東葛の健康 No.379(2016年2月号)

東葛病院の医療(診察室の窓から)
平和な社会にみんなが立ち上がる時代
継続性は患者さんにとっても医師にとっても大切なこと

総合診療科を受け持つ本間章医師は、法人理事長として新東葛病院建設の先頭に立っています。25年間の外来診療を通して、患者さんと医師が信頼関係を築きながら、病気と向き合う大切さを語ってもらいました。

慢性疾患の患者さんを長らく主治医として外来診療を続けていると、患者さんは人生それぞれの時期に様々なことが起こるし、病気と生活が密接に結びついていることを経験する。患者さん自身の社会生活では、子供の成長における心配事、両親の介護、など悩みはいつになっても尽きない。またある病気の長期にわたる自然経過などは、単純でなく、人それぞれで、教科書などで一般化できないことも多く。患者さんの実体験から学ぶことも多い。

病気と向き合う
本間 章 医師

本間 章 医師

私はおよそ25年間東葛病院で外来を続けてきた。いろいろな出会い、教訓や、貴重な経験をしてきた。それを思い起こすと、感慨深い。最近、80過ぎた患者さんから、20年前に通院しだしたころの古い黄色くなった診察予約カードが出てきたので持ってきてくれた。ほとんど予約日通りに欠かさず、ずーと長い間私に見てもらって、大病もなくここまで来れたのはありがたいことといって感謝の言葉をいただいた。
振り返ってみると、私が特別な治療をこの患者さんにできたことはなかったが、長く継続的に患者さんの訴えや病状を聞きながら、仕事や、家庭生活、山あり谷ありの人生それぞれを拝見しながら、自分の人生とも重ね合わせ、患者さんと医師が信頼関係を築きながら、病気と向き合っていくことの大切さを身に染みている。
診察室に来て、特に何も特別なことをしなくても、先生の顔を見て元気をもらったなどと言われると、私も少しは世の中に貢献しているのかなとうれしくなるものです。

尊厳ある老後を

今の政府は、格差を広げ一握りの人に富を集中させて、社会保障を切り捨てています。高齢化時代を迎え、老老介護も増え、介護の社会化ということで介護保険が作られたはずが、高齢者が尊厳ある老後を迎えられるような社会とは程遠い現実です。若者の生活も非正規雇用がふえ、不安定な生活で夢を描けない状況です。今だれでもが安心して、夢を持って生きていける平和な社会をめざし、若い人から、お年寄りまで我がこととして、みんなが立ち上がる時代だと思います。

東葛病院の2階正面玄関

子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)⑫
おたふくかぜワクチンのすすめ
合併症に注意!
小児科科長 熊谷勇治

小児科科長
熊谷勇治

おたふくかぜは、流行性耳下腺炎(ムンプス)ともいい、2~3週間の潜伏期を経て発症し、片側または両側の唾液腺の腫脹をきたすウイルス感染症です。唾液腺とは耳下腺(耳の下周辺)や顎下腺(顎の下周辺)などを指します。発症から1~2日をピークに通常は1~2週間で軽快します。感染様式は接触や飛沫感染で、感染力が強く、さらに発症する1~2日前から感染することや、症状が現れない不顕性感染の患者も3割くらいいるため、集団感染を起こしやすい病気といえます。


特性と感染力

この病気の注意すべき点は合併症です。10%程度に髄膜炎、思春期以降では20~40%に精巣炎、7%に卵巣炎をきたし不妊の原因にもなります。また2万例に1例程度に回復しない難聴をきたします。他に、膵炎も注意を要します。
合併症を防ぐにはどうしたらよいでしょうか。おたふくかぜに有効な治療法は今のところありません。そのため、かからないように予防するしかありません。予防はワクチンが唯一の方法です。現在は1歳で1回、3歳から6歳でもう1回接種する方法が推奨されています。これにより、重篤な合併症を防ぐことができます。おたふくかぜにかかることでしっかり免疫をつけようとする方がいますが、重篤な合併症を考慮すると危険です。
残念なのは、おたふくかぜワクチンが公費で定期接種化されていない点です。「任意接種=重要でないワクチン」ではありません。こどもたちを重篤な合併症から守るため、私たち保護者がワクチンを接種してあげる必要があります。

クスリあ・れ・こ・れ<隔月掲載>
薬の誤飲事故 薬シートの誤飲に注意

薬剤部 速水直子 薬剤師

誤飲の予防
包装された薬

包装された薬

薬を包装ごと飲みこんでしまい、喉や食道などを傷つけたという事故の例が数多く寄せられています。そのため1錠ずつに切り離せないように包装のミシン目を一方向のみとし、誤飲の注意表示を増やすなどの対策がとられました。しかしその後も依然として誤飲事故は後を絶ちません。

事例あれこれ

処方された薬を包装ごと飲みこんでしまい、喉が痛く救急車で病院に行ったものの喉仏の裏側に薬が引っかかってレントゲンでは見つからず、数時間かけて内視鏡で取り出した事例。別の事例では腹痛が続いており、自宅のお風呂場で立ち上がれず、病院へ救急搬送。手術してみると、切除した腸内に薬の空の包装が発見され、4か所消化管に穴が空いてしまった事もありました。

誤飲の実体

1錠単位に切り離した薬の包装をそのまま飲み込んでしまうと、自力で取り出すことは難しく、X線写真にも写りにくいため、内視鏡で取り出すことになり、身体への負担も大きくなってしまいます。誤飲を予防する為にも1錠ずつに切り分けることは止めましょう。薬の管理が難しい場合は1回分ずつの薬を袋にまとめて入れる「一包化」も出来ますので、医師や薬局に相談してみて下さい。もし誤飲してしまったら、すぐに病院に受診しましょう。時間が経過すると誤飲してしまった薬の包装は発見しづらくなり、症状が重症化するおそれもあります。

シリーズけんさ105【血液検査④】

検査課 大谷由香里 臨床検査技師

LD
遠心分離機にかけて右機械で検査を行う

遠心分離機にかけて
上機械で検査を行う

LD(乳酸脱水素酵素)は、細胞内で糖をエネルギーに変える際に必要な酵素の1つです。
色々な臓器に含まれますが、中でも肝臓や腎臓、肺、心筋、骨格筋、赤血球などに多く含まれています。
これらの臓器や組織が損傷を受けたり、悪性腫瘍があると高値を示すようになります。
高値を示したらアイソザイムの検査をします。アイソザイムとは、同じ働きをするが分子構造が異なる酵素群のことでLDの場合はLD1~LD5に分けられます。
LD1・2は心筋や赤血球・腎臓に、LD2・3・4は白血球や肺に、LD5は骨格筋や肝臓に多く含まれています。このアイソザイムのタイプを判断し、どの臓器の障害かを知る事ができます。病気以外にも成長途中のお子さんや運動をした場合に数値が高くなることがあります。
基準範囲‥120~240U/L

CK

CK(クレアチンキナーゼ)は、体内でのエネルギー代謝に関わる酵素です。
主に脳、骨格筋、心筋などに多く存在し、これらの組織が障害を受けると高値を示すようになります。
CKにはアイソザイムが3種類あります。CKMMは骨格筋に、CKMBは心筋に、CKBBは脳に多く含まれ、どの組織が障害を受けているか判断し病気の診断に用いることができます。
例えば心筋梗塞の場合にはCKとCKMBが発症後数時間で上昇しはじめ、約1日でピークに達し、数日間上昇が続きます。
病気以外では、運動や筋肉注射でも上昇し、筋肉の多い男性の方が女性より数値が高くなる傾向があります。
基準範囲‥男40~200U/L、女40~165U/L

第9回労働・生活・健康 街頭なんでも相談会in松戸
53件の相談

12月25日「ちば派遣村in東葛実行委員会」は松戸駅西口デッキにて「第9回なんでも相談会」を開催しました。東葛病院からは実行委員長を務めた柿本年春医師を先頭に、医師、看護師、MSW、看護学生等20名が参加。相談開始早々、「裏の公園で路上生活者が体調を悪くしている」との情報があり、さっそく新居美香医師ら4名が訪問しましたが会えませんでした。
駅前相談所では、年金が低く、がんと心筋梗塞の治療代を稼ぎたい、という医療相談を始め、職場でパワハラを受けている、残業代が払われないと言った労働相談が寄せられ、計53件の相談がありました。昼には病気が心配の路上生活者が柿本医師の診察を受けることも出来ました。昨年の相談会にくらべ、安倍政権の悪政の下、雇用や暮らしが一段と厳しくなり、働きたくても働けず、病気になっても安心して治療が出来ない深刻な実態が垣間見られました。

(編集部)

戦争法廃止へ2000万人署名にご協力を

安倍首相は9月19日、憲法違反の安全保障法を強引に成立させました。この戦争法に反対する多くの市民は毎月19日、全国各地で戦争法に反対する2000万署名宣伝行動に取り組んでいます。
ここ流山ではおおたかの森駅コンコースで4時から取り組まれていますが、東葛病院に勤務する職員はなかなか参加が難しく、我々も何か行動を!と取り組まれたのが流山街道病院前スタンディングアクション。
安倍首相は、明文改憲についても「国民的議論を深めていきたい」とますます戦争する国づくりを進めています。
人間の命と健康を守る、東葛病院職員は戦争に断固反対します。
町で署名宣伝を見かけましたら是非とも応援をお願いします。

友の会に510人入会 仲間ふやし強化月間(10月~12月)
1万人の健康友の会めざしてさらなるご支援をお願いします

昨年、東葛健康友の会は仲間増やし強化月間で、新たに510人の仲間が増えました。ご支援ご協力有難うございました。
東葛病院は、お金のあるなしに関係なく、いのちの平等を貫き、差額ベッド料を取らず、医療難民を生まないために無料低額診療事業を実施し、相談対応を行っています。また、健康をサポートするため人間ドックや健康診断、各種検診の会員割引を実施しています。東葛病院の医療と健康づくり推進運動を応援して下さい。

いのちと人権の現場から

理学療法士 並木孝嘉

今の福島を知る大切さ
津波で被災した小学校の教室

津波で被災した小学校の教室

2015年11月27日に全日本民医連主催の福島被災地視察・支援連帯行動に参加させて頂きました。総勢25名で福島県内を回り、放射能汚染の実態と被災者の悲痛な叫びを痛感してきました。仮設住宅に避難している方々に直接会いお話しを伺う中で、「震災の時から時が止まっている」「生きる目標がない」「帰る場所がない」など震災から5年近く経つ今でも多くの苦悩を抱えて生活されている現状を目の当たりにしました。また全村避難の飯館村、浪江町にも検問を通り訪れました。除染した土を入れた袋がいたる所に置いてあり、信号だけが動いている街中はまさにゴーストタウンでした。

当時のままの被災した住宅

当時のままの被災した住宅

放射線量もまだまだ高く、除染しても風で飛んできてまた上がってしまうとのことでした。また政府が設置した線量計の裏手の草むらで測定すると8倍も高い数値がでる場所もありました。このような場所で「除染したから29年3月には戻れます」という政府の見解は信じられませんでした。放射能は目に見えないため、離れている私たちは実感がありません。しかし福島の方々はまだまだ苦しんでおり、政府が復興に対して真剣に向き合ってない現状があります。まずは今の福島を国民に知ってもらう事が復興に繋がるのではないかと思います。

東葛病院・付属診療所の医療活動(2015年12月分)
付属診療所1日平均外来患者数 760人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 61人
1日平均入院患者数 275人
手術件数 102件
主な検査 血管造影 43件
内視鏡 616件
CT 1046件
MRI 371件
心電図 1069件
腹部エコー 464件
心エコー 320件
救急患者数 1905件
内 救急車搬入件数 267件

掲載日:2016年2月1日/更新日:2024年10月25日

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