東葛の健康 No.392(2017年4月号)

貧困と格差に立ち向かう – 東葛の医療 病院理念
無差別平等・人権の尊重・平和

2017年4月。新年度をむかえるにあたり、井上均東葛病院院長に話を聞きました。今の社会を取り巻く状況から、あらためて東葛病院の理念とは何か、健康と平和と人権を守るため、私たち医療人は患者さん、利用者さん、地域のみなさんと一緒に何をしていくのかを語ります。(編集部)

病棟で診察中の井上均院長

病棟で診察中の井上均院長

移転から1年

東葛の健康の読者の皆さん、いつも本当にお世話になりありがたく思っています。東葛病院が流山セントラルパーク駅前に新築移転してから間もなく1年が過ぎようとしています。
患者さんや利用者さんにはいろいろなことで大変ご迷惑をおかけしていますが、皆さんのご協力をいただき、なんとか大火なく出発できたのではないかと思っています。
引き続き、ご指導いただきながら、前進していきたいと考えています。

わたしたちの理念

ところで、皆さんご存知だと思いますが、私たちは、〝無差別平等の医療・介護〟、〝一人一人の人権を尊重する医療・介護〟、そして〝平和〟を守り抜く、そういう理念の下で、それをやり抜く決意のもとで、日々の診療や介護の仕事に携わっています。
今の社会の厳しさは、私たちのこの理念の存在を際立たせていると思っています。

貧困と格差

貧困は若者を中心に広がり続けています。特に非正規雇用の人たちの90%近くが、年収300万(手取りはもっと少ない)以下です。日々の生活もままならず、その中で、病気になっても治療を受けられない人たちがたくさんいます。精神的に病んでしまう人もたくさんいます。特に子供たちが犠牲になっています。この現状を何とかしなくてはいけない。そういう焦りも感じています。

人権・平和

アメリカやヨーロッパでもそうですが、日本も右傾化がすすみ、平和や人権がないがしろにされています。昔からそういう動きはあったと思いますが、最近は本当に露骨です。人権を守り、平和を守ることは、私たち医療人の使命であり、存在意義であると思っています。そして、それを守るためには、患者さんや利用者さん、良心的な市民の皆さんと一緒に声を上げていくことだと思っています。「共謀罪」が国民の不安を無視して、国会に提出され、数の力で通される情勢です。

「無保険」「受診遅れ」は多くの新聞が報じた

「無保険」「受診遅れ」は多くの新聞が報じた

病院の展望

このような情勢だからこそ東葛病院は、地域の方々の期待に応える医療を行います。昔からお住いの方々だけではなく、新しく転居してきた若い世代の人たちのニーズにもこたえていきます。小児医療や小児リハビリ、周産期医療、緩和医療にも力を入れていきます。そして、誰でも安心して住み続けられるまちづくりに貢献したいと考えています。

無差別平等の医療

皆さん、病院がいくら頑張っても、それだけでは、私たちは幸せにはなれません。東葛病院は無差別平等の医療で皆さんに寄り添いたいと思います。
そして、皆さんと一緒に社会を変え、健康と人権を守り、平和を守る取り組みも進めていきたいと切に願っています。皆さん一緒に頑張りましょう、これからも東葛病院をよろしくお願いします。

子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)
タッチケアを知っていますか

外来師長 松永由美子

~安心して子育てできるようにサポートします~

タッチケアという言葉を聞いたことがありますか?一般的に赤ちゃんのマッサージ法の一つとして認識されていますが、タッチケアの〝タッチ〟とは、単に触ることではなく〝ふれあい〟の意味です。早産で生まれた小さな赤ちゃんのために考えられました。母乳をあげたり、やさしく抱きしめたりという当たり前のことが出来ない環境の赤ちゃんに対して、そっと手を当て声をかけるということから始まったのです。
当院で出産された方を対象に交流会の一部として、タッチケアを行っています。市の子育て支援の教室として開催されることもあります。今では赤ちゃんだけでなく、保育園や老人施設でも取り入れているそうです。興味のある方は、是非参加してみて下さい。
全身のマッサージは無理でも、日常の着替えやおむつ替えの時に出来ることがあります。ベビーオイルを少し手に取り、両手になじませ胸やおなか、おしりなど少し力を入れてなでてみます。表情に注意して、目をそらせたり、眉間にしわが寄ったり、緊張した様子であれば無理をせず手を止めます。そっと手を当てることから慣れていきます。お子さんの体調、機嫌が良い時にやってみましょう。大切なのは〝ふれあい〟です。やさしい声かけを忘れずに♪

クスリ あ・れ・こ・れ<隔月掲載>ダイエット
痩せる薬のリスク

薬剤部 青木 千絋 薬剤師

楽に痩せる?

「薬を飲むだけで痩せればいいのに」ってダイエットをしたことがある人は思ったことがあるはずです。一般的にダイエットは食事と運動でリバウンドしないようにゆっくり脂肪を減らしていくのが健康的ですが、食事制限はつらいし、運動はしんどい。楽に痩せるには…。

ダイエット - 痩せる薬のリスク
痩せる薬

痩せる薬とは、食欲がなくなる、糖や脂肪の吸収を抑制してそのまま排泄する、浮腫みをとるといった作用を持つ薬をいうようです。日本では医師による処方箋がないと手に入れられないような医療用医薬品が「痩せる薬」としてネットでは紹介されています。海外ではサプリメントみたいに売られていて、入手は簡単です。

薬のリスク

薬剤師として痩せる薬をみると、全くおすすめできないものばかりです。期待する作用がある薬には必ず副作用があります。痩せることとは無関係に肝臓や腎臓が悪くなる、電解質異常を起こすなど痩せる薬によって病気になるかもしれません。そんなリスクがある痩せる薬をのみますか?

利尿作用

浮腫みをとる薬は、心不全や腎不全などで体や臓器が浮腫む症状があるときに使う利尿薬です。浮腫みの原因になるナトリウムやカリウムという電解質を主に排泄することで尿量が増えます。この利尿作用は、ナトリウムを体に入れないようにする減塩の食事療法でも同じような効果が期待でき高血圧の予防にもなります。
ダイエットは姿以上に、努力した自分自身も綺麗にするものです。痩せる薬に頼らずお互い頑張りましょう!

歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>
新松戸診療所歯科所長 三浦 猛

新松戸診療所歯科所長
三浦 猛

種々の慢性病の原因 – 歯原性菌血症

新松戸診療所歯科所長 三浦 猛

歯原性菌血症という言葉をご存知でしょうか。菌血症とは、細菌が血中に入り込み、全身の血管を巡る事を言います。
通常は血管の中に細菌は入りませんが、身体の中でただ一カ所、日常的に細菌が血管に入ることが出来る場所があります。

種々の慢性病の原因 - 歯原性菌血症

それは歯の根元に出来た虫歯や歯周病です。この菌原性菌血症は、気付かぬ間に全身の血管でじわじわと炎症を進行させ、血管を劣化させて心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化、がん、認知症、リウマチなど種々の慢性病の原因になることが最近のDNA解析技術でわかってきました。
原因は虫歯や歯周病です。ほぼすべての生活習慣病に関るこの歯原性菌血症を防ぐためには、口腔内を清潔に保つことが大切です。
歯科では口腔内メイテナンス、口腔ケアを通じて、全身の病気の予防にも、力を入れています。
私は1月より毎週水・木に東葛病院の病棟歯科往診を担当しています。病棟での治療内容は、入れ歯作り、虫歯治療、口腔ケア、必要な時は抜歯も行っています。
3年前は旧東葛病院の病棟往診をしておりましたが、明るく、広くきれいな新病院で気持ち良く施術をさせていただいています。どうぞお気楽にお声かけください。

「人生の最終段階の医療を考える」 – 市民公開講座開催

患者サポートセンター地域医療連携課

会場となった東葛看護学校階段教室 緩和ケア科長木下寛也医師

会場となった東葛看護学校階段教室
緩和ケア科長木下寛也医師

緩和ケア病棟紹介

3月11日 東葛看護学校にて「人生の最終段階の医療を考える・超高齢化多死社会に向けて」をテーマに市民公開講座が開かれ、スタッフ含め100人が参加しました。駒形千草師長による緩和ケア病棟の紹介では、患者さんが愛犬と過ごす様子や家族との語らいの様子も紹介され、「私達は癌とうまく付き合いながら療養のお手伝いをさせていただきます」と報告しました。

看取り場所難民が生まれる?

東葛病院緩和ケア科長木下寛也医師の講演では、がんセンターで三千人を看取った経験に基づき、医療の進歩による光と影の問題や、流山市のがん死亡統計によれば、2025年にはがん死亡2300人が推計され、うち約1000人が「看取り場所難民」になるだろうとショッキングな予測も紹介されました。木下医師は「癌は本来、本人が希望すれば家で最後まで過ごしやすい病気です。亡くなる1か月前までは歩けたり食事ができたりします」と話しました。

人生の最終段階

「みなさんは死ぬ直前まで何をしていたいですか?私は病院で仕事をしていたいなあ」。木下医師の言葉は会場を和ませ、日本と外国では文化の差で「死」の概念が大きく違うことも紹介しました。「友達ががんで亡くなり、悩み考えていた時期。話が聞けて良かった」、「私も上手に緩和ケアを利用して最後をむかえたい」、「家族と最後まで暮らせる緩和ケア病棟的な施設が欲しい」など多くの感想が出されました。会場では「国の責任で~医療・介護」署名に取り組み、45筆が集まりました。また東葛病院へのご意見・要望や市民公開講座の開催テーマのリクエストもたくさんいただき、企画開催した患者サポートセンタースタッフの大きな励みとなりました。

いのちと人権の現場から
総看護師長 水口かおり

総看護師長
水口かおり

格差社会と民医連看護

新病院開院からもうすぐ1年になります。地域のみなさんから、親しまれ、愛される病院になっているでしょうか。
3月1日に東葛病院総師長に任命されました水口かおりと申します。看護師歴は約30年。ガラスの注射器やガーゼを再生していた時代から勤めています。
医療は、ものすごいスピードで変化し、看護の合理化も進んでいます。その中でも、私たち民医連の看護の基本は変わりません。患者さん、利用者さんの願いに寄り添い、誰もが安心し、自律した生活ができるように援助する事です。
現在の格差社会は医療の格差も引き起こし、病院にかかれない人が増えてきています。高齢の方々の尊厳ある暮らしが守られ、生きづらさを抱えながら、ぼろぼろになるまで働く若者たちの生活を整える必要があります。いのちはかけがえのないものです。等しく、尊重されなければなりません。
共同組織のみなさんや患者さんと「からだ」と「こころ」も元気なまちづくりをともに進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

東葛病院の医療を良くする委員会報告
あなたの声から
病院正面に敷設されたポスト

病院正面に敷設されたポスト

東葛病院と駅前診療所の医療内容をより良いものとするため、ご意見・ご要望を「あなたの声」の投書を中心に集約させていただき、友の会・東葛病院・駅前診療所でつくる「医療を良くする委員会」の毎月の会議で検討し、改善させています。
この度、病院移転後の2016年6月から2017年2月末までの投書等を集計しましたので、報告いたします。
総計235件の投書をいただきました。病院・診療所へのお礼や励まし12件を除いた223件の内訳は、

  • 1. 受付に対する要望・苦情 58件 26%
  • 2. バス便に関する要望・苦情 56件 全体の25%(直接電話での要望・苦情を含みません)
  • 3. 病院・診療所施設・設備に対する要望・苦情 34件 15%
  • 4. 駐車場に対する要望・苦情 25件 11%
  • 5. 会計時間・待合に対する要望・苦情 24件 11%
  • 6. 医師を含む職員に対する要望・苦情 7件 3%

などでした(重複を含みます)。
バスの増便や病院屋根の設置・風除け・食堂の設置など、残念ながら直ぐには取り組めない課題も多くありますが、ポストの設置や受付・会計事務の見直しの検討など、改善出来た課題も多くあります。ありがとうございました。今後ともご意見・ご要望を「あなたの声」にお届け下さい。

東葛病院、駅前診療所、付属診療所(下花輪)の医療活動 (2017年2月分)
駅前診療所 1日平均外来患者数 149人
付属診療所 1日平均外来患者数 30人
東葛病院 1日平均外来患者数 680人
1日平均救急・夜間外来患者数 63人
1日平均入院患者数 308人
手術件数 129件
主な検査 血管造影 15件
内視鏡 661件
CT 946件
MRI 342件
心電図 1,106件
腹部エコー 503件
心エコー 323件
救急患者数 1,763件
内 救急車搬入件数 237件

掲載日:2017年4月1日/更新日:2024年10月25日

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