東葛の健康 No.377(2015年12月号)

東葛病院の医療【総合診療科】
冬に多い病気から体を守ろう
血圧の上昇・ウイルス感染

一年で最も寒い時期をむかえます。この冬に多発する病気について、とりわけ血圧の上昇が大きな危険因子の血管の病気と、冬の乾燥によるウイルス感染症について東葛病院・付属診療所で総合診療科・内科予約外来を担当する近藤理恵医師に聞きました。

急な血圧の上昇で発症する病気

この時期多くなるのが血管の病気です。具体的には脳卒中(くも膜下出血・脳梗塞・脳出血)虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)大動脈疾患(大動脈解離・大動脈瘤破裂)などです。このような血管の病気の大きな危険因子は血圧の上昇です。寒い環境では交感神経が緊張し熱を産生させようとします。その反応で血圧も上がるので冬には血圧が上がる傾向にあります。

また血圧が上昇する危険な時間帯は朝です。夜間就寝中に「体を休めるぞ」モードにしている副交感神経系の働きが低下し、朝方「これから起床して活動するぞ」モードにする交感神経系のスイッチが入ります。交感神経の活動が急激に高まるために血圧が上昇しやすい、いわゆる早朝高血圧が多いのです。急な血圧の上昇により血管が破綻すると出血(脳出血・大動脈瘤破裂など)になります。

また動脈硬化性の変化(プラーク)に傷がついて血栓ができると、その血栓より先に血液がいかなくなり、組織が死んでしまう梗塞(脳梗塞・心筋梗塞など)になります。

対策は降圧剤をきちんとのむこと、家庭血圧(特に朝)をきちんと測定することです。また屋内でも部屋ごとの気温があまりにも違うと、寒い環境に出たときと同じく血圧が上昇する危険があることがわかってきました。

特に浴室と脱衣所、部屋と廊下やトイレの気温差が大きいと注意が必要です。高齢の方がいらっしゃるお家では環境面にも配慮が必要です。

ウイルス感染症

冬の乾燥した空気はウイルスにとって絶好の環境のようです。
そのためこの時期はさまざまなウイルスが流行します。

気道感染ウイルス

代表的なものが毎年11月から3月まではやるインフルエンザウイルスです。予防には季節性インフルエンザワクチンを打つことが重要です。今シーズンから接種料金が高くなりましたが、その分効果が期待できます!。特に高齢者、肺気腫などの呼吸器疾患の方、お子さん達には必要です。さらに加湿で気道を守る、ウイルスにいい環境をつくらない、手洗いうがいの励行をおすすめします。自分からうつさないためには咳エチケットを守ってください。

感染した場合には高熱・筋肉痛・倦怠感が特徴ですが、ワクチン接種のためそれほどひどい症状にならないこともあります。心配な症状が出てきたら受診していただくわけですが、時間が経たないと検査で陽性にならないこともあります。一方発症から72時間を過ぎると内服効果が十分現れません。受診のタイミングを考える参考にしてください。

胃腸炎ウイルス

今年は新型ノロウイルスが検出されて流行するのではないかと新聞などにも書かれていました。ノロウイルスなどの胃腸炎を起こすウイルスの予防は、石鹸を使用した十分な手洗いしかありません。症状が消えてもしばらくウイルスが便に出続けます。そのため手洗いが不十分であれば周囲に広げてしまう恐れもあります。感染しないためにも、感染させないためにも手洗いしかないことを肝に銘じてこの冬を乗り切りましょう。

感染してしまったときには水分をしっかりとりましょう。下痢、嘔吐で水分が出ていきます。少しずつ熱くも冷たくもないものを摂ってください。手軽に塩分も水分も摂取できる経口補水液を利用するのもいいです。そして全てのウイルス感染に言えるのは、きちんと睡眠や食事を摂り、疲れをためない生活をすることです。生活全体を見直しウイルスに負けないからだを作りましょう。

<年末年始医療体制のお知らせ>
12月29日(火)~1月3日(日)
■付属診療所は休診いたします。(外来透析は通常通り行います)
■救急・急患は東葛病院で対応いたします。

子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)⑪
ウイルス性胃腸炎の感染予防

感染管理認定看護師 小池 美穂

粉薬の場合は

冬は保育園などでもノロやロタ、サポなどのウイルス性胃腸炎が流行します。
これらは主に食品や手指などについたウイルスを口から取り込むことで胃腸炎を引き起こします。感染予防の基本はトイレの後や食事の前、外出後に手を石鹸で丁寧に洗うこと、安全な食品を食べることです。

ノロウイルスはとても感染力が強いので、子どもが感染性胃腸炎にかかると家族や兄弟にも感染してしまうことがあります。具合の悪い子どもは親から離れようとしませんし、突然吐いたりするので、吐物の処理も容易ではありません。しかし便や吐物の中には1gあたり100万個以上のウイルスが存在します。できるだけ周りを汚さないように丁寧に拭き、消毒することが大切です。消毒には0・1%以上の次亜塩素酸ナトリウムや85℃1分以上の加熱が有効です。それぞれ注意点を守って使用しましょう。吐物を処理する時は、ドラッグストアなどに売っている使い捨ての手袋とサージカルマスク、できればビニールエプロンもつけて行い、処理をした流しやバケツなども最後に消毒しておきます。子どもの衣服などが吐物や便などで汚れてしまったら、静かに脱がせてまずは袋に密閉しましょう。吐物からウイルスが飛散して1時間ぐらい空中に留まると言われていますので換気も忘れずに行いましょう。

また、子どもは脱水になりやすいので、水分補給をまめに行います。胃腸炎を起こしているときは一気に飲むと吐いてしまうので、経口補水液(OS-1、アクアライトなど)をスプーンを使って少しずつ飲ませましょう。

歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>
キャドカム(CAD/CAM)システムで歯をつくる~3Dプリンター技術を応用した歯科治療

東葛歯科 松丸 加奈 歯科医師

最近テレビでよく目にするようになった『3Dプリンター』の技術、実は歯科でも応用されているのをご存知ですか?
お口の型取りをして作った模型を3Dスキャナーを用いて読み込み、コンピューター上で歯の形にデザインし、専用マシンでキャラメル大のブロックから削り出す技術です。最終的な調整や研磨は人の手が必要ですが、均一な素材でムラのないブロックから削り出す方法のため、以前のものより強度を強くできる利点があります。

一部は保険適応

昨年の4月からこの技術で合成樹脂を用いたCAD/CAM冠というものが一部保険でもできるようになりました。保険の適応範囲は奥歯のうち、犬歯に近い2本の小さな歯(小臼歯)です。(上下左右の合計8本)金属だと笑った時に見えやすいところなので、「見た目は気になるけれど保険外の自費の治療はお金がかかるし…」という方におすすめしています。また、金属アレルギーの方でも安心して使うことができます。

歯科医とよく相談

ただし、合成樹脂を使用しているため、長年の使用で少しずつ変色してしまったり欠けたりすることはあります。お口の中の状況や条件によって保険ではできない場合や、お勧めしない場合もあり、詳しくは歯科医師と相談してください。今後、3Dプリンターの技術や材料(素材)の進歩によって保険適応の範囲がますます広がることを期待したいですね。

相談室の窓から【患者サポートセンター】

ソーシャルワーカー 青野 理恵

同じ目標に向かって支援

こんにちは。同じ法人のみさと協立病院相談室から参りました青野理恵です。今年の8月から東葛病院でソーシャルワーカーとして働いています。みさと協立病院では、主に精神科のソーシャルワーカーとして患者さんに関わってきました。決して長くはない経験ですが、病気によって目の前の目標や将来の展望を抱けなくなってしまった患者さんが、時間をかけ自分の目標や仲間を見つけ回復していく姿をたくさん見させていただき、患者さんから多くのことを学ぶことができました。

東葛病院でも患者さんやご家族に寄り添いその思いを院内スタッフや他機関の方々とも共有して、同じ目標に向かって力を合わせられる支援ができればと思っています。
着任から3カ月が過ぎましたが、川を一つ挟むだけで地域環境の違いや、県が異なることでの制度の違いの大きさを日々感じながら過ごしています。まだまだ分からないことだらけではありますが、頑張っていきたいと思っています。よろしくお願いします。

<無料低額診療事業のご案内>
医療費にお困りの方は、ご相談下さい。
診療費の支払いが困難な方にも適正な治療を受けて頂くために行なっています。
ご案内は:東葛病院 患者サポートセンター
TEL 04-7159-1011(代表)

11月10日(火)「世界糖尿病デー」東葛版

11月10日 東葛病院糖尿病チームは、東葛看護専門学校にて東葛版「世界糖尿病デー」を開催しました。日本では40歳以上の3人に1人が糖尿病とその予備群。東葛病院は医師を先頭に9職種のチーム医療でこの疾病に立ち向かっています。

この日看護師は血糖値、HbA1C測定、足浴を担当し、臨床検査技師は「検査で判る動脈硬化」ABI検査(足関節上腕血圧比)を行いました。糖尿病治療の大きな柱「食事療法」については、岩村管理栄養士が栄養相談を行いました。足浴担当の看護師はフットバスを使い、足のチェックや爪切りなども行い、参加者から喜ばれました。

原島理学療法士による「良い靴の選び方」のお話やチームリーダである入江俊一郎医師による講演「糖尿病について」では、正しい知識と適切な治療の重要性を学び、「わかりやすい」と好評でした。

患者さんとご家族の参加は54人。会の準備と進行を担当した付属診療所医事課の佐々木裕未さんは、「雨にも関わらず、今回で2回目の取り組みに、昨年より多くの参加者を迎えられた。東葛病院だよりを見て関心を持った患者さん以外の方の参加もあり、この運動の広がりを感じている」と話してくれました。

(編集部)

参加者に講義する入江医師

健康友の会にご入会下さい

付属診療所 加藤 すみ江 事務長

東葛病院を応援して下さい

来年5月の新病院オープンを控えた本年、10月からの友の会仲間ふやし月間でさらに多くの仲間と共に新病院のオープンを迎えたいと考えています。健康づくりの輪をさらに広げ、平和で安心な街づくりをご一緒にすすめていきましょう。入院差額ベッド料を取らず、医療難民を救うために無料低額診療事業を行い、「受入れ要請を断らない救急」など、いのちの平等を貫く、東葛病院と健康友の会を応援してください。職員からの呼びかけに、お応え頂き、ご入会下さい。

いのちと人権の現場から
民医連看護のものさし

看護副総師長 松尾 芳

地域(野田市・我孫子市)で訪問看護の医療活動をしていましたが6月に5年半ぶりに東葛病院に戻ってきました。東葛病院での主な仕事は、今年度入職した看護師から中堅看護師まで看護師約200名の教育研修担当としての仕事です。看護師研修では「人間らしく、その人らしく生きていくこと」「患者さんのみかた・とらえ方が無差別平等であるか」という憲法の基本的人権を基本に考えた看護を大切にしています。昨年は全日本民医連で「民医連の看護のものさし」という指標もまとめられています。

東葛地域の医療活動は急性期から慢性期、外科、内科、産科、小児、在宅など様々な分野での専門的な看護技術も求められます。専門性を求められる看護技術のなかでも、患者さんの事例から学ぶ研修を、若手研修では必ずおこなっています。入院している患者さんにインタビューや、退院後の訪問を通して病名だけで患者さんをとらえるのではなく、生活している患者さんのその人らしい看護についてを学んでいます。患者さんの人権を尊重し、「優しさ」となり続けられる看護師を育てていきたいです。

研修を行う卒後1年目の看護師

東葛病院・付属診療所の医療活動(2015年10月分)
付属診療所1日平均外来患者数 751人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 54人
1日平均入院患者数 279人
手術件数 108件
主な検査 血管造影 43件
内視鏡 722件
CT 1080件
MRI 408件
心電図 1222件
腹部エコー 461件
心エコー 334件
救急患者数 1670件
内 救急車搬入件数 227件

掲載日:2015年12月1日/更新日:2024年10月25日