東葛の健康 No.391(2017年3月号)

人権を守る医療の実践 – 東葛の医療 救急・総合診療
適切な初期対応と治療、フォローまで

東葛病院の救急外来は、年間約2万1千人(1日あたり約57人)の患者さんが受診されます。救急車は年間で約3000台を受け入れています。今号では「救急総合診療センター」の特色と役割を後藤慶太郎副院長に聞きました。(編集部)

小児科医・研修医と救急対応する後藤慶太郎医師

小児科医・研修医と救急対応する後藤慶太郎医師

救急総合診療センター

救急外来には、4つの診察室と1つの隔離診察室があります。救急外来に併設した救急病棟は8床で運用しています。東葛病院の救急外来は、受診された患者さんの状態や程度(軽症なのか重症なのか、ケガなのか病気なのか)に関わらず担当する医師がすべて初期対応を行う方式を採用しています。こういった診療スタイルの救急外来を「ER」と呼びます。ERと救急病棟を合わせて「救急総合診療センター」として運用しております。

小児科医師との連携

つくばエクスプレス沿線の開発に伴って若い世代の人口が増えています。そのため、ERを受診される小児の患者さんが増えています。突然の発熱や嘔吐下痢のため受診される方が多く、ほとんどの方は、ER担当医師の診察にて、処方をうけ帰宅されます。中にはけいれんが止まらないため救急車で搬送されるお子さんもいます。一刻も早くけいれんを止める必要があるため、酸素投与を行ったり、薬剤を注射して処置を行いますが、こういったケースでは小児科の医師に応援に来てもらい、診療を引き継ぎます。

自宅を訪問し、安否確認するスタッフ

自宅を訪問し、安否確認するスタッフ

総合医療の神髄

高齢化社会の到来や高齢者施設の新設などで高齢者の患者さんも増えています。具合が悪くなると、うまく症状を訴えられなかったり、診察をしてもどこが悪いのかわかりにくいというのが高齢者の特徴です。また持病もたくさん抱えている方が多く、総合的な診断や治療が必要となります。例えば認知症と糖尿病を患っている高齢者の患者さんが、肺炎と心不全で救急外来を受診されたとします。
大学病院など専門分化した病院の場合、認知症は神経科、糖尿病は代謝科、肺炎は呼吸器科、心不全は循環器科の医師の診察が必要になります。こういった患者さんに適切な初期対応や治療をおこなうのがERの役割であり、総合診療の神髄といえます。

権利としての医療を実践

経済的な理由によって受診を控えて重症化したり、家族の介護や療養が十分でなかったりというケースが増えています。東葛病院のERは、医療を受ける権利を大事な人権の一つと位置付け、お金や保険証の無い方でも安心して受診できるように、まずは受診をしていただいています。
その後ソーシャルワーカーと協力して制度活用を目指します。また、非常に危険な状態なのに入院されずに帰宅されてしまった患者さんもいます。連絡がつかないときは、自宅訪問をして安否確認や受診を促したり、「気になる患者訪問」の取り組みも行っています。

子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)
~安心して子育てできるように サポートします~
~安心して子育てできるようにサポートします~

東葛病院産婦人科スタッフ一同

出産は産んで終わりではなく育児のスタートであり、家族のスタートです。東葛病院産婦人科は妊娠期から子育てを見据えたサポートを行っています。
まず医師と助産師が丁寧に妊婦健診を行います。保健指導の中でウェルカムベビープランを作成します。妊娠・出産や育児について「自分達はこうしたい」要求をスタッフに伝えていただきます。私達はプランを基にご家族の希望に沿えるようお手伝いします。マタニティクラスは全4回行っており、特に体作りや食事を見直す目的の調理編は好評です。産後入院中はママと赤ちゃんを離さないために母児同床とし、授乳や沐浴をはじめ退院後の生活がスタートできるようにサポートします。退院後は2週間を目安に行うフォロー外来と1ヶ月健診でママと赤ちゃんの健康状態を確認します。その後は外出や仲間作りの機会としてベビーマッサージを行っています。
ママが笑顔でいることは家族の幸せにつながります。私達はその伴走者です。内容についてもっと詳しく知りたい方は病院ホームページをご覧いただくか、産婦人科スタッフまでお問い合わせください。

シリーズけんさ110【血液検査⑨】

検査課 古澤 章雄 臨床検査技師

東葛病院採血コーナー
総蛋白(TP)とは

総蛋白(TP)とは、血液中に含まれている蛋白すべての総称です。総蛋白=アルブミン+グロブリンという関係になります。アルブミン(Alb)とは総蛋白の約2/3を占める蛋白質です。肝臓の細胞でつくられ、血液中のさまざまな物質を運んだり、体液の濃度を調整する働きをしています。主に栄養状態の指標となります。残りの蛋白はグロブリン(Glb)と呼ばれるたくさんの種類の蛋白の総称です。グロブリンは、バイ菌などの異物を排除する働きをする免疫グロブリンが主な蛋白で、種々の炎症で増加します。

総蛋白の低下

総蛋白の低下は、アルブミンの低下かグロブリンの低下のいずれかで起こります。ほとんどはアルブミンの低下が原因で総蛋白低下が起こります。アルブミンの低下は、栄養不足や「肝硬変」など肝臓の働きが悪いときだけではなく、腎臓から尿中へ蛋白が失われる「ネフローゼ症候群」や小腸から便中に蛋白が失われる「蛋白漏出性胃腸症」でも起こります。また、甲状腺ホルモンの異常分泌で代謝が亢進する「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」でもアルブミンは代謝(分解)されて低下します。

総蛋白の増加

反対に総蛋白が増加する病気もあります。「多発性骨髄腫」という病気では、増殖したBリンパ球からある種の免疫グロブリンが異常に合成され全体の蛋白量が増加します。
このように総蛋白とアルブミンは、その検査結果から臨床的に非常に有用な情報が得られ、患者さんの状態評価や色々な疾患診断の補助として利用されています。
*基準値‥総蛋白‥6.7~8.3g/dl アルブミン‥3.8~5.2g/dl

甲状腺エコー検診を受けましょう

健診センター看護師長 山崎由美子

甲状腺エコー検診を受けましょう

甲状腺エコー検診は、スクリーニング検診です。この検診は2011年3月の東京電力福島第一原発事故の被曝による健康影響の一環で、甲状腺への影響がないかを調べます。関東圏への影響を考えた場合、原発事故により放出された放射性物質のうち、最も広範囲に拡散した可能性があるとされるのが「ヨウ素131」です。この「ヨウ素131」は甲状腺に取り込まれやすく、甲状腺がんの原因とされています。

一つの細胞が傷つけられたのをきっかけにしてその細胞が細胞分裂をして1㎝大の「がん」に成長するまでには、甲状腺細胞の場合4~5年かかると言われています。
今異常がなくても、将来大きくなったり、がん化する可能性も否定できません。毎年ないし数年後の健診結果と比較できることは、その人にとっての大切な医療資料となります。
甲状腺エコー検診は安心のための検査と位置づけて続けていくことが大切です。

相談室の窓から 患者サポートセンター

ソーシャルワーカー 松本 祐子

自分らしい生き方の支援

昨年11月代々木病院から東葛病院に赴任しました相談員の松本祐子と申します。赴任当初は緊張や不安で一杯でしたが、あたたかい友の会や職員の皆様のお陰で少しずつ東葛病院に慣れてきました。
代々木病院では患者さんの社会復帰を支援するリハビリテーションソーシャルワークを学びました。今は急性期病棟を担当させて頂き、患者さんや医療を通して新鮮な学びの多い日々を送っています。
ここで異動後に印象に残った事例を紹介します。10年間路上生活をされていたAさんは数年前より歩きにくさを自覚していました。
なんとか受診に繋がると入院になりました。同時に生活保護を申請し、Aさんの希望であるアパート生活を目指しました。
役所職員がAさんの希望も確認せずに施設に入所させようとする予期せぬ事もありましたが、無事に退院しアパート生活を始めました。そんなAさんの人生の転機に関わることができました。
病気をきっかけに生活や人生には様々な問題が起こりえます。患者さんやご家族が問題に向き合ったときに自分らしい生き方を選択できるようにご支援していきたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。

流山社保協介護施設見学
誰もが気軽に立ち寄れる居場所を
「いこいの家717」50人の大合唱

「いこいの家717」50人の大合唱

2月10日 流山社保協(大野義一郎会長)は大型バスを仕立て、介護関連施設見学を行いました。初めは葛飾区にある特別養護老人ホーム「葛飾やすらぎの郷」。1階はデイサービスになっており、利用者やボランティアの歌声が聞こえてきました。中庭では地域のボランティアが年1回コンサートを開くそうです。2階3階は病室。2床室ではプライバシーが保たれるよう工夫されていました。屋上は日本庭園。昔懐かしい赤い郵便ポストや、手押し式ポンプ井戸もありました。屋上からは柴又の花火が良く見えるそうです。
柴又で昼食を済ませ、次に向かったのは三郷「いこいの家717」。ボランティアさん含め50名近い大合唱団が合唱中で、見学の私たちにも楽譜や椅子を貸してくれます。ペットボトルに豆を入れたマスカラ、茶筒を叩いてドラム、楽しい楽器演奏に時間のたつのも忘れ、夢中でリズムに乗りました。気軽に立ち寄れる本当に「いこいの家」でした。最後は東葛病院付属診療所の2階にある流山ふれあいの家「ぴーすふる」を訪ねました。誰もが気軽に立ち寄れる施設をめざして麻雀や茶の湯セットが用意され、これからの活躍が期待されます。参加した24人は大満足の一日でした。(編集部)

東葛病院の医療を良くする委員会報告
あなたの声から
寄せられた声
病院前にポストが欲しい。勝手に設置はできないと思うが、入院患者はたいへん不便だ。
対応と対策
ご不便をおかけしています。新病院開所前から日本郵便に対し設置要望を出しておりました。このたび設置の認可がおりましたが、敷設には期間が必要です。それまでは市バスロータリー横のポストをご利用ください。
寄せられた声
保険証の毎月の確認が病院として大事なことは分かっているが、長い待ち時間は苦痛だ。
対応と対策
ご理解に感謝いたします。病院として患者さんサービスの面からも解消したい問題です。受付人員を増やす、確認工程を簡素化するなど検討しております。ご意見ありがとうございました。

●病院・駅前診療所へのご意見ご要望は、病院入口横の用紙で、同ポストへ投函して下さい。

いのちと人権の現場から
政府や法律は誰のもの

ソーシャルワーカー 安西 彩子

基地建設反対テント前におかれた掲示

基地建設反対テント前におかれた掲示

2017年1月26日から28日の3日間、全日本民医連辺野古沿岸新基地建設反対運動第39次支援・連帯行動に参加しました。普天間基地や嘉手納基地を高台から眺め、東村高江、辺野古でのヘリパッドや新基地建設反対運動の現場を訪問しました。また辺野古では新基地建設予定地である湾岸周辺をボートで海上調査し、その際には私自身も海上保安庁のボートに追われるということもありました。
立ち入り制限区域の外をボートで走行していただけで4艘もの黒いボートがスピーカーで警告しながら私たちのボートを追ってきたのです。写真はその際の海上保安庁のボートを写したものです。

私たちを執拗に追い回した海保のボート

私たちを執拗に追い回した海保のボート

反対行動の現場では、国家機関による暴力、監視が横行しています。そこに、市民と対話しようという意思はまったく見られず、国の決定に対して説明を求めたり、抗議しただけで逮捕されたり、国家権力によってねじ伏せられてしまう現状があります。政府、警察、法律は誰のためのものなのか、と考えずにはいられません。
弱い立場におかれた人々に負担を強いて、その人達の声に耳を傾けないどころか、暴力によって封じ込めるやり方は間違っていると思います。しかし、間違っていることを間違っていると大きい声で言えない時代になってきていることを沖縄へ行って強く感じました。

東葛病院、駅前診療所、付属診療所(下花輪)の医療活動 (2017年1月分)
駅前診療所 1日平均外来患者数 151人
付属診療所 1日平均外来患者数 31人
東葛病院 1日平均外来患者数 659人
1日平均救急・夜間外来患者数 75人
1日平均入院患者数 314人
手術件数 110件
主な検査 血管造影 24件
内視鏡 619件
CT 1,042件
MRI 328件
心電図 996件
腹部エコー 444件
心エコー 291件
救急患者数 2,323件
内 救急車搬入件数 286件

掲載日:2017年3月1日/更新日:2024年10月25日

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