東葛の健康 No.357(2014年4月号)
- 東葛病院の医療【災害訓練】
- クスリあ・れ・こ・れ〈隔月掲載〉
- シリーズけんさ90【脳波検査】
- 無料低額診療事業から見えるもの
- 東京勤医会内の看護介護活動交流集会
- いのちと人権の現場から
- 東葛病院・付属診療所の医療活動(2014年2月分)
東葛病院の医療【災害訓練】
実戦さながらの「第4回災害訓練」~防ぎ得た災害死をださないために
「市内ホールにおいて天井崩落事故が発生、負傷者が100名を超える被害に。
東葛病院にて多数負傷者の受け入れを行う」という想定で去る2月19日、東葛病院内で「第4回災害訓練」を行いました。
訓練の経過
当日の模様を実行委員会事務局の廣幡道子さん(医事課)に聞きました。
救急搬送中の模擬患者
「傷病レベル・トリアージ赤(生命を救うため、直ちに処置を必要とする)患者2名、重症患者10数名の受け入れ要請、及び自力脱出した軽症患者20数名の患者を想定し、受け入れ訓練を行いました。消防署から救急搬送受け入れ要請の第一報が東葛病院救急センターに入り、直ちに災害本部を立ち上げました。
下正宗災害対策本部長より各職場へ職員派遣の要請が行われ、傷病者受け入れに対する体制を整えました。また救急搬送の他、病院2階入口にトリアージポストを設置、医師・看護師が次々に来院する模擬患者のトリアージを行っていきました。
その後トリアージされた模擬患者は各傷病レベルに応じた診療ブースに誘導されて行きます。このブースでの診療の結果、緊急手術を要する患者、入院になる患者、軽症で帰宅される患者など、あらゆる患者に対応できる体制の訓練を行いました。
各機関のご協力のもとに
訓練中は救急車の受け入れをお断りしたことから近隣の消防署、流山市医師会のご協力を頂き、訓練後には松戸市立病院・森本文雄先生より「患者搬送時の注意点、傷病によるパニック患者の対応対策等」についてご指導、ご講評をいただき、参加者全体で訓練の振り返りを行い、終了しました」。
一人でも多くの命を救うこと
救急科科長
後藤 慶太郎 医師
今回の訓練の総監督を務めた東葛病院救急科科長後藤慶太郎医師は、「普段の救急医療では、一人の患者さんに対して、病院の持てる機能や医療資源を最大限活用して、治療にあたります。しかし、災害時の医療は、平時の医療に比べて、傷病者・患者の数が圧倒的に増えます。そのため、災害時には、一人の患者さんにベストの医療を提供することより、一人でも多くの傷病者を救うことが目的になります。
受け入れる病院の数や、そこで働くスタッフの数も足りなくなりますし、点滴や酸素などの資機材も圧倒的に不足します。阪神淡路大震災の際には、『防ぎ得た災害死』が約500名存在したといわれています。制限された医療資源の中で、一人でも多くの命を救うことが災害医療の目的なのです。
災害本部で指示を出す大野副院長
トリアージとは
災害時には傷病者は、トリアージといって、どれだけ急を要する状態かどうかという選別が、救出現場や病院にて行われます。意識がない、呼吸困難、ショック状態という重症の傷病者が、最優先で治療が行われます。
訓練では、重症の傷病者に処置を行ったり、緊急手術を行うなど本番さながらの雰囲気で行いました。実際に、被災地の病院では治療ができない場合は、広域搬送といって、被災していない地域の病院にヘリコプターなどで搬送することも必要になります。
自力歩行が可能な軽症の傷病者は、数時間程度の時間的猶予があるので、病院では最優先の患者群とはなりません。軽症の傷病者で病院機能がマヒしてしまい、重症の傷病者の治療ができないということがないようにするためにも、病院の災害訓練を行っています。今後様々な規模や種類の災害に対応できるようにするため、病院をあげて災害訓練に取り組んでいます。訓練時には患者様、病院利用者の皆様にご迷惑をおかけします。今後ともご協力をお願いします」と語ってくれました。
手首のタグの色で対応する治療班
クスリあ・れ・こ・れ〈隔月掲載〉
薬剤師 藤井 基博
処方通りに薬を使用するには~正直に伝えることが大事
薬については、数々の公然の秘密があります。「処方された薬の3割以上が、医師の指示通りに使用されていない」というのもその1つ。使用されていない理由は、飲み忘れたり、使い方がわからないなどの「意図的ではないもの」と、勝手に量を調整したり中止してしまう「意図的なもの」にわかれます。
医師の指示通りに使用されていない、という文字通りの展開を、私自身も経験することになりました。気管支喘息で処方された1回1吸入を1日2回のステロイド吸入をする。これなら大丈夫と意気込んだものの、吸い忘れる日々が続いたのです。
意図的であるないに関わらず、処方通りに薬を使用するにはどうすればよいのでしょう。まずは、指示通りに使うという覚悟を決めることだと思います。なおかつ、副作用かも知れないと思ったら、それを伝える。飲み忘れたら、それも伝える。いつか薬を止めたいと思っているなら、そのことも伝える。この伝えることをルールにするのです。治療は共同で行う時代ですから。
さて、私も次の受診のときには、主治医に正直に伝えますよ。吸入はたまに忘れてしまう、と。
シリーズけんさ90【脳波検査】
臨床検査技師 錦戸 洋子
今回は脳波検査のお話です。
痙攣(けいれん)や意識消失発作などの症状がありてんかんを疑う時、また、意識障害を疑う時やその程度を知りたい時、脳炎・脳症を疑う時などに脳波検査を行います。身体の活動によって電位が発生し、それを機械に受け取ってグラフに表したのが、例えば心臓の活動を表したのが心電図、脳の活動を表したのが脳波です。
脳波は周波数によってαアルファ波、βベータ波、θスィータ波、δデルタ波と分けられます。図1は健常成人の安静覚醒閉眼時(しっかりと目を覚ましていて目を閉じているとき)の脳波でほぼα波が連続しています。図2の前半は目を閉じていて後半は目を開けています。図3は少しうとうとしてきました。図4は中くらいの眠りです。このように正常でも様々な現象で波形は変化します。年齢でも大きく違い、学童期頃まではθ波と呼ばれるゆっくりめの波が主体で成長と共にα波が増え15-20歳位で成人の脳波に近づきます。
脳波は年齢や患者様の状態を考慮して判読していきます。次回は実際の検査の様子と異常波についてお話します。
脳波の変化
上からベータ、アルファ、スィータ、デルタ波
無料低額診療事業から見えるもの
医療福祉相談室 ソーシャルワーカー
「医療費の相談で」
Aさん(60代男性)は専門治療を目的に当院へ転院してきました。転院から数日後、娘さんより医療費を分割で支払えないかと相談が入りました。お話を伺うと、生活保護の申請はしているが、申請日までの医療費を今後支給される生活保護費から少しずつ支払いたいと…。家族と相談し、無料低額診療事業の申請を提案しました。
Aさんは妻と精神疾患を抱える長男と3人で生活。下請けの工房の職人として、50年以上同じ自営の仕事で家計を支えてきましたが、今回の病気の発症により、仕事が出来ず収入が途絶えてしまいました。無料低額診療の適用を家族に伝えると、「支払わなければいけないと思っていましたが…ありがたいです。」と嬉しそうに話されました。
「この事業の大切さ」
無料低額診療事業は、次の制度活用や生活の構築までの間をつなぐ活用も大事だと、Aさんを通して改めて感じました。今後Aさん家族のように支払いに悩む多くの方々にも、無料低額診療事業について広く知らせて利用していただきたいと思います。
生活実態を聞く職員
東京勤医会内の看護介護活動交流集会
実行委員長 戸澤 亜矢
同法人内職員が看護・介護分野で一同に会し、活動の経験を交流
当日は96名が参加
3月15日土曜日、2013年度看護介護活動交流集会が東葛看護学校で開催されました。その日に向け、私たち実行委員会は昨年6月より月に1度の会議を持ち、準備を進めてきました。当初の予定であった2月8日は、大雪のため延期に。この日への変更となりました。急な日程変更にも関わらず、当日は96名の関係者が参加しました。
選りすぐりの25演題
今回も例年同様に東葛病院を中心とする東葛地域、代々木病院を中心とする千駄ヶ谷地域、みさと協立病院を中心とする三鄕地域による、それぞれのプレ看活研から選ばれた25演題(2演題は文書報告)が集まり、分科会は8演題ずつの3つの分科会に分かれて行いました。「患者参加型のとりくみ」「個別性を重視した基本的生活行動への応援」「安全・安楽をふまえた看護・介護実践」「患者さんやご家族の要求を引き出す信頼関係の構築」「健康権を守る看護・介護」など、まさに民医連看護・介護ならではの各職場での奮闘ぶりがうかがえる内容で、フロアからも活発な意見交換が行われました。
しなやかにたたかう情勢
25演題を3つの分科会で討論
特に親を失ったCちゃんに寄り添った、「グリーフケアはじめました~予後悲観を支える訪問看護師の役割とは」たんぽぽ訪問看護ステーション。「息子介護者への援助 終末期の母と未婚息子の愛を尊重して」わかくさ訪問看護など、患者・利用者・家族に寄り添った感動的な症例がいくつも報告されました。まとめの挨拶にたった大谷看護部長は「人間の可能性を通じて成長する看護・介護実践が交流された。厳しい医療情勢だが、今、私たちはしなやかにたたかう情勢」と話しました。
今回の活動交流集会での学びを糧に、引き続き民医連看護の「3つの視点」「4つの優点」を基本に「人間らしくその人らしく生きていくこと」を援助する看護をすすめたいと考えています。
いのちと人権の現場から
東葛病院居宅介護支援事業所所長 大平 てる子
あらためて人権を考える
このコラムへの投稿依頼に、深いお題だな~と思いつつも、いただいた機会ですので、人権について少し振り返ってみようと思います。
「日常生活で人権を考える」
私の住んでいる自治体は、平成17年頃より人権文化を確立しようと努力している街です。その重点施策の中に、「普段の生活の中で人権を考える」とあります。私は、この考えに賛成です。20年前から看護業務、今はケアマネである私ですが、人権を強く意識したのは、精神科病棟に着任した時のことです。
「尊厳を守る」
流山市議会で意見陳述する筆者
着任わずかで、興奮状態が治まらない20代の女性の方の担当となりました。点滴をしたまま病棟内をダッシュする…人やドアに体当たりしそうな勢いです。“ダメと言って抑制するのではなく、とことん見守り安全を確保する”ことを念頭に一緒に走る日々でした。当時私は36歳。体力的にはどうだったのでしょう…。私の存在などおかまいなしに見えましたが、治療がすすむうちに笑顔も垣間見え、いろいろ語ってくれるようになってきました。“あの時は大変だったけど、良かったな”と、言い様のない充実感を憶えました。「尊厳を守る」そんな場面が、意外と身近にあるのではないでしょうか。
東葛病院・付属診療所の医療活動(2014年2月分)
付属診療所1日平均外来患者数 | 728人 | ||
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東葛病院 | 1日平均救急・夜間外来患者数 | 62人 | |
1日平均入院患者数 | 288人 | ||
手術件数 | 123件 | ||
主な検査 | 血管造影 | 32件 | |
内視鏡 | 470件 | ||
CT | 749件 | ||
MRI | 282件 | ||
心電図 | 769件 | ||
腹部エコー | 377件 | ||
心エコー | 285件 | ||
救急患者数 | 1742件 | ||
内 救急車搬入件数 | 222件 |
掲載日:2014年4月1日/更新日:2024年10月25日