東葛の健康 No.338(2012年9月号)

東葛病院の医療【HCU病棟】
~救急救命の医療最前線~
断らない救急医療支え重症者の救命を担う
東葛病院3階病棟では以前から、循環器疾患及び重症患者の治療を担当してきました。2012年1月からはさらにスタッフの体制を強化し、より重篤な患者に対しても集中的な治療が行えるよう新たにHCUとして始動しています。病棟医長の吉田医師に語っていただきました。(編集部)
内科医師 吉田宏志

内科医師 吉田宏志

心肺停止から蘇生まで

8月号で紹介したとおり、東葛病院の救急外来では、年間約80例近くの心肺停止患者が運ばれます。今年1月から6月の半年間では、13例の心肺停止蘇生後の患者が、HCUに入院しました。

中には低体温療法と言って脳保護のため体温を34度程度まで冷却し、ほぼ後遺症なく歩いて退院された患者さんもいました。

心肺停止にまで至らなくてもショック状態になったり、意識障害、高度徐脈などいずれも重篤な状態でHCUに入院されます。入院病名としては、重症肺炎、心不全をはじめ、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、劇症肝炎、敗血症など様々です。

緊急の治療にあたる吉田医師と看護師スタッフ

緊急の治療にあたる吉田医師と看護師スタッフ

多くの方が人工呼吸器を装着し、動脈圧ラインやカテーテル留置を行い、数種類から多い人では10種類以上の点滴や注射を行って集中治療にあたります。

心臓の動きが極めて悪い場合に行う経皮的心肺補助法(人工心肺)や大動脈の中に縦長の風船を入れて心拍を補助する大動脈内バルーンパンピング(IABP)、心筋梗塞などの急性冠症候群に対する緊急心臓カテーテル治療、尿が出ない場合に行う緊急人工透析、不整脈や除脈に対して行う一時的人工ペースメーカーなど様々な治療を行うことがあります。

容態悪化時や術後の経過観察も

救急外来からだけではなく、入院中に容態が悪化して一般病棟では対応が困難となった場合や、術後厳重な経過観察が必要とされる場合などもHCUで対応しています。残念ながら救命できない場合もありますが、多くの方は快方に向かい一般病床へ転棟されていきます。

緊急入院された患者さんの容態について説明し、治療方針を指示する担当医師

緊急入院された患者さんの容態について説明し、
治療方針を指示する担当医師

HCUへの入室には基準を設けているため患者さん本人や家族の希望だけで利用することはできません。また面会も時間、人数など制限させていただいており、緊急対応中にはは長時間面会をお待たせする場合もあります。

医学的にHCUを必要とする患者さんを速やかに最大限受け入れ、救命及び病状の改善を目標として、多くの方のご協力をいただきながら日々奮闘を続けています。

歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>
東葛歯科 歯科医師 山口賢治

東葛歯科 歯科医師
山口賢治

骨粗鬆症治療と歯科について
~ビスフォスフォネート(BP)製剤治療と顎骨壊死~

骨粗鬆症の治療で用いられるビスフォスフォネート製剤(以下BP製剤と略)と口腔内との関わりについて簡単にお話します。

BP製剤を投与されると分かり易く言えば、骨が固くなる代わりに骨内の血液循環(代謝)は悪くなります。この結果として感染に対する防御能力が低下します。こういう状態のところへ抜歯などの外科的侵襲が加えられたり、あるいは重度の歯周炎に罹るなどによって、顎骨壊死(あごの骨が壊れて死んでしまうこと)が発生することがあります。発生する頻度は非常にまれですが、その治療は非常に困難です。

注意すべきこと

歯科治療において抜歯等の外科的処置が必要になった場合、投与期間が3年未満でリスクファクター(危険因子)が存在しない場合は休薬の必要はありませんが、投与期間が3年以上、あるいは3年未満でもリスクファクターが存在する場合は、3ヶ月程度休薬した後に処置を行うのが望ましいとされています。このリスクファクターとしては糖尿病、肥満、喫煙、口腔衛生状態の不良などがあります。

あまり無用な心配をする必要はありませんが、BP製剤の投与を受けることが決まったならば、事前に口の中の状態をチェックしてもらい、必要な治療を済ませておいた方がいいでしょう。それと共にトラブルを回避する上でも、口腔内を清潔に保つ事に、意識を高めてもらう事が望ましいといえます。またすでに投与を受けている方は歯科受診の際、担当医にその旨を伝えるようにしてください。

シリーズ けんさ 73
血圧測定

臨床検査技師 室伏延江

今回は、血圧測定についての話です。

まず、病院などにあるデジタル血圧計。正確な血圧を測定するためには、腕を十分にさし込みます。2~3回測り、平均を出すのが通常です。

血圧は一日のうちでも変わりやすく、測定した一回の値が高くても、すぐに高血圧とは言えません。1日の血圧の状態を知るためには、家庭での血圧測定をお勧めします。

家庭ではできるだけ毎日、朝晩決まった時間に測りましょう。朝は起きてから一時間以内にトイレを済ませ、朝食や薬を飲む前に測り、夜は就寝前に測ると良いでしょう。

また、24時間血圧測定検査というものもあります。これは、携帯式血圧計を1日中装着し、15~30分間隔で自動測定していきます。

1日の血圧を知ることで、緊張のため医療機関でのみ血圧が高くなる白衣高血圧や、診察室では正常・日常生活で高血圧になる仮面高血圧を発見することができます。仮面高血圧は、命にかかわり治療が必要な発見されにくい高血圧です。

高血圧の話ばかりしてきましたが、血圧が低ければ良いというものでもありません。重要なもので起立性低血圧という病気があります。横になっている時に比べ、体を起こした時に血圧が大きく下がるもので、様々な病気が誘因となり、めまいや立ちくらみを起こします。極まれに、脳の病気が原因で起きることもあります。

低血圧を疑うときは、血圧が上がる条件(運動後や食事直後、緊張など)を取り除き、横になり、落ち着いてから測定します。お持ちの測定器や、公共機関に設置してあるものなど、測定ができる条件があるときには、血圧を測定し、自分の血圧の変化を知ることが大切なのです。

訪問診療の現場から
わかば薬局 薬剤師 梅本絵理

わかば薬局 薬剤師 梅本絵理

在宅医療と薬剤師

調剤薬局の薬剤師も在宅医療に関わっていることをご存知でしょうか。通院が困難で、薬の飲み方や保管方法などに支援が必要な方には、医師の指示により薬剤師が患者さん宅へ薬を届けて服薬指導を行なっています。往診を受けている独居の方、ガン末期の方、高齢者のみのお宅などへ訪問しています。

訪問時、まずは患者さんが指示通りに服用できているか確認するため、残りの薬を数えて整理します。在宅患者さんには複数の薬が処方されており、飲み残しも多くなりがちです。

個々の患者さんに合わせて薬を一包化(一回飲むごとにまとめる)したり、お薬カレンダー(一包化した薬を曜日ごとに朝・昼・夕・寝る前と収納でき、残った薬を一目で確認できる)を利用したりすることで飲み残しを減らすことができます。

うまく飲み込みができない方には、粉薬など適した剤形で処方されているか調剤時にチェックしています。患者さんやご家族から薬を飲んでの体調変化や食事・排泄・睡眠などについて聞き取ることも欠かせません。

最近では薬剤師も訪問時に血圧計・体温計を携行してバイタル測定を行なうことで、服用薬の効果や副作用を確認しています。また、室温・湿度を測って熱中症にならないようにアドバイスしています。

訪問して行なったことや把握した情報は、報告書の形で医師やケアマネージャーに連絡し、薬の管理については必要に応じて訪問看護ステーションに電話連絡することもあります。

薬局薬剤師も薬局内のみならず、地域の「往診の現場」に出て行き、他の医療・介護スタッフと連携して活動しています。

原水爆禁止世界大会2012in広島 ~核廃絶 脱原発 会場一つに~

全体会と分散会について、代表して3人から報告をしてもらいました。

全体会に参加して

研修医 西岡大輔

原水爆禁止世界大会2012が広島で開催され、8月4日に開会総会、6日に閉会総会が行われました。開会総会には6800人、閉会総会には7200人もの参加者が集い、会場は活気にあふれていました。各国の代表者や日本被団協代表、広島市長など多数の来賓が訪れました。
日本の各都道府県代表団からの福島原発問題、原発再稼働反対、オスプレイ配備反対などの訴えに会場は、大きな拍手で賛同の意志を示しました。
来賓あいさつの中で印象的だったのは、日本被団協代表委員の坪井直さんのお話でした。坪井さんは現在87歳。
「20歳のときに被爆し、助けを呼ぶ子どもたちに何も手を差し伸べられなかった。その時の想いは強く今でも残っており、だからこそ、生ある限り核廃絶のために力を尽くす」という決意に会場全体は拍手が湧き上がりました。
参加者全体が核廃絶、脱原発に対してひとつになった、そのような一体感を感じさせる全体会でした。

分科会「被爆の実相普及 原爆展・被爆体験の継承」に参加して

保健師 山本浩毅

広島で被爆された方は、「一瞬にして家が崩れ、体には100ヵ所以上もガラス片が刺さった。周りには大勢の火傷を負った人や遺体があったが、怖い・気の毒という気持ちも失ってしまっていた」と悲惨な状況を語りました。
ヒバクシャの方々の願いは、2度とヒバクシャをつくらないことだという。その願いが少しでも早く実現できるように共に行動したいと感じました。

分科会「青年のひろば―学習・交流と被爆者訪問」に参加して

医療・福祉相談室 竹村陽子

各班10名程度の40班ほどに分かれ、2~3班で行動し、被爆者の方が待つ会場に移動して話を聞きました。
私の班は、2班で2人の被爆者の方の話を聞き、その後班毎に1人と昼食を一緒にとりながら懇談しました。
班で感想や意見交換をしたのち、会場に戻り、全体で班や個人での1分間スピーチを通して、思いを共有しました。

代表団の8名 広島、原爆ドーム前にて

代表団の8名 広島、原爆ドーム前にて

東葛病院・付属診療所の医療活動(2012年7月分)
付属診療所1日平均外来患者数 833人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 52人
1日平均入院患者数 295人
手術件数 111件
主な検査 血管造影 24件
内視鏡 442件
CT 884件
MRI 317件
心電図 849件
腹部エコー 384件
心エコー 271件
救急患者数 1619件
内 救急車搬入件数 212件





無題ドキュメント



掲載日:2012年9月1日/更新日:2024年10月25日

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