東葛の健康 No.364(2014年11月号)

東葛病院の医療【緩和ケア】
緩和ケア外来を開設~様々な症状や不安の解決に

建設中の新病院には、緩和ケアチームを中心に緩和ケア病棟を設置する予定で、準備を進めています。新病院への移転に先んじて、東葛病院では緩和ケア外来を開設いたしました。紙面が限られておりますが、今号は緩和ケアについてお話しします。

渡邉 真 医師

渡邉 真 医師

緩和ケアについて

がんを患われた多くの方が、何らかの痛みを感じておられます。その痛みとは、がん告知や病状の進行を知ったときの心の痛みや、病状の変化によって自分らしさが失われていく感覚など、必ずしも身体が直接感じる痛みだけにとどまりません。これらの痛みを和らげ、穏やかに日常生活を行なっていくための治療が緩和ケアです。

緩和ケアという言葉に対して、「がんの治療が出来なくなってからの治療」「がんの終末期に受ける治療」といったイメージをもたれている方が多いようですが、がんと診断された時点から緩和ケアを同時に行なっていくことができます。図に示したとおりがんに対する治療(抗がん剤治療、手術、放射線治療)と緩和ケアを同時に開始して、病状に応じてそれぞれの割合を変化させていきます。治療に伴うつらさを軽減することが期待できるため、がん治療を続けていく上でも良い効果が期待できます。

緩和ケアとがん治療のチャート

緩和ケアとがん治療のチャート

がんの治療に伴う苦痛(吐き気、食欲低下、痛みなど)の状況に応じて、
緩和ケアはがん治療とあわせて行われます。

痛み止めの正しい理解

がんの痛みに限らず、われわれ日本人は痛みを我慢してしまいがちな傾向をもっているようです。診察の際に痛みについてお話を伺うと、「このくらいだったら大丈夫です。」「少し痛いけど我慢します」。などと仰る方が多いように感じます。また、「痛み止めを使うと体に悪い気がする。痛み止めを使うとくせになってやめられなくなる」。という声を伺うこともあります。

緩和ケアでは、適切な痛み止めを用いることで辛い痛みを和らげ、症状が出る前と同じような生活を送って頂けるようになる事を目指します。処方するお薬の中にはモルヒネやそれに似た成分の麻薬が含まれることもあります。日本では医療の現場で麻薬を十分に使用してこなかった歴史があり、我々医療従事者にとっても治療を受けられる方にとっても敷居が高い薬物のようです。

緩和ケアに対する理解が深まりつつある近年では、わが国でも医療用麻薬の使用量は増加傾向にありますが、他国に比べればまだ十分とは言えません。違法薬物の報道などの影響で麻薬に対して抵抗感をお持ちの方も多いかもしれませんが、麻薬は適切に用いれば中毒や依存症になることなく強い痛みを取り除くことが出来ること、麻薬を用いることで寿命が短くなることはないことを知って頂き、痛みを和らげる治療に前向きに取り組んでいただきたいと考えています。

当院の緩和ケアチーム

緩和ケア外来の渡邉医師、看護師長、緩和ケア認定看護師

緩和ケアでは、さまざまな症状やご不安を解決するためにさまざまな職種が集まったチームで解決にあたります。当院でもこれまで医師・看護師・薬剤師・リハビリスタッフ・相談員・心理士などで編成された緩和ケアチームが入院患者さんを中心としたケアに携わってまいりました。入院中に緩和ケアに対するご相談などがある場合には、お気軽にお問い合わせください。9月からは、外来通院されている方を対象に緩和ケア外来を開設しております。当院にてがん治療を受けておられる方だけではなく、他の医療機関でがん治療を受けておられる方も受診いただくことが出来ます。外来には担当医の他に専任の看護師がおり、ゆっくりとお話を伺うことが出来ると思いますのでぜひご利用ください。

患者さんの心に寄添って-東葛の医療
北村 依理 医師

北村 依理 医師

脳卒中患者会の発足
 思いを語り〝きらく〟に楽しみながら

脳卒中の後遺症の患者さんたちの会「きらく会」が船出しました。

9月4日、脳卒中の後遺症を持つ患者さん6人と、病院のスタッフが集まり、今後1~2か月に1回程度の予定で会を持つことになりました。経験者でないとわからない思いを話し合い、気楽に楽しみながら集っていこうということで、「きらく会」と命名しました。左半身が不自由なので、エスカレーターの右側に立つ必要がある(右手で捕まる必要がある)が、後ろから突き飛ばされたことがある。外を歩いていると、子供の動きが予測がつかず怖い。リハビリの外来通院を終了したら、外出をあまりしなくなった…。などの声が聞かれました。


リハビリを援助する北村医師

介護保険を使うか使わないかくらいの障がいの方達で、介護者をあまり必要としない男性ばかりのスタートでした。エスカレーターを歩いて昇れないけれど右側に立つ必要がある人がいること、歩くことに真剣である人がいることをぜひ知ってほしいです。以前、ある患者さんが、歩くスピードが以前と比べると蟻のようになってしまった気がする、でも、蟻には蟻に見える世界がある、と言っていました。これからも会から、いろんな発信をしていきたいと思います。

歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>

東葛歯科 歯科衛生士 砂川 美紀

口腔ケアと全身の健康~口腔ケアの重要性

虫歯や歯周病は、歯の汚れが原因となり、歯や歯の周りの組織を壊していきます。歯の汚れは、食べカスと細菌がありますが、細菌は歯に付着した状態で歯磨きをしないとますます増え続けます。歯の健康を保つためには、まず、きちんと歯の汚れを取り除くことが大切です。

口の中の汚れを誤嚥してしまうと誤嚥性肺炎を起こしてしまう可能性があります。一方、口腔ケアをしっかり行うと咽頭部に付着するインフルエンザウイルスの量が減少するともいわれています。口腔ケアは虫歯や歯周病の予防だけではなく、誤嚥性肺炎やインフルエンザの予防等全身の健康にもつながっています。

(Ⅰ)歯磨きのポイント・ハブラシは力を入れすぎず小刻みに動かします。・ハブラシの毛先を当てるポイントは①歯と歯茎の境目②歯と歯の間③奥歯の噛みあわせの溝です。・歯と歯の間の隙間は歯間ブラシを使います。
(Ⅱ)入れ歯の手入れ・食後は入れ歯を取り外して磨きます。・入れ歯は流水下で義歯ブラシ(ハブラシでもよい)を使って磨きます。(磨き粉は付けない)
(Ⅲ)舌もきれいに・舌の表面の白い部分は舌苔という汚れです。舌苔は口臭の原因になります。ハブラシや舌ブラシで磨きましょう。

シリーズけんさ97【微生物(ウイルス)検査②】

臨床検査技師 岡崎 健一

今回は、ウイルスについてお話します。

ウイルスという言葉は、ラテン語の「毒」という言葉が語源となっています。ウイルスは、タンパク質から出来た殻に核酸(DNA・RNA)が詰め込まれただけの非常に簡単な構造をしています。ウイルスは、細菌よりも小さく、特殊な顕微鏡(電子顕微鏡)でないと見る事は出来ません。細菌は、栄養・温度・湿度などの条件が揃えば増える事が出来ますが、ウイルスは生きた細胞に感染しないと増える事が出来ないため、簡単には培養出来ません。

また、細菌には抗生物質が効きますが、ウイルスには全く効果がありません。そのかわり、抗ウイルス薬というものがあります。これからの季節、よく耳にするウイルスは、インフルエンザウイルスやノロウイルスなどです。検査法は、インフルエンザは鼻に綿棒を入れて行う簡易キット、ノロは便を使う簡易キットを使用して調べます。

また、培養・簡易キットが出来ないウイルスは、採血を行いウイルス量や抗体量を調べます。手洗い・うがいを行い、マスクをするなどの予防をしましょう。さらには、ワクチンの予防接種を行う事をお勧めします。

次回は、真菌(カビ)についてお話します。

熱中症注意を車でも呼びかけ

電子顕微鏡で見たウイルスの画像(出典・国立感染症研究所ホームページより)

第26回とうかつ健康まつり
笑顔あふれるまつりに

晴天に恵まれた10月19日、第26回とうかつ健康まつりが開催され、2500人の参加がありました。子どもが、「参加して楽しいまつりに」と子どもの広場ではローラーコースターやミニSLが走り、舞台ではキッズダンスや医局の「妖怪体操」、場内ではチーバ君などが愛嬌をふりまきました。

「子どもの笑顔があったまつりだった」と実行委員のIさん。バザーの品物を提供くださった皆さまやご協力いただいた皆さま全てに感謝です。(編集部)

チーバ君と遊ぶ子どもたち

医局劇団による妖怪体操

いのちと人権の現場から~「命どぅ宝」を考える
副院長 濱砂 一光

副院長 濱砂 一光

「いのちと人権」とかいう、立派なお題目とは無縁な私ですが、ふと思ったことを少々。

私は九州の山奥、いわゆる過疎地で生まれ育ちました。流山市の4倍の面積に人口は300人ほど。同級生は11人。1人引っ越してくると大騒ぎ。1人亡くなると大騒ぎ。なにしろ1人は人口の0.3%に当たります。まさに「命どぅ宝」です。

その同級生11人の父親2人が山仕事中の事故で亡くなりました。過疎地赴任で来ていた学校の先生の奥さんが心筋梗塞で亡くなりました。街からの救急車は1時間かかります。村の人は「こんなところに来てしまったばっかりに、先生、申し訳ない」と謝ってました。

どうして、田舎に生まれ育ったというだけで、助からないのだろう。どうして、自分たちの村を卑下し謝らないといけないのだろう。そして今。どうして、病院はいっぱいあるのに受診できない人がいるのだろう。どうして、「宝の命」があるのに、自ら無くしてしまうのだろう。自分の足でしっかり立って、考え続けようと思います。

あ、あと。どうしてこんなに休みがないんだろう(笑)。

※写真は記事との関連はありません

過疎の集落

東葛病院・付属診療所の医療活動(2014年9月分)
付属診療所1日平均外来患者数 743人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 55人
1日平均入院患者数 287人
手術件数 110件
主な検査 血管造影 28件
内視鏡 539件
CT 922件
MRI 312件
心電図 1068件
腹部エコー 431件
心エコー 321件
救急患者数 1623件
内 救急車搬入件数 200件

掲載日:2014年11月1日/更新日:2024年10月25日

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