東葛の健康 No.348(2013年7月号)

東葛病院の医療【耳鼻咽喉科】
耳鼻咽喉科の守備範囲
〜歯を除く口の中も診察!〜頭頸部のしこりは早めの受診を

東葛病院・付属診療所の耳鼻咽喉科は、毎週火曜・木曜・金曜・土曜に診療を行っています。今号は、火曜日の診療を行っている酒主敦子医師にお話しを伺いました。

耳鼻咽喉科医師 酒主 敦子

あまり知られていない、耳鼻咽喉科の守備範囲

東葛病院付属診療所耳鼻咽喉科は、日本医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科より派遣された医師により、非常勤体制で外来診療のみ行っています。

「耳鼻咽喉科」とは言いますが、「みみ」「はな」「のど」に加え「歯以外の口の中」も守備範囲に含まれます。これら臓器の働きとして、聴く、身体のバランスを取る、匂いを嗅ぐ、味わう、口の中で触れる、息の通り道を担う、話す、飲み込む、があります。従って、人間の『五感』、すなわち視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のうち、視覚を除いて耳鼻咽喉科の守備範囲です。人間が人間らしく生きる上で、基本的かつ重要な機能を扱っています。これらだけではなく、人体の中で「耳下腺・顎下腺(唾液を作る臓器)」「甲状腺」に代表される、上は眉の高さから下は鎖骨までの間の、頸の骨やそれらに付着する筋肉を除いた領域(=頭頸部と総称)もまた受け持ちます。尚、当科は非常勤体制のため治療内容に限界があり、特に入院・手術を要する場合は日本医科大学付属病院・日本医科大学付属千葉北総病院で加療、もしくは近隣の病院へ依頼させて頂いております。以下、自分が所属する病院で担当している頭頸部腫瘍(耳鼻咽喉科領域の『できもの』)について記します。

頭頸部の『できもの』とは

頭頸部に発生する腫瘍は、良性、悪性含めて“頭頸部腫瘍”と呼ばれます。それらが発生する部位は、耳、鼻、口腔、喉頭、咽頭、唾液腺、甲状腺など様々で、耳鼻咽喉科で専門的な診察を受けないと分からないものがほとんどです。

発見のきっかけになり得る『頸のしこり』は、比較的自分で気づく事の多い症状で、原因は図の如く多岐に渡り、これらの鑑別は我々耳鼻咽喉科医師の役割の一つです。

しこりに気づいたら、早めに受診を

いきなり脅すようですが成人の場合、甲状腺以外の頭頸部腫瘍のうち60%超が悪性(≒がん)というデータがあります。決して恐がらせたいのではなく、しこりに気づいたら、無責任な情報に翻弄される事無く早めに耳鼻咽喉科を受診して欲しいという事です(これは、耳鼻咽喉科の病気に限らず、他の症状についても言える事だと思います)。中でも転移性腫瘍とはがんの転移であり、火事に例えるなら『飛び火』です。その場合、『火元』であるがんが頭頸部領域に存在することが大半である故、耳鼻咽喉科用内視鏡を用いての観察、すなわち耳鼻咽喉科医の出番になります。

『頭頸部がんにかからないように努める』事が大切であるのは言うまでもありません。頭頸部がんの多くは、喫煙、大量飲酒、口腔不衛生が関与しており、特に喉頭がんは肺がん以上に喫煙との因果関係が高いと言われています。禁煙し、適度な飲酒量を守ることは、頭頸部がんの予防に欠かせません。

頸部に発生する疾患

  • ①先天性疾患、リンパ節の炎症、顎下腺の炎症又は腫瘍、悪性リンパ腫、転移性腫瘍
  • ②先天性疾患、リンパ節の炎症、甲状腺疾患、悪性リンパ腫
  • ③悪性リンパ腫、転移性腫瘍
  • ④先天性疾患、リンパ節の炎症、耳下腺の炎症又は腫瘍、悪性リンパ腫、転移性腫瘍
  • ⑤先天性疾患、リンパ節の炎症、血管・神経由来の腫瘍、悪性リンパ腫、転移性腫瘍
  • ⑥リンパ節の炎症、血管・神経由来の腫瘍、悪性リンパ腫、転移性腫瘍

クスリあ・れ・こ・れ〈隔月掲載〉
旅行時に持参するお薬の注意〜旅にはお薬も忘れずに〜

薬剤師 比田井 かおり

この時期、行楽や帰省などで旅行される方も多いと思います。荷物の中に、お薬も入っていますか?
毎日飲んでいる薬はもちろん、痛み止め、風邪薬、胃腸薬、整腸剤などの常備薬も普段、使い慣れたものを持っていきましょう。
お薬手帳もあると良いでしょう。移動の際は、日当たりのよい場所や高温になる車の中などに長時間放置しないよう注意し、なるべく涼しいところで保管しましょう。

海外へ行かれる方もいらっしゃるでしょう。その場合は

  • ①薬は機内持ち込み荷物に入れましょう
    →預けたスーツケースが届かず、薬が手元にない!といった事態を防ぐためです。
  • ②薬の成分・病気の英語名を書いたものを用意しましょう
    →入国審査で何か聞かれた時に説明できます。
  • ③国によって薬の持ち込みに制限があるので事前に確認しましょう
    →一部の睡眠剤・安定剤・医療用麻薬などが対象です。
  • ④毎日飲んでいる薬は、旅行日数分+1週間くらいは持っていきましょう
    →飛行機の欠航・遅延などで予定通り帰れなくなった場合に備えるためです。

また、海外では時差があるので例えば朝食後といっても飲む時間がずれてしまいます。
服用間隔が大事な薬もあるので、飲み方について主治医と事前に相談しておきましょう。

体調に気をつけて、よい旅にしましょう!

シリーズけんさ82
下肢静脈エコー検査①

臨床検査技師 田中 志保

下肢(かし)静脈エコー検査についてお話します。

下肢とは股から足の指先までのことで、ここでは簡単に「足」といいます。(ちなみに上肢とは、肩から手の指先までのことです。)
下肢静脈エコー検査は、足の静脈を超音波(エコー)で観察する検査です。

血液は心臓から動脈を通って全身に送られ、静脈を通って再び心臓に戻ってきます。
通常血液は血管の中では固まりませんが、長時間同じ姿勢でいると足の静脈の中で固まり(血栓)を作ることがあります。
これが「深部静脈血栓症」で、足が腫れたり、赤くなったり、痛みが出たりします。
この血栓が心臓を通過して肺の動脈にまで流れて行き、そこを詰まらせてしまうと『肺血栓塞栓症』になります。
こうなると脈が速くなったり、呼吸が苦しくなったり、胸の痛みが出たり、意識を消失することもあります。「エコノミークラス症候群」という名前でご存知の方も多いと思います。

足の静脈の中に血栓ができていないかを調べるために、下肢静脈エコー検査は有効な検査の1つです。
静脈の太さや中を流れる血液の様子、ドロドロとしていないか、血栓はないかを観察します。
もし血栓ができていれば、その大きさ、古いのか、最近できたもの下肢(かし)静脈エコー検査についてお話します。
下肢とは股から足の指先までのことで、ここでは簡単に「足」といいます。(ちなみになのかを調べます。
超音波は痛みがなく被ばくの心配もないため、「エコノミークラス症候群」の予防や血栓の治療のために繰り返し検査が行なえます。

次回はもう少し具体的な内容をお話します。

熱中症にご注意を
こまめに水分栄養と睡眠も

救急外来 看護師 岡村 恵美

今年も猛烈な暑さが予想されています。そして、熱中症による犠牲者は年々増え続けています。

特に高齢者は喉の渇きを自覚しにくい為、脱水を起こしやすく、また、子ども(特に乳幼児)は体温調節機能が発達しておらず、熱中症になりやすいといわれています。肥満の人は軽い運動でもエネルギー消費が大きく、熱の発生が多く、脂肪が熱の放散を防ぎ体温を封じ込めてしまい、熱中症を起こしやすくなります。

熱中症の予防には、

「喉の渇きを感じなくても、こまめに水分を取る」
ただし、ビールなどのアルコール飲料はかえって体内の水分を外に出してしまうので水分補給としてはタブーです。また、飲み過ぎ、冷やし過ぎは下痢を起こして脱水の原因になるので注意が必要です。
「室内の温度を下げる」
節電はほどほどに、室温28℃以下を目安にしましょう。
「暑さに慣れさせる」
子どもは、日頃から外遊びを推奨し、注意しながら暑さに慣れさせます。日陰を利用し無理せず休息をとりましょう。
「しっかり栄養と睡眠」
「声を掛け合う」
水分補給、温度調整、体調など注意し合う事が大切です。体温が高い、めまい、大量の発汗、倦怠感などのある時は医療機関で受診しましょう。

東葛病院でも、例年同様、友の会の方々と協力して、熱中症予防のチラシ折り込み、宣伝カーでのアナウンス、会員宅訪問、地域の人々の相談会を継続し、さらなる啓蒙活動に力をいれていきたいと思います。

今年はネオンカラーや白の流行をカッコよくクールビズに取り入れるなどして、猛暑を乗切りましょう。

6/14在宅医療「往診医師から学ぶ」シンポジウム
「地域で住み続けられるための在宅医療」

「興味深くて楽しくて、そしてとっても真剣で。地域で暮らす患者さんを支える医療者のネットワークの広がりとやる気が、とても励みになりました」(参加者の感想から)

病院を「おだいじに」と送り出し、自宅に戻る患者さんを、安心して喜んで「お帰りなさい」とお迎えできる地域をつくりたい。そんな思いから命名された東葛病院「退院支援おだいじにチーム」が6月14日、2回目となる学習シンポジウムを東葛看学講堂で開催しました。東葛地域で「在宅医療」に携わり、この日仕事を終え集まった170人の参加者は、開業医の先生方や訪問看護師はもちろん、行政介護担当者やケアマネジャー、地域薬局の皆さんの顔も。

往診の現場から各先生の発言

流山で「認知症」を発症した患者さんが、長男に引き取られた横浜の地でその「家庭」を崩壊させていく。ショッキングな事例を紹介した大津医師は、(こんな悲惨ことをなくすためにも)「認知症患者の不安を理解し、この流山で方策を考えることが大事」と訴えます。
在宅医療を受ける患者さんは、「家で死にたいのではなく、家で死ぬまで精いっぱい生きたいのだ。それが私の往診の信念です」と戸倉医師は語ります。

思いを共有して

地域で住み続けられるための在宅医療
=認知症の理解について会場からの質問に丁寧に答える大津直之医師

このシンポジウムを企画した東葛病院濵砂一光医師は、「向小金クリニックの大津直之先生は、認知症の患者さんが住み慣れた家で生きるには、『地域でみていく』重要性を。すずき内科クリニックの伊藤保彦先生は、神経難病、がん緩和医療など多彩な患者さん方の往診の中で、思い、悩みを語って頂きました。当院付属診療所の戸倉直実先生は、往診を楽しく、生き生きとされている姿が目に浮かぶようでした。東葛歯科の野本昌良先生は、歯科往診の実際を丁寧に話しました。

熱い情熱をもった先生方のお話しと参加してくださった皆さんが東葛地域で責任をもって医療・介護を守っていこうとする覚悟に感動しました。
病院の中の一チームの呼びかけに応え、参加して頂いた地域の医療・介護従事者の多くの方々に感謝。地域の健康を地域でどう守るか、その思いは皆同じと終了した後も興奮冷めやらぬ私です。

病院からまちづくりに向けて、また一歩踏み出せたかも。さあ、次は何をしましょうか」と語ってくれました。

東葛病院・付属診療所の医療活動(2013年5月分)
付属診療所1日平均外来患者数 858人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 61人
1日平均入院患者数 298人
手術件数 98件
主な検査 血管造影 26件
内視鏡 433件
CT 887件
MRI 308件
心電図 985件
腹部エコー 356件
心エコー 308件
救急患者数 1892件
内 救急車搬入件数 218件

掲載日:2013年7月1日/更新日:2024年10月25日

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