東葛の健康 No.378(2016年1月号)

「新東葛病院」の医療活動
安心・安全の医療、差別のない納得の医療をすすめます

2016年5月いよいよ新東葛病院の新たな門出です。本号では年頭にあたり、下正宗東葛病院院長に新病院の活動の展望・人材の獲得と人づくり・医師専門医制度の問題・国際HPHネットワークなど、新病院の医療活動に欠かすことはできない課題を話してもらいます。聞き手は宇留野良太東葛病院事務長です。

新病院の活動展望
司会(事務長) 宇留野 良太

司会(事務長)
宇留野 良太

司会あけましておめでとうございます。いよいよ、今年は新病院での医療活動が始まります。
昨年を振り返り、今年の活動の展望を語っていただきたいと思います。

院長あけましておめでとうございます。2015年は、日常の医療活動を継続しながら、新病院建設の準備を進めてきた年でした。建設委員会は月一回でしたが、さまざまな調整を行う事務局会議は毎週のように開催し、専従体制も強化してきました。また、法人の事業として、法人の他病院からも委員として出席していただきました。
建物の方の建設業者さんの努力もあり、ほとんど遅れなく進んできました。建物の形が見えてくると、図面のイメージと違って、実際に医療活動を想像しながら点検できるようになりました。現在は、何回かの現地見学を実施しながら、微調整の作業に入っています。

医友の会事務局長 加賀谷 昭

東葛病院
下 正宗 院長

また、「ここで何する検討集会」も開催し、各部門の新病院での活動内容の紹介を行ってきました。現在は、より精度の高い計画を策定しています。
さらに、当初、さまざまな制限により移転は困難と考えられていた診療所機能も、新病院に隣接した場所に開設できるようになり、新しい医療構想の練り直しを内科を中心に行っています。同時に、現付属診療所施設の活用方法も議論しています。
20回を超える地域訪問活動にも全職員をあげて取り組んでおり、地域のさまざまな皆さんの励ましの声をいただいて、今回の事業の重要性を改めて感じているところです。

司会医療は、機械化が進んだとはいえ、マンパワーが重要な分野と考えますが、人材獲得に向けてはどのような取り組みをされていますか?

病院づくり人づくり

院長医師では、法人合同以降、臨床研修病院を取得し、新卒医師の研修を充実させ、その中でスタッフドクターを育てていく、民医連の医師養成の中では、本道といわれる活動を進めるとともに、医療規模の拡大に伴い、私たちの医療活動に理解のあるベテラン医師の協力も得ながら、医療内容の充実を図っていきたいと考えています。前者の部分では、「奨学生を増やす大運動」を提起して、院長を先頭に、医師を目指す高校生や医学生の実習や面談を充実させ、大きな成果をあげてきました。この活動は、全日本民医連にも評価され、全国の取り組みに広がってきています。
新病院で研修を開始する医師は現在は3名です。一緒に病院づくりをしながら学び成長していきたいと考えています。

また、後者では、法人をあげて、つながりのある医師へ医療構想を伝え、一緒に医療活動をしていただけないかという対話活動を進めています。
看護師分野では、東葛看護専門学校の卒業生を中心に多くの仲間が生まれる条件ができていますが、医療活動の規模に比してまだまだ足りない状況にあります。さまざまな紹介運動のほかに、ホームページの充実のほかに、東葛病院の医療活動をよく理解していただいている仲介業者さんの協力も得ながら、さらに仲間を増やしていきたいと考えます。

2015年11月末時点の新病院全景(流山セントラルパーク駅前ロータリーより)

駅前診療所が入る予定の外苑企画ビル(2015年10月建設中の写真)

制度教育の課題

薬剤師、セラピスト、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学士なども、医療活動の充実にとっては非常に重要なスタッフであり、採用とともに、制度教育の充実が課題となっています。
また、医療活動の中身には直接関わりませんが、事務系スタッフも大変重要です。医師をはじめ技術系スタッフがその機能を十分に発揮するためには事務の役割が十分に機能することが期待されています。一般的には受付窓口と会計計算ということしか患者さんや地域の方々には見えませんが、スムーズに診療が進むようにする診療支援や病歴、データ管理、機器や資材の管理、行政とのやりとりなど、病院が機能していくうえで大変重要な役割を担っています。

医師専門医制度の対応

司会ところで、医師の専門医制度が変わるようですが、東葛病院はどのように対応しているのでしょうか。

院長初期臨床研修が必修化されるようになってから、プライマリケアの診療能力は、全医師が身につけることが求められるようになりました。この部分に関しては、一定成果をあげました。一方で、医療技術は高度化しそれを使いこなす技術者の養成も課題となってきました。専門医機構という組織が立ち上がり、初期研修を終えた医師は、19の基本診療領域の後期研修を受けることになりました。この教育でコンセンサスになっているのは、「標準的医療の提供できる力量の養成」です。日本全国の病院がプログラム作りに突入しています。東葛病院が中心となってプログラムを作る分野や大学病院とネットワークを組んで後期研修医を教育するシステムなどが準備されつつあります。新病院稼働と合わせて大変重要な課題となっています。

一歩ずつ着実な前進

司会では、2016年はどんな年にしていきたいと考えていますか?

院長2月中旬には、建物の引き渡しがあります。それから、開設までは、トレーニング期間としています。通常の医療活動を行いながらの準備ですので、スタッフにも大変な負荷がかかりますが、安全を最優先にして、安心できる医療の提供を目指したいと思います。そして、5月から新病院で医療活動が滞りなく開始できるように準備していきたいと思います。
引っ越し前後は、安全に患者さまや機材を移動させるために、一定期間診療制限をしなくてはなりません。法人内だけでなく近隣の医療機関のみなさんの協力も得ながら、安全に引っ越しを成功させたいと思いますので、ご理解とご協力をお願いします。
新病院、駅前の診療所、現在の付属診療所がそれぞれ、新しい機能を担いながら医療活動を展開していきます。一歩ずつ着実に前進していきたいと思います。

また、昨年当院は、国際HPHネットワークの登録施設となりました。日本でも、国際HPHネットワーク日本支部が結成され、各地でさまざまな取り組みが行われています。
東葛病院がある流山市は、2007年1月に「健康都市宣言」を発表し、4月には健康都市連合日本支部に加盟し、WHOが提唱している健康都市の理念に基づいた施策を策定しています。
当院は医療機関として、病院の中だけでなく、健康に暮らせる地域づくりのために、病院外での活動にも、共同組織のみなさんや地域のみなさんとともに、旺盛に取り組んでいきたいと考えています。
ご一緒に頑張っていきましょう。

司会ありがとうございました。新病院のスムーズな船出と、安心して住み続けられる地域づくりの活動のますますの発展を祈念してインタビューをしめさせていただきます。

<説明>
地域の健康づくりに貢献する「健康増進活動拠点病院」(HPH)の「HPH国際ネットワーク」。誕生のきっかけは、1986年にWHOが採択したオタワ憲章です。「ヘルスプロモーション」(健康増進)という理念を掲げ、「人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセス」と定義しました。
このヘルスプロモーションを地域で実践する病院(HPH)を世界に広げるため、国際ネットワークが1990年に発足しました。世界43カ国・約1000施設が加盟。現在加盟している日本の施設は22施設(2015年2月末現在)です。
同ネットワーク事務局長のハンヌ・ターネセン医師(スウェーデン・スコーネ大学病院教授)は、「民医連と共同組織(友の会)の活動こそ、HPHのすばらしい実践例」と発言しています。

楽しかったね! 第12回子ども冬まつり(東葛病院 付属診療所・主催)

院内保育所の紙人形劇「おおきなかぶ」の始まりです。かぶを引きぬく「うんとこしょ、どっこいしょ」の掛け声は、会場全員が声を揃えます。2015年12月12日 東葛看護学校体育館にて第12回子ども冬まつりが開かれ、全体で60人が参加しました。
実行委員長の小児科の小林嘉代医師は、「来年は新病院です。今日は少し先取りしたクリスマスをお楽しみください」と開会を宣言し、突然来訪したサンタは、アレルギー食品を使わないクッキーなどのお菓子を参加者にプレゼントします。
手話でのジングルベル・赤鼻のトナカイの合唱・ミッキーの歌の合唱体操、恒例の子どもたちによるキャンドルサービスと企画は続き、楽しい時間はあっという間に終わりを迎えました。

(編集部)

サンタがお菓子をプレゼント

いのちと人権の現場から
ご案内から学ぶこと
付属診療所事務長 加藤すみ江

付属診療所事務長
加藤 すみ江

付属診療所総合案内は、外来において重要な役割を担っています。
先日、ご高齢の夫婦が、杖を突きながらおぼつかない足取りで受付機の前にいらっしゃいました。私は一緒に診察券を探し受付機に入れたところ、夫は検査室で採血後内科受診、妻は放射線室でレントゲン撮影後整形外科受診の受付票が出てきました。
診療所入口から受付機まで、やっとの足取りで来院されたご夫婦を、別れた場所へそれぞれご案内しなくてはなりません。無事に診察室までたどり着けるか、お帰りの際再び会えるのか心配になりました。
日常では、特にご高齢の患者さんは、お化粧をし、身支度を整え、必要な物をきちんとバッグに入れています。素敵な柄の診察券入れをお持ちの方や、診察券・保険証・カード類の並べ順を自分なりに工夫している方など、いつも感心してしまいます。
診療所に来ることが、外出する大切な機会になっています。
まもなく、新病院・駅前診療所がオープンしますが、患者さんが安心・安全に受診出来るよう優しいまなざしと丁寧な案内を心がけたいと思います。

現在の付属診療所

付属診療所の受付

共同組織拡大強化月間のご協力に感謝します
共同組織は地域活動のアンテナ役

院長 下 正宗

 共同組織拡大強化月間中には、新たに多くのかたの参加をいただくことができました。新しく迎えた皆さんも含めて、さらに旺盛な活動を進めていきます。
さて、今年5月1日に新東葛病院はオープンします。現在、新病院での医療活動の準備や引っ越しの段取りなどを通常の活動と合わせて進めています。
さらに、施設の充実だけでなく、地域での健康問題を考える要の施設として、HPH(Health Promoting Hospital)の活動にも旺盛に取り組んでいます。共同組織の皆さんとともに健康班会や医療講演会を開催したり、市内の商業施設の一部をお貸りして「まちかど健康相談会」を開いています。

地域包括ケアの時代といわれます。医療機関は、病気を治すだけでなく、地域の中で、病気にならないための支援活動や病気から快復した後の生活支援などにも専門家としてかかわっていきたいと考えています。この活動のアンテナの役割を果たすのが共同組織の活動だと思います。さらに多くのみなさんとともに活動を進めていきたいと思います。引き続きご支援よろしくお願いします。

東葛病院・付属診療所の医療活動(2015年11月分)
付属診療所1日平均外来患者数 763人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 56人
1日平均入院患者数 281人
手術件数 99件
主な検査 血管造影 36件
内視鏡 584件
CT 981件
MRI 347件
心電図 987件
腹部エコー 411件
心エコー 275件
救急患者数 1693件
内 救急車搬入件数 240件

掲載日:2016年1月1日/更新日:2024年10月25日

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