい程高い防御効果を示します。日焼け止めは3~4時間ごとに塗りなおすと効果的です。
治療法
まずは冷やすことが大切です。冷たい濡れタオルなどを使うといいでしょう。お薬はステロイド外用剤や消炎鎮痛剤などを使う場合もあります。
炎症が強い場合、皮膚がただれたり夜痛みで眠れないほど症状が強い場合もあるので、症状が強い場合には医療機関を受診しましょう。
歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>
歯周病を引き起こす原因 – 歯石は定期的に取った方がいい!
東葛歯科 谷島智子 歯科衛生士
歯科医院で歯石を取ったことはあるけれど、歯石を取らなければならない理由がわからないと思っている方もいるかもしれません。
歯石は歯の周りにこびりついた石のようなもので、長期にわたって沈着していることにより、歯周病を引き起こす原因となります。
そもそも歯石とは
歯みがきで取りきれなかった歯垢(プラーク)が唾液中のカルシウム等と結合して〝石灰化〟して固くなり歯石になります。歯石のつきやすさや量に個人差がありますが約2日~2週間で石灰化します。
歯石の表面は凸凹しているので、更に歯垢が付着しやすく、どんどん硬く増え続けてしまい、細菌の温床となります。
この歯石に潜む細菌が毒素を出すことにより、歯肉は細菌をやっつけようとして炎症状態になります。歯石を取らずに炎症状態が続くと、細菌から逃れようと歯を支えている骨が吸収されて歯周病になるため、細菌ごと歯石を除去する必要があるのです。
歯石をつけないために
歯石をつけない最善の策は、毎日の正しい歯みがきです。出来る限り早い段階で歯垢を除去することが、歯石沈着を未然に防ぐ方法となります。
一度歯石がつくと、歯みがきでは取れないため、歯科医院で専用の器具を使って除去する必要があります。歯周ポケットが深い場合は麻酔をして取ることもあります。
歯周病のリスクを軽減させるために、少なくとも、年1~2回の歯科の定期受診をお勧めします。
それは歯の根元に出来た虫歯や歯周病です。この菌原性菌血症は、気付かぬ間に全身の血管でじわじわと炎症を進行させ、血管を劣化させて心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化、がん、認知症、リウマチなど種々の慢性病の原因になることが最近のDNA解析技術でわかってきました。
原因は虫歯や歯周病です。ほぼすべての生活習慣病に関るこの歯原性菌血症を防ぐためには、口腔内を清潔に保つことが大切です。
歯科では口腔内メイテナンス、口腔ケアを通じて、全身の病気の予防にも、力を入れています。
私は1月より毎週水・木に東葛病院の病棟歯科往診を担当しています。病棟での治療内容は、入れ歯作り、虫歯治療、口腔ケア、必要な時は抜歯も行っています。
3年前は旧東葛病院の病棟往診をしておりましたが、明るく、広くきれいな新病院で気持ち良く施術をさせていただいています。どうぞお気楽にお声かけください。
受療権を守る討論集会
権利としての「受療権」を守ろう!
5月20日から21日にかけて全日本民医連主催の「受療権を守る討論集会」が八重洲カンファレンスセンターにて開かれました。全国から163人の参加でした。
2016年民医連では全国377事業所が無料低額診療を実施しており、その減免額は合計5億5千万。減免患者数は32万231人にのぼります。
国保法には保険料や窓口一部負担金が減免される制度がありますが充分に活用されていない現状があります。北海道民医連では教育長通達で制度を知らせ、毎月200人から250人の無料・低額患者を受け入れていると報告されました。
記念講演は三重短期大学の長友薫輝教授による「無低診の拡充と可視化~新たな医療費抑制策の中で~」です。社会保障の考え方から「滞納」=「悪質」ではなく「貧困」ととらえる事、人間関係が豊かな人の方が風邪を引きにくく死亡リスクも減る事などを説明し、政府が宣伝する「高齢化社会危機論」は、家庭内に止まっていた女性の社会進出や、老人の知識を活用しての社会貢献などが顕著で、とうの昔に論破された理論であることを分かり易く話しました。
21日は10の分散会で討議。社会保障問題を判りやすく寸劇で披露し、参加者の関心を集めた石川民医連や、無料・低額診療で助かった命、同制度の対象外の保険薬局で失われた命など、全国での民医連の活動が発表されました。
最後に全日本民医連社保委員長が、受療権が守られていない実態を社会に訴えること、貧困者の医療要求を掴む事が民医連の最大の課題とまとめました。
東葛病院組織部山縣良一
いのちと人権の現場から
辺野古平和を守るたたかい
5月10日~11日の短期間でしたが、全日本民医連の「沖縄民医連2017平和を守るたたかい」の連帯要請に応え、辺野古座りこみ行動に参加しました。
これが「排除」の実態
辺野古の今
辺野古埋め立てをめぐる「違法確認訴訟」で昨年の12月20日、最高裁は国の意向に沿って沖縄県敗訴の不当判決を出しました。早速国は辺野古の工事を再開、現在大型コンクリートブロックの投入など本格工事作業を着々と進めています。2月の日米共同声明では「新基地建設(辺野古)は普天間飛行場の継続的な使用を回避する唯一の解決策」と盛り込むほどの意気込みです。
工事強硬のねらい
辺野古の本格工事再開は、「日米軍事同盟第一主義」の安倍政権にとって最重要課題です。また沖縄県民や国民に対して「どれだけ反対しても新基地は建設されてしまう」という諦らめ感を植え付け、反対運動を断念させようとのねらいがあります。
非暴力座り込み抗議行動
沖縄民医連と私たちは一貫して「非暴力座り込み抗議行動」でたたかってきました。支援当日は30℃を超える猛暑日にもかかわらず、座り込みを行うキャンプシュワブ第2ゲート前には100名を超える県民の姿がありました。午後、機動隊員約100名が「排除!」の掛け声とともに容赦ない人・モノの撤去を始めました。この日の沖縄県警機動隊員はすべて若者。「自分のオバアやオジイと同年代の地元県民に(こんな事をして)心が痛まないか!」座りこみ参加者の声が響きました。
監視するかの様に飛び回るオスプレイ
沖縄復帰45年
沖縄が日本に復帰して45年を迎えた5月15日。翁長雄志県知事は「復帰の日から沖縄県民は日本国憲法のもと、平和で安心して暮らせる沖縄県を創りあげるため、全力を尽くしてきた。(中略)米軍基地の存在が沖縄振興発展の最大の阻害要因である」とコメントしました。国内米軍専用基地の7割以上が集中する沖縄、基地から派生する事件・事故や環境問題は枚挙に暇もない沖縄をこれからも支援し、伝えていくことの大切さを強く心に刻みました。
東葛病院組織部 新井潔
東葛病院の医療を良くする委員会報告
あなたの声から
「東葛の健康」4月号でもご報告いたしましたが、昨年6月~本年4月までに「あなたの声」に寄せられたご意見・ご要望のなかでも「バス運行」に多くのご要望が寄せられています。この場をお借りし、あらためてこの間の経過と現状のご報告を申し上げます。
- 新ルートの開設
- 旧病院(下花輪)で運行しておりました新松戸駅、南流山駅ルートは周辺からの苦情及び、駅前での開院と言う立地条件もあり廃止とし、新たに公共交通機関の少ない松が丘(南柏)方面へのルートを開設しました。
- 現在の運行状況
- 現在ご要望の多い江戸川台方面、平和台から付属診療所方面ルートを合わせ、病院移送用バスは3方面5ルートで運行しております。
- 運行に関わる経費
- しかし、バス1台1回当たりの平均乗車人数は4名弱と非常に少ない上、運行に掛かる費用は病院経営を圧迫する額となっているのが現状であることを率直にご報告いたします。
病院と致しましても皆様の要望にお応えしたい思いはありますが、一事業所としてこれ以上の経費負担は現実問題として不可能であると判断せざるをえません。 - 市への要望
- 行政側(流山市)にはグリーンバスや東部、京成バス等の誘致をお願いしているところではありますが、採算が取れない事もあり実現していないのが現状です。今後ともこの努力は続けていく所存です。ご理解をお願いいたします。
東葛病院院長 井上 均
東葛病院、駅前診療所、付属診療所(下花輪)の医療活動 (2017年4月分)
駅前診療所 1日平均外来患者数 | 150人 | ||
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付属診療所 1日平均外来患者数 | 31人 | ||
東葛病院 | 1日平均外来患者数 | 517人 | |
1日平均救急・夜間外来患者数 | 53人 | ||
1日平均入院患者数 | 307人 | ||
手術件数 | 126件 | ||
主な検査 | 血管造影 | 33件 | |
内視鏡 | 575件 | ||
CT | 1,018件 | ||
MRI | 324件 | ||
心電図 | 1,721件 | ||
腹部エコー | 419件 | ||
心エコー | 348件 | ||
救急患者数 | 1,590件 | ||
内 救急車搬入件数 | 235件 |
掲載日:2017年6月1日/更新日:2024年10月25日