東葛の健康 No.341(2012年12月号)
- 東葛病院の医療【医師研修】
- ドイツ環境運動視察<土谷医師>
- 介護の現場から
- クスリ あ・れ・こ・れ<隔月掲載>
- シリーズけんさ76 経皮的血中酸素飽和度検査
- 流山市へ予算要望
- 東葛病院・付属診療所の医療活動(2012年10月分)
東葛病院の医療 【医師研修】
~「研修医を育てる取組み」研修機能で高い評価~
来春6人の研修医受け入れ
来年春研修医が6人やってくる
来年春医学部を卒業する新卒医師6人が、4月から東葛病院で研修を開始することが決まりました。
卒業した新卒医師は2年間の初期研修をどこの病院でするかを自分で選択します。そこでは、医師として人の健康といのちを助けるための基本的な知識、技術を幅広く学びます。また、患者さんと向かい合う態度や心構えについても学びます。
初期研修が終わった後、内科や外科など分野を選んで専門研修を始め、10年位でようやく一人前の医師に育っていきます。「三つ子の魂百まで」といいますが、どの分野の医師になるにしても、初期研修の2年間でどのような医師として育っていくかが決まります。
研修指定病院の東葛病院 ~医師を育て国民の命を守る~
千葉県で初めて
研修病院は全国に約1000カ所、千葉県に36カ所ある中で、6人の研修医が東葛病院を選んでくれたのには理由があります。
東葛病院では研修医を育てるために、研修委員会を設置して取り組んでいます。早朝の勉強会、夕方の検討会や教育講義などが行われています。
研修は経験することが一番大切です。そのため研修医が患者さんの診療に当たることもありますが、心配は要りません。指導医が診療内容や手技について逐一厳しくチェックして、一緒に行う仕組みになっています。
それらの取り組みが認められて、東葛病院は県内で初めて臨床研修評価機構の認証を受けた病院となりました。
地域医療で子どもから高齢者まで
東葛病院が研修に向いている理由の一つは、地域医療に取り組んでいることです。
日本の医師にとって必要な力は何でしょうか?日本の5大疾患といわれる癌、心臓病、糖尿病、脳卒中、うつ病。これらは多いだけでなく、どんな病気を専門にしていても必ず診なければならないものです。
また、救急医療、一刻を争う患者を前にして頭と手を使っててきぱきと治療できなければなりません。家庭での健康を支える診療所や往診。小児科や産科、リハビリがあることで子どもから高齢者まで診ることができる医師になります。
こうした地域の中で取り組んでいる東葛病院の総合的な医療が、研修医にとって必要な研修の場となっているのです。
地域と患者さん、開業医の先生
もう一つ忘れてはならない魅力は、患者さんや地域の人々が支えている病院であることです。患者の立場に立つ医師であるためには、患者さんの気持ちや願いを知らなくてはなりません。
東葛病院は患者さんの権利を守り、人間の尊厳を守ることを理念にしています。さらに東葛健康友の会など、患者さんの生の声がきちんと医師に伝わる病院であることが、医師を育てているのです。
また、開業医の先生方からのアドバイスも重要です。医療連携は地域医療を担う医師として育つために、なくてはならない必要条件になっています。
新しい力で地域医療の発展を
来春入職予定の6人の新卒医師を育てるためにも、みなさんにご協力していただき、病院医療、地域医療を充実・発展させていきましょう。そして新病院建設へのご支援をよろしくお願いします。
毎週火曜日夕方に行う研修医のケースカンファレンス
土谷医師が見たドイツでの環境運動
政治的解決で未来切り開く
ドイツでは60年代から反原発の環境運動は小規模ながら存在しましたが、1000kmも離れたチェルノブイリ事故の汚染によって、乳幼児死亡率が上昇し、奇形児や遺伝子異常が著しく増加したことなどがきっかけになって、その規模が飛躍的に拡大しました。
しかし、毎週のように開かれる10万人規模のデモでは、原発を廃止させることはできませんでした。それでも、ドイツの環境活動家たちはめげず、環境政党を応援し、地域活動を広げました。
シェーナウ村の人々は、原発を推進する電力会社に資本を回さないために、自分たちで配電会社を起業し、村と電力の独占契約を結びました。2500人の村で起こった電力「革命」は、原発を推進する大企業を退ける手段となりました。
屋根はソーラーパネルが当たり前のドイツ
エネルギー消費を減らし、ソーラー発電やバイオマス発電といった再生可能エネルギーによる発電量を増やし、コジェネレーションシステムによってエネルギー効率を上げ、人間とエネルギー資源との関係性を新たに構築していきました。
日本とは、社会のあり方も発送電の制度も異なりますが、その目指したもの、その行動力は見習うべきものがありました。
危機に瀕しているからこそ見えてくる、豊かな未来の姿。市民運動は、そういうものをつくっていく力であることを感じることができました。
衆議院選挙、東京都知事選など、様々な選挙が予定されていますが、脱原発も環境問題もエネルギー問題も、どれも政治的解決によって未来が切り開かれていきます。関心を持って、世の中を見ていきたいと思います。
介護の現場から
看護師 鈴木 千重
一日の訪問記録を点検する松尾芳所長
野田南部訪問看護ステーションそよかぜは、野田南部地域、千葉県のシンボルマーク「ちーばくん」の鼻の辺りにある野田市内のステーションです。
同敷地内には、居宅支援事業所、南部診療所、南部歯科があり、そよかぜから徒歩2分の位置にひばり薬局もあり、何か質問したいことなど、すぐに相談ができる心強い環境にあります。
近年は、高齢化社会に拍車がかかり、在宅医療、訪問看護の需要が高くなってきました。
在宅療養する方、療養する方を支える家族にとって医療、看護だけではなく訪問入浴、デーサービス事業所、訪問ヘルパー事業所は、とても強い味方になります。
そよかぜは、近隣の病院からガンの終末期の方から難病、慢性疾患の方々までサービスをさせていただいています。訪問看護と一口に言っても他人が自宅に入るわけです。どんなことをするの?と不安になることも多い様です。
そんな時はいつでも聞いて下さい。不安がなくなるまで説明させて頂きます。
そよかぜは、他の事業所とも連携し不安を少しでもやわらげることができたらと思います。
野田南部訪問看護ステーションそよかぜのスタッフ
写真一番左が筆者・鈴木千重看護師
クスリ あ・れ・こ・れ 「マイコプラズマ肺炎について」<隔月掲載>
咳エチケットと手洗いを必ず
薬剤師 斎田 幸司
「マイコプラズマ肺炎が流行しています」。マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。子どもの感染が多く、約80%は14歳以下の患者です。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられ、冬にやや増加する傾向があります。
感染経路は患者の咳のしぶきを吸い込んだり、患者と身近で接触したりすることにより感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染の伝播がみられます。感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2~3週間くらいとされています。
患者の咳から感染しますので、咳の症状がある場合には、マスクを着用するなど咳エチケットを守って下さい。きちんと手洗いをすることも大切です。
症状は発熱や全身倦怠感(だるさ)、頭痛、痰を伴わない咳などがみられます。咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴です。
治療方法はマクロライド系の抗生物質(エリスロシン、クラシスロマイシン、ジスロマックなど)によって治療しますが、近年これらの抗生物質の効かない「耐性菌」が増えてきているので、ミノマイシンなど他の抗生物質で治療します。
軽症ですむ人が多いですが、重症化した場合には入院して専門的な治療が行われます。
シリーズけんさ76
経皮的血中酸素飽和度検査
臨床検査技師 初見愛可
今回は経皮的血中酸素飽和度(SpO2)についてのお話です。
私たちが生命を維持するためには酸素が必要です。肺から取り込まれた酸素は、血液中の赤血球の中にあるヘモグロビンと結合して動脈血として全身に運ばれます。経皮的血中酸素飽和度(SpO2)はパルスオキシメーター(写真)という機械を使って測定します。
パルスオキシメーターは体に害のない赤い2種類の光を利用して、血液中のヘモグロビンのうち酸素と結びついているヘモグロビンの割合をパーセント(%)で表示します。これを血中酸素飽和度(SpO2)といいます。
では、血中酸素飽和度を測ることで、何がわかるのでしょうか?
酸素飽和度は体に輸送される酸素量の指標の一つで、体に充分な酸素を供給できているのかという指標となります。健常者のSpO2は、概ね95~99%の範囲です。
血中酸素飽和度を図るパルスオキシメーター
パルスオキシメーターは患者さんへの負担がなく、機械を取り付けてすぐに測定ができることから、患者さんの今の状態や睡眠時無呼吸症候群の簡易的な検査など様々な目的で利用されています。
またスポーツの分野でも高所トレーニングや低酸素室トレーニングなどでパルスオキシメーターが使われ、酸素飽和度の測定がされています。
次回は、さらに疾患のことも交えて説明します。
流山市へ予算要望
東葛病院と東葛健康友の会で
東葛病院と東葛健康友の会は、流山市2013年度予算編成への予算要望を11月16日に提出しました。
自治体への予算要望は、「救急医療への補助を増やして、介護施設や保育所を増やして」など、医療・介護、地域でしてほしいことを要望することです。
予算要望の学習と職場への聞き取り
今年7月に自治体要望を長年取り組んでいる他法人や当法人の取り組みの意義を確認しました。学習会に続き、全職員と友の会幹事を対象にアンケートをとりくみ、8月までに職場・友の会から約60人の要望が集まりました。
さらに35職場の職責者から患者や利用者が困っている困難事例や要望を聞きとって要求項目を補い、9月には流山市政の流れと医療・介護の現状について理解を深めました。
患者・利用者の視点と医療・介護従事者、生活者の視点で
要望書は、流山市への要望の他、千葉県と国への要望を流山市から要望をあげてほしいとまとめています。
また要望書は、流山市が健康で安心して暮らせる街として発展するために、医療・介護の現場から患者・利用者の視点と、流山市で働く医療・介護従事者、生活者の視点で要望をまとめました。
現場での困難事例 医師・看護師不足など
具体的な内容では、流山市のオムツ支給の対象年齢枠の拡大や65歳未満の市の入浴サービス枠の拡大。医師・看護師不足に対して医師や看護師の奨学金創設などを積極的に提案しています。
12月に流山市と直接懇談予定
流山市からは文書で回答をもらい、分野毎に市職員との懇談を申し入れました。
担当の秘書広報課からは「関係各部署に要望書を下ろしました。12月の流山市議会が終わってから、回答と各部署との懇談を設定します」との返答がありました。
東葛病院・付属診療所の医療活動(2012年10月分)
付属診療所1日平均外来患者数 | 885人 | ||
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東葛病院 | 1日平均救急・夜間外来患者数 | 45人 | |
1日平均入院患者数 | 301人 | ||
手術件数 | 91件 | ||
主な検査 | 血管造影 | 28件 | |
内視鏡 | 546件 | ||
CT | 873件 | ||
MRI | 276件 | ||
心電図 | 1015件 | ||
腹部エコー | 474件 | ||
心エコー | 339件 | ||
救急患者数 | 1386件 | ||
内 救急車搬入件数 | 206件 |
掲載日:2012年12月1日/更新日:2024年10月25日