東葛の健康 No.380(2016年3月号)
- 東葛病院の医療(精神神経科)
- 歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>
- 子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)
- シリーズけんさ106【血液検査⑤】
- 戦争法廃止の2000万人署名にご協力ください
- いのちと人権の現場から
- 東葛病院・付属診療所の医療活動(2016年1月分)
東葛病院の医療(精神神経科)
精神科リエゾンは「チーム医療」
入院中の「せん妄」・認知症など
内科・外科にご入院中の患者さんにメンタルケアがおこなえることは、当病院の大きな「強み」です。今号では入院中の患者さんの「せん妄」や認知症などに精神科的領域から協力し、「チーム医療」を実践する大谷明副院長に聞きました。
精神科リエゾンとは
医師 大谷明
皆さんは、コンサルテーション・リエゾン精神医学という言葉をご存じでしょうか。これは東葛病院のような総合病院において、内科、外科などのいわゆる〝身体科〟に入院中の患者さんについて、メンタルケアを行うことです。略して、精神科リエゾン、あるいはリエゾンなどと呼ばれます。リエゾンとはフランス語で「連携」という意味で、精神科と身体科との連携だけでなく、患者さんに関わるあらゆるスタッフ、人たちとの連携という意味が込められています。
入院中の「せん妄」
精神科リエゾンで依頼が多いのが「せん妄」です。皆さんの家族で、入院したら不眠になって夜間、あるいは昼間でも落ち着きがなくなったり幻覚が見えると言い出したりしたという経験はないでしょうか。このほかに、怒りっぽくなったり、点滴を抜いたりなど治療上の指示が守れなくなり身体疾患の治療に困難をきたすこともあります。あるいは、なんかぼーっとしていて、今日が何月何日かがわからなくなったり、自分が病院にいることもわからない、記憶が曖昧になって話のつじつまがあわないなど、認知症と同じような症状を呈すことも少なくありません。
「せん妄」は、病態的には意識障害で、中枢神経、すなわち脳の不調によって引き起こされます。原因としては、脳卒中などの脳の疾患だけでなく、全身のあらゆる疾患で症状が重い時期には出現する可能性があります。入院するという事は身体の状態が悪いという事ですから、それだけ「せん妄」が起きやすいと言えます。ほかに手術の後や、薬が体に合わない時にも起きることがあります。
一般的に高齢者は「せん妄」になりやすく、脱水症だけでなる方もいます。ほかには認知症のある方、脳梗塞などの脳器質疾患になったことがある方、普段からアルコールの量が多い方がなりやすいと言われています。
「せん妄」の治療
治療は、まずは原因となっている身体疾患を治療することです。そして重要なのは睡眠覚醒のリズムを整えることです。不眠の原因となる痛みなどの対策を行ったり、長時間の昼寝を避けてもらうため、昼間ベッドから起き上がってもらうようにします。薬物療法としては向精神薬を服用してもらいます。このような「せん妄」対策と治療を行うなかで、入院の原因となった疾患が改善すると、せん妄も改善していきます。
認知症の診断
精神科リエゾンで、せん妄と並んで依頼が多いのが認知症です。おそらく入院までにある程度認知症は進んでいたのでしょうが、慣れた環境でどうにか生活できていたところに、在宅環境の変化で体調を崩したり、身体疾患の悪化で入院となり、認知症が明らかになることが少なくありません。前に述べたように、当初は「せん妄」との鑑別が難しい時があります。身体疾患や「せん妄」の状態が改善しても、もの忘れなどが目立つ場合には認知症と診断できます。
そのほかに、がんなどの重い病気をもった患者さんの心理的サポート、人間関係や生活上の困難などのストレスで体調を崩して入院された患者さんのサポートなどを行っています。
「チーム医療」
以上のような精神科リエゾンの医療は、精神科医である私一人で実践するものではありません。まずは主治医である身体科の医師が中心にいます。闘病をめぐる不安へのサポートは、患者さんをよく知った主治医や看護師さんが行うほうが効果的です。精神科医や臨床心理士はそれに協力するポジションです。より心理的に複雑な問題を抱えた患者さんの場合には、臨床心理士のカウンセリングも行います。認知症の場合には、医療ソーシャルワーカーやリハビリのセラピスト、訪問看護師やヘルパーなどとともに、在宅に戻った時の介護の態勢を整えることが必要となります。このように精神科リエゾンは「チーム医療」であり、まさに〝連携〟なのです。
現在は、リエゾン回診と称して、私と、臨床心理士の妻野で、毎週一回各病棟に赴いて、依頼のあった患者さんの診察を行っています。病棟で見かけたらよろしくお願いします。
これと関連して、昨年末から東葛病院では、認知症サポートチーム(略してDST)が発足し、まずは学習から開始して活動の仕方を議論中です。このチームにも私と妻野が加わっています。DSTについて、今回は発足のお知らせだけに止めさせていただきますが、いずれ活動内容を説明できる機会もあると思います。よろしくお願い致します。
歯科コーナー「知っていました?」<隔月掲載>
歯磨き 歯磨きのコツ
東葛歯科 澤田直子 歯科衛生士
一日のうち全く歯を磨かない方はいますか?
日本人の95%は毎日歯を磨いており、全く磨かない方は全体の数%です。しかし、日本人の80%以上は歯周病に罹患しているといわれ、45歳頃までには平均で半分近くの歯を虫歯治療している状況です。
虫歯は口腔内の細菌が糖質から作った酸により歯が溶かされて起こります。歯周病は歯を支えている骨が壊されていく病気です。
磨き方
では、毎日磨いているのになぜ虫歯や歯周病になるのでしょうか?それは「磨いている」と「磨けている」の違いです。虫歯になりやすい所は歯と歯の間・奥歯の溝・歯肉との境目・歯肉が下がり根が露出した部分です。歯ブラシはペンを持つ様に持ち、細かく動かします。そして順番を決めて磨いていくことが大切です。あちこち磨くと必ず磨いていない所が出てくるからです。
自分に合った清掃用具を
歯肉が下がると歯と歯の間に汚れ残りやすくなり、そこは歯ブラシだけでは磨ききれません。歯間ブラシを使うとよく磨けます。歯間ブラシはきついところに無理に入れてしまうと歯肉が傷ついてしまいます。スッと入るところに出し入れし、こするように使って下さい。口の中の状況は人によって違います。自分に合った清掃用具とその使い方を歯科医院に行って教えてもらいましょう。
子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)
産後のお母さんを応援します
産婦人科 助産婦 打越 豊子
ベビーマッサージや赤ちゃん同窓会をご存知ですか
産後のお母さんの精神状態はとっても繊細です。マタニティブルーは、不安・孤独から誰でもなりえる状態です。当院産婦人科では、退院した後も1ヶ月健診までに、フォロー外来や、希望があれば自宅訪問も行い、新米お母さんでも自信を持って育児できるようにお手伝いしています。
また「孤立した母子を作らない」の活動として、生後1~6ヶ月の赤ちゃんを対象に「赤ちゃん同窓会~ベビーマッサージと助産師との交流会」を開催しています。集まった子育て中のお母さん達は、困っていることやストレスを出し合い、話をする中で「悩んでいるのは自分だけではない」と感じ、自分達で解決策を見出していきます。参加者から、「経産婦さんからの経験談も聞けて、とても参考になった。楽しかった。また参加したい」との声を頂いています。
現在は、主に当院で出産された方をお誘いしていますが、地域の病院として、地域で子育て中の方々、どなたでも参加出来る様な会も設けて行こうと思っています。アイデア募集中です。こんなアットホームな当院産婦人科で是非出産してみませんか? 宣伝もさせていただきました。
シリーズけんさ106【血液検査⑤】
検査課 大谷由香里 臨床検査技師
AMY(アミラーゼ)
食べ物が食道を通り、胃で溶かされて十二指腸に到着すると、そこに膵液と胆汁が加わって本格的な消化が始まります。この膵液にアミラーゼは含まれており、消化を行う酵素の1つです。通常アミラーゼは唾液や膵液中に分泌されていて血液中にはわずかにしか存在していません。
膵臓や唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)の障害により、細胞が破壊され分泌が妨げられるとアミラーゼが血液中に流れ込み、さらに尿中に流れ出ます。そのために耳下腺炎や急性膵炎、慢性膵炎、膵臓癌などの病気があると血清アミラーゼや尿アミラーゼが上昇することから、これらの病気の診断や経過観察に役立ちます。
アミラーゼには、アイソザイムが2種類あり、膵臓由来のアミラーゼをP型アミラーゼ、唾液腺由来のアミラーゼをS型アミラーゼと呼びます。
アミラーゼアイソザイムの検査をすることにより高値の原因がどちらかを判断することができます。また膵臓の疾患を疑う場合には、他の膵由来の酵素(リパーゼ、エラスターゼなど)を直接測定することもあります。
暴飲暴食をすると大量の食物を消化するためにアミラーゼの分泌が増え、分泌が増えたことで膵臓が自己消化(酵素が膵臓の中で活性化されて膵臓自身を消化する)を始めてしまうのが急性膵炎です。膵炎を起こさないために暴飲暴食には注意をしましょう。
基準範囲‥血清35~125U/L 尿700U/L以下
戦争法廃止の2000万人署名にご協力ください
昨年9月19日、政府は、国民大多数の反対を押し切って、安保法制関連法案を一括して強行成立させました。しかし、法案成立後も多くの国民はこの憲法違反の「戦争法」の廃止を求め、個人や団体が共同し、2千万人署名の取組みを続けています。
東葛病院や健康友の会も、「戦争法」の殺し・殺される危険な中身を訴え、取組みを行っています。1月7日には、付属診療所玄関前に17人が集まり、短時間に98人の方から署名を集めました。「戦争法」成立日である19日正午には、職員など15人が参加し、流山街道沿道で横断幕や、のぼりを持ち、道路を行きかうドライバーに戦争法廃止を訴えるアピール活動を行ない、夕には、つくばエクスプレス線・おおたかの森駅前で職員、友の会役員、地域の年金者、業者、婦人団体など総勢40名で68人の方から署名をいただきました。
2月・3月も、2000万人の署名を達成させ戦争法を廃止させようと、定期的に病院、友の会、労組などで外来の患者さんに署名協力を呼びかけます。患者さんからは、「(ご自身の戦争体験から)戦争はいや」。「フランスのテロが日本で起きたら怖い」など、いろいろな反応が返ってきます。多くの方が署名に応じてくれますが、「判らない、関係ない」という方も少なからずいます。丁寧な会話を積み重ね、資料も提供し、一人でも多くの方に署名をしていただき、戦争法廃止で立憲主義を取り戻したいと思います。
国民の約2割弱に当たる2000万人に署名をお願いするためには、活動に参加してくれる方や、周囲の方にも署名の協力を呼びかけてくれる方を飛躍的に増やすことが必要です。病院内に気軽に投函できる署名ボックスも設置しています。みなさんのご協力をお願いいたします。
編集部
友の会の署名活動
いのちと人権の現場から
「経済的事由による手遅れ事例から」
ソーシャルワーカー
柳田月美
「お金がないから病院には行かない」と言い張り、困り果てた娘さんがやっとの思いで当院に連れて来られたAさんに、ソーシャルワーカーとして初めてお会いした日のことは忘れられません。Aさんは家庭内の揉め事が原因で、目を負傷してしまいました。それでもAさんは「入院はしない、家に帰る」と落ち着かず、付き添っていた娘さんに、事情を伺いました。そしてAさんが頑なに病院に行くことを拒んでいた背景が見えてきました。
Aさんはご主人と息子さんの3人暮らし。昨年くらいから、しっかり者で家計を仕切っていたAさんの言動がおかしくなり、元気がない様子が目立ってきました。Aさんは親の代から続けていた会社を継ぎ、数人の従業員を抱え、羽振りの良い時代もありました。景気が悪くなり廃業してからは、夫婦の少ない国民年金と、息子さんのパート収入と貯金で生活していました。ところが、息子さんが失業、貯金も底をついたにもかかわらず、家計を守ってきたAさんは誰にも相談せず、「家があるから生活保護は受けられない」と諦めていたようです。
「お金のことは心配しないで」と娘さんと一緒に説得し、Aさんは治療をうけることになりました。娘さんが生活保護の申請をしましたが、受理はされませんでした。再度生活保護申請に行く予定の中、Aさんは自らの命を絶ってしまったのです。その事実に私は言葉を失いました。結局、生活保護の申請が受理されたのはAさんが亡くなった後でした。Aさんが、自らの命を絶った明確な理由はわかりません。しかしもっと早く、生活保護が受給できていればと思うと悔やんでなりません。
苦労して一家を支えてきたAさんの最期がこんなかたちではいけない、景気を支えてきた高齢者が笑って死ねない国であってはいけないと怒りはおさまりません。
東葛病院・付属診療所の医療活動(2016年1月分)
付属診療所1日平均外来患者数 | 729人 | ||
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東葛病院 | 1日平均救急・夜間外来患者数 | 30人 | |
1日平均入院患者数 | 288人 | ||
手術件数 | 104件 | ||
主な検査 | 血管造影 | 45件 | |
内視鏡 | 631件 | ||
CT | 994件 | ||
MRI | 345件 | ||
心電図 | 983件 | ||
腹部エコー | 451件 | ||
心エコー | 307件 | ||
救急患者数 | 1861件 | ||
内 救急車搬入件数 | 213件 |
掲載日:2016年3月1日/更新日:2024年10月25日