東葛の健康 No.370(2015年5月号)

東葛病院の医療【皮膚科】
紫外線と皮膚障害(皮膚がん)~紫外線防御対策を大切に

吉田 寿斗志 医師

一年の内で紫外線のピークをむかえる5月~8月。とくに5月は、冬から春の乾燥で弱っている肌に急に増加した紫外線が降り注ぐという、とりわけ皮膚のケアが必要な月です。「紫外線と皮膚障害」について東葛病院皮膚科吉田医師に聞きました。

慢性的な紫外線影響

「紫外線はお肌の敵」とテレビや雑誌などでよく取り扱われ、紫外線が原因で皮膚障害を起こすことはご存知の方が多いと思われます。実際、長期の紫外線曝露によって「しみ」、「しわ」、「たるみ」などを起こします。

老化には2種類あり、加齢とともに進行する「生理的老化」と長期の紫外線曝露による「光老化」があります。紫外線防御対策をされなかった高齢者の顔などの日光裸露部の皮膚は慢性的な紫外線曝露の影響でしわが深く、はりがなくなり、しみや血管の拡張などみられます。一方、紫外線を浴びにくい臀部などの皮膚は薄く、細かいしわで乾燥し、ざらざらしていますが、日光裸露部に見られるようなしわは深くなくしみも少ないです。

皮膚がんの発生

年配の方の若い時代は、日光は健康によいものとされていました。紫外線は骨の成長に関与するビタミンDを体内で生成するのに必要でプラス面もあります。ただ、それ以上に紫外線によっておこるマイナスの面が多く、紫外線曝露で起きる「しみ」、「しわ」、「たるみ」といった美容面がそこなわれるだけでなく、皮膚がんの原因となります。

また、皮膚以外にも眼病変の発生、悪化の原因となったり、免疫機能の低下をもたらしたりします。紫外線は遺伝子であるDNAに傷をつけ、長年にわたり繰り返し傷つけられているうちに、修復する機能に異常をきたして皮膚がんが発生すると考えられています。多くの皮膚がんは顔や頭、手など日光裸露部に好発し、高齢に伴い罹患率は上昇していると思われます。

紫外線曝露に関係がある皮膚がんには日光角化症、基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫(メラノーマ)があります。

皮膚がんと高齢化

日本の皮膚がんの発生数は年々増加し、今後もさらに増加するものと思われます。皮膚がんの増加している原因は高齢化と紫外線が深く関係しています。人生90歳という現在では皮膚がんを発生させないように若年時からしっかりと紫外線防御対策をすることが大切です。

6つのスキンタイプ

紫外線防御対策には日焼け止めクリームの使用がかかせません。また、日傘やつばの広い帽子などで皮膚に到達する紫外線を減らすことも重要です。日本人などの黄色人種では紫外線に当たると最初は赤くなりますが、その後黒くなります。

フォトスキンタイプは紫外線に対する反応性の違いで6つに分けられます(表参照)。特に皮膚がんになりやすいのはⅠ、Ⅱに属する人です。日本人はタイプⅡ~Ⅳにあたります。自分のスキンタイプを理解し、特にⅠ、Ⅱに属する人は紫外線防御対策を十分に行ってください。

フォトスキンタイプ
スキンタイプ 反  応
I 常に赤くなり、決して皮膚色が濃くならない
II 常に赤くなり、その後少し皮膚色が濃くなる
III 時々赤くなり、必ず皮膚色が濃くなる
IV 決して赤くならず、必ず皮膚色が濃くなる
V 皮膚色がとても濃い
VI 黒人

出典:公益社団法人 日本皮膚科学会

子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)④
卒乳と断乳

助産師 安藤 みか

1歳を過ぎると「まだ母乳飲んでるの?」などと言われることがあります。「1年を過ぎた母乳は水と同じ」という噂もあり、母乳育児を楽しんでいるお母さんは、ふと不安になるかもしれません。

実際は複数の免疫物質が産後1ヶ月の母乳と同濃度含まれており、多くの感染症を予防します。世界保健機構(WHO)は「生後6ヶ月以降は適切な食物を補いながら2年以上の母乳育児を継続する」ことを推奨しています。「まだあげたい」とお母さんが望むなら自信を持って母乳育児を続け、赤ちゃんが自然に母乳を卒業する「卒乳」の時期を待ってはいかがでしょう。

お母さんの意志で母乳育児をやめる「断乳」を行う場合は、乳房にアンパンマンを描いたり、絆創膏を貼ったり、色んな工夫をしているようです。どんな方法でも〝人生の中のほんの一時期のかけがえのない時間〟の思い出にして欲しいなと思います。

母乳育児は一人が頑張るのではなく、家族や地域の支えがあって初めて成り立ちます。困った時は助産師などの専門家以外に、母乳育児を支える自助グループ「ラ・レーチェ・リーグ」なども頼りになります。サイトを覗いてみてください。

クスリあ・れ・こ・れ<隔月掲載>
おくすり手帳の活用~確実な情報の共有と伝達

薬剤部 斉田 幸司 薬剤師

おくすり手帳

平成23年3月11日に発生した東日本大震災から4年という月日が経ちました。津波被害等により医療機関や薬局、カルテや薬歴等、大きな被害を受けました。患者さん服用中の薬を正しく把握することがとても困難でした。東葛病院も停電などの被害を受け処方歴の確認が出来ず、とても大変な状況でした。そんなときに活用されたのがお薬手帳でした。

お薬手帳は、様々な場面で情報共有ツールとして有効に活用されました。また、本人が所有する手帳に情報が蓄積されることが、医療スタッフの交代や受診先の変更があっても即時かつ確実に情報を伝達することを可能にしました。医療スタッフの間では、カルテ・薬歴代わりとしても活用され、検査値や体調などを書き込むことで、医療スタッフの申し送り・伝言板の役割も果たしました。

おくすり手帳の記入欄

薬局で薬を購入する時、救急病院を受診する時にも、お薬手帳を見せるだけで、あなたのお薬のことをわかってもらえます。薬の重複や良くない飲み合わせ、同じ薬による副作用の再発を防止できます。薬の使用の記録があることで、より安全に薬を使用することができます。一般用医薬品(OTC医薬品、大衆薬)・健康食品も記録しておきましょう。体調の変化や気になったこと、医師や薬剤師に相談したいことなども書いておきましょう。医療機関にかかる時は必ず持って行き、最新の情報を記載しておくことが大切です。

シリーズけんさ101【細胞診(さいぼうしん)検査】

検査課 拜原 直樹 臨床検査技師

細胞診に使われる顕微鏡

細胞診(さいぼうしん)とは

「がん」は早期発見・早期治療が大切です。その発見方法の一つに「細胞診」があります。人間の身体は約60兆個の細胞でできていて、そこから突然変異して増え続ける細胞が「がん細胞」です。細胞診とは、採取した細胞をスライドガラスに塗布し、顕微鏡を用いて標本中の細胞の大きさ・形などを診てがん細胞の有無などを判断する検査法です。

細胞診の特徴

特徴は、体にほとんど傷をつけることなく検査ができることです。ですから、同じ人が何度も繰り返して検査ができ、体に傷痕も残りません。また、子宮癌発見のための婦人科検診や喀痰による肺癌検診のように沢山の人の検査が可能です。直接、体の一部を擦って細胞を取ったり(子宮癌など)、体から排泄されるものの中の細胞を集めたり(痰:肺癌、尿:膀胱癌など)、「しこり」に直接注射針を刺し込んで細胞を吸い取って(乳癌、甲状腺癌など)検査します。細胞診は低侵襲で比較的安全に細胞の検査ができるため、がん検診に用いられることが多いです。

細胞を見分ける

悪性細胞

次に「がん細胞」は顕微鏡で見ただけでわかるのか?ということの説明をします。「がん細胞」のことを悪性細胞とも言います。正常の細胞のほかに炎症、感染、傷口の修復などに伴い変化した細胞のことを良性細胞と言います。

細胞をスライドガラスに塗りつけて、色々な方法で染めるとこれらの細胞を見分けることができます。このようにして、良性細胞か悪性細胞か見分けたり、良性細胞の中から少数の悪性細胞を見つけ出します。

良性細胞

がん細胞にはいろんな特徴があり、一目で悪性細胞(がん細胞)と直ぐ分かるような特徴がある細胞から、良性細胞と区別の難しい悪性細胞、悪性細胞と区別が難しい良性細胞などがあります。これらを見分けるにはかなりの知識と経験が必要です。

作家・落合恵子講演会開催~原発問題講演に300人集う
原発ゼロ・疲れたら休んでもいい、肩をならべてご一緒に

事務局長 武井 和希

講演する作家・落合恵子氏

未曾有の大災害と史上最悪の原発事故から4年経ちました。被ばく医療委員会では、このことを忘れない、風化させないために年に一度、市民全体を対象にした学習会を企画しています。

今年は作家・落合恵子さんをお招きしての講演会です。今年の特徴は実行委員会ではなく、HPH推進委員会・東葛健康友の会と共催し東葛病院を中心にしての企画としたこと、企画・運営に20代、30代の若手職員が積極的に取り組めたこと、などです。

講演で落合氏は、自らの生い立ちから、反原発1000万人アクションのこと、平和のこと、差別のこと、何かあった時に真っ先に犠牲になるのは弱い立場に立たされた人であること、などを話されました。また、活動を続けることは「自分との約束を果たす」と話され、「疲れたら休んでもいい、肩をならべて一緒に歩んでいきましょう」と訴えました。

当日参加した約300名の方からも「あきらめずに行動したい」「できないことよりできることを考えたい」「私も自分に約束した」など、共感や決意表明の感想が多数寄せられました。ご協力いただいた全てのみなさま、ご支援・ご協力ありがとうございました。

いのちと人権の現場から

付属診療所事務主任 長井 海雄

医療現場の声を伝える

国会議事堂

桜の盛りもあっという間に過ぎ、今年も病院の軒下に燕が巣をかけにきました。燕の訪れとともに、東葛病院には31名の新入職員が入職しています。様々な企業のユニークな入社式や研修がニュースになることも多いこの季節ですが、東葛病院が属する東京民医連にも、他ではみられないような一風変わった研修があります。

新入職員が直接国会に出向き、医療現場の声を伝えるというこの研修は「青年国会行動研修」と銘打たれ、昨年1度の中断を挟みましたが16年続く名物研修となっています。私も3年間事務局としてこの研修に関わり、毎年「なぜ医療従事者が国会に行くのか?」という疑問に向き合ってきました。

事務職員として現場で働いていると、経済的困難を抱えた患者さんの多さに驚かされます。無料定額診療事業の利用者も増え続け、特に40代50代の比較的若い世代が多くなってきているのが特徴です。

疾病によって経済的にも追い詰められるという事実を知り、疾病の発生そのものに貧困などの社会的環境が大きく影響していると気付いた時、国会へ向かう意義は明確になります。弱者を切り捨て貧困を生みだし、健康を破壊する今の政治を正すことが、私達のめざす誰もが安心して受けられる医療の実現に繋がるのではないでしょうか。

NPTニューヨーク平和行動
後藤医師が全日本民医連から参加へ

救急科科長 後藤 慶太郎

NPT会議開催に合わせニューヨークで反核行動へ

毎年8月になると、私の祖母は岡山大空襲の話をしてくれました。幼子を抱えて逃げまとい何とか生き延びました。祖父は大やけどを負い喘息が難治となり、母が高校生の時亡くなりました。祖母はいつも話の最後に「戦争はおえん」(岡山弁でいけないという意味)と私に言ってきかせていました。そんな祖母も2年前にこの世を去りました。

今年は広島・長崎の被爆から70年です。安倍政権は戦争する国づくりを進めようとしています。日本政府は核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連総会決議に「棄権」の態度を取りつづけています。核兵器廃絶に向けた運動は、被爆国日本の責務であり、われわれ医療従事者の使命です。ニューヨークで大いに訴えてきます。

2010年ニューヨークでの核廃絶を求める平和行動

東葛病院・付属診療所の医療活動(2015年3月分)
付属診療所1日平均外来患者数 724人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 53人
1日平均入院患者数 287人
手術件数 109件
主な検査 血管造影 24件
内視鏡 585件
CT 982件
MRI 313件
心電図 923件
腹部エコー 380件
心エコー 264件
救急患者数 1644件
内 救急車搬入件数 272件

掲載日:2015年5月1日/更新日:2024年10月25日

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