東葛の健康 No.345(2013年4月号)

東葛病院の医療【麻酔科】
ボツリヌス療法始めました
筋肉の緊張・つっぱりを和らげ 日常生活動作やリハビリに効果

この度、東葛病院でボトックス注射(ボツリヌス療法)を始めました。麻酔科の北村治郎医師に、語っていただきました。

東葛病院 麻酔科・医師 北村 治郎

ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出す天然のタンパク質(ボツリヌストキシン)を注射する治療法です。
このボツリヌストキシンは強い毒素で、「地球上最強の毒素」とも称されています。1gで100万人近くを致死させる力を持っていて、“生物兵器として開発されそうになった”という恐ろしい歴史を持っています。

けれども不思議なことに上手に使うことで、その猛毒の作用が薬となります。そして、痙縮(筋肉のつっぱり)や多汗症などの治療の際に使用すると、今までの飲み薬や他の注射などより、ずっと副作用が少なく、有効性が高い事がわかってきました。

テレビで脳卒中後の痙縮治療で紹介
ボツリヌス菌の大きさは0.5~2.0μ×2.0~10.0μm 毒素1gで100万人の致死量

ボツリヌス菌の大きさは0.5~2.0μ×2.0~10.0μm 毒素1gで100万人の致死量

昨年、テレビで脳卒中後の痙縮治療にこの治療法が紹介され話題となりました。
脳卒中による腕や脚の麻痺は、発症直後のリハビリでどんどん改善していきますが、時間が経過するにつれて、改善しにくくなります。そこを改善させるのがこの薬…。

痙縮している手足にこの注射をします。すると、手足の筋肉がやわらかくなり動かしやすくなります。
そのため、日常生活動作やリハビリが行いやすくなったり、関節が固まって動きにくくなったり変形したりするのを防いだり、痛みをやわらげる効果が期待できます。

薬の効果は3~4カ月
外来で治療する北村医師(写真右)

外来で治療する北村医師(写真右)

ただし、これらの効果はリハビリを継続的に行うことで期待できる効果であり、注射をしただけでは得ることができません。
また、介護の際に清潔を保つために治療を行うこともあります。薬の効果は3~4カ月と言われており、効果が弱くなった場合は再度注射が必要です。

なお、ボツリヌスは、美容外科などでもしわ取りなどの治療で使われていますが、当科では、美容的な治療は行っていません。
治療は、第1・3月曜日午後の麻酔科外来にて完全予約制で行っております。外来治療ですので入院の必要はありません。外来に来て頂いて、つっぱっている筋肉に数か所注射をするだけです。10分程度で終わります。受診を希望される方は主治医にご相談下さい。

リハビリの継続が大切
人工の毒ではダイオキシンが最も強いが、天然の毒・ボツリヌス菌はさらに強い毒性を持っています

人工の毒ではダイオキシンが最も強いが、天然の毒・ボツリヌス菌はさらに強い毒性を持っています

治療を受ける際には、先にご説明したように、リハビリの継続が大切です。現在リハビリ(通所リハ、デイケアなどを含む)を行っていない方は、受診の際にご相談下さい。

初診時は、治療のご説明と治療計画を立て、注射は次回の診察の時に行いますので、ご了承下さい。
この薬は値段が高いのが一番の問題です。1回の治療費は、3割負担で上肢の治療の場合約74,500円と高額になります。
ただ、助成が受けられる場合がありますので、東葛病院付属診療所の受付にご相談下さい。
また、ボツリヌス療法による原発性腋窩多汗症の治療が、保険適応になりました。こちらについても、治療を開始する予定です。お気軽にご相談下さい。

歯科コーナー「知っていました?」〈隔月掲載〉
唾液の重要な役割~活発な唾液分泌で健康促進~

東葛歯科 歯科衛生士 梅澤 かおり

今回は、唾液のお話です。患者さんの中には、お口の中が渇いて困って歯科に来院される方がいらっしゃいます。お口の中が渇くということは、唾液の分泌が減っているということですが、原因の大半は持病のため服用している薬の副作用のようです。唾液の分泌が減ってしまうといろいろと困ったことが起こります。何故なら唾液はお口の中でいろいろな重要な働きをしているからです。

唾液の働きのひとつは、お口のなかを洗い流してくれる自浄作用です。お口のなかの細菌のバランスを上手く保つ役割をしています。また、酸によって脱灰(溶けるイメージ)に傾いた歯を再石灰化(補修するイメージ)してくれるのも唾液の力です。

次に、食べ物を噛み砕き飲み込むためには唾液の力が必要です。また、口の中の潤滑油の役割も大切です。唾液が減ると味覚異常や粘膜異常も起こりやすく、入れ歯が痛くて入れられなくなるなど影響は様々です。

では、唾液の分泌を促すために、簡単な方法としては、食事は良く噛む・こまめな歯磨きがあります。これは適度な刺激を与えるという意味で有効です。また、ノンシュガーのガム(キシリトールガムなど)を噛むというのも良いでしょう。昆布茶の飲用もよいでしょう。中に含まれるうまみに唾液分泌促進効果があります。その他、舌のエクササイズ(舌を唇と歯茎の間にいれて左右上下ぐるりと一周まわす)、唾液腺のマッサージ(頬の上から上奥歯のあたりを軽く押してみる)などがあります。
一日に大体1ℓ分泌されると言われています。これを機会に時々、唾液の働きを思い出してみて下さい。

シリーズけんさ79
エコー検査②

臨床検査技師 中城 栄治

今回は実際にどのようにエコー検査を行うか説明します。まず、検査を受ける方が間違いないか本人確認のため、名前や生年月日を言って頂きます。検査依頼伝票と一致したら、仰向けでお腹を出して頂きます。

エコー検査の超音波は空気の中を上手く進めないので、機械とお腹の間の空気を遮断するため、お腹にゼリーを塗ります。検査が始まったら『大きく息を吸って』、指示を出し『息を止めて』もらいます。その時は指示に従って、可能な限り息を止めてこらえます。動きを止めないと、ピントがずれた写真になってしまいます。呼吸をしていると呼吸変動により内臓は常に上下に動いていますので『息を止めて!』の指示で写真を撮ります。呼吸が苦しくなったら、指示がなくても楽な呼吸に戻して下さい。

中には仰向けのままだと見えない臓器もあります。その場合は『あちらを向いて横になって下さい』とか『体を起こしてお腹を突き出して下さい』など、細かい指示を出すときがあります。そうすると内臓は位置を変え、見えなかった臓器も見える様になります。
検査時間は検査依頼の内容によっても異なりますが、大体15分から30分くらいですので、ご協力をお願い致します。

チームで取り組む 東葛の医療 「退院支援おだいじに」チーム
安心して在宅で過すために

地域医療連携室 五十嵐 きよみ

東葛病院「退院支援おだいじに」チームは医師、看護師、ケースワーカー、理学療法士、事務、地域連携室の退院調整看護師のメンバーで構成され、患者さん一人ひとり様々なケースに対応し「この患者さんにどういう支援が必要か」など、患者さんの退院相談、各病棟へのアドバイス、地域との連携企画など行っています。

今日は地域との連携企画を紹介します。1月28日、訪問看護学習交流集会を行いました。テーマは「患者さんが安心して在宅での療養生活を過ごすためには~訪問看護の活用の実際、効果を学び、入院中の患者さん、在宅で過ごす患者さんに活かす」です。集会には地域ケアマネ、訪問看護ステーション、地域包括支援センター、東葛病院、付属診療所の医師、看護師、ケアマネ、理学、作業療法士、ケースワーカー、事務の62名が参加しました。

まず、同法人の訪問看護と流山市の訪問看護から、①地域や病院の医療の状況②訪問看護の内容③訪問看護を利用するには何が必要か④事例を通じて訪問看護の効果について講義しました。グループワークでは、各グループに訪問看護ステーション職員が入り質問などに応えました。交流では、医療と介護を一体でとらえ支援していくことの重要性や、病院、地域ケアマネ、訪問看護、医師との連携の強化、訪問看護の現場から見た地域の要望、現状など活発な議論が交わされました。

患者さんは病院での治療後、病気や障害を抱えながらも、生活の場へ退院されていきます。その時必要となるのが、生活の場の中での医療、介護です。今回、地域のケアマネと訪問看護で有意義な交流が出来ました。今後も「患者さんを中心に患者さんを支える人と人との繋がり」創りを地域ですすめて行きたいと思います。

4月から新卒医師の研修開始
東葛地域に医師を増やす取組み

診療部事務局 武井 和希

東葛病院は、2016年の新病院開設に向けて、医師確保の取り組みを重視しています。現役の医師に加え、主に医学生を対象に取り組んでいます。
医師の確保は東葛地域だけの問題ではありません。日本の医師数はOECD加盟国の中で、下位から2番目です。さらに、千葉県は日本の中で下位から2番目で、東葛地域で働く医師が増えることは千葉県内の医師を増やすことに繋がります。

東葛病院は医師増員の運動にも積極的に関わっています。取り組みは様々ですが、医学生の「よい医師になりたい」気持ちと、地域の「よい病院であって欲しい」願いを通い合わせることで、東葛地域で働く医師が増えていきます。地域の声を届けることが何よりも大切です。

私たちは様々な病院説明会に参加して、医学生が実習・見学に来てくれるよう呼びかけ、来た方には、医師や職員から「一緒にこの病院で働こう」と呼びかけます。時に患者さんから「私たちのお医者さんになって下さい」と声が掛ることもあります。これが一番響くものだったりするのです。医学生を見かけたら、遠慮せずに声をかけて下さい。

医学は日々、発展し、東葛病院でも最新の医療を地域に提供していくために努力をしています。よりよい医療活動を展開するためには多くの仲間が必要です。次世代を担う若手医師の確保と育成は必須の課題です。東葛病院で働く医師を増やすため、これからも地域のみなさんと一緒に取り組んでいきたいと思います。

東葛病院・付属診療所の医療活動(2013年2月分)
付属診療所1日平均外来患者数 827人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 55人
1日平均入院患者数 304人
手術件数 104件
主な検査 血管造影 26件
内視鏡 434件
CT 759件
MRI 234件
心電図 956件
腹部エコー 370件
心エコー 268件
救急患者数 1533件
内 救急車搬入件数 211件

掲載日:2013年4月1日/更新日:2024年10月25日

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