東葛の健康 No.346(2013年5月号)
東葛病院の医療【皮膚科】
皮膚がんは増加傾向!早期発見が大事です!
皮膚疾患は皮膚科専門医に受診を
東葛病院・皮膚科は、週5日体制(水曜除く)で皮膚疾患全般を診療しています。火曜日担当の吉田寿斗志医師に皮膚疾患について、語って頂きました。
慈恵柏病院と連携して手術治療も
医師 吉田 寿斗志
東葛病院皮膚科は、慈恵医大から派遣された医師による週5日体制(水曜除く)で皮膚疾患全般にわたって診療しています。皮膚疾患は皮膚に限局するものと全身症状の1つとして現れたものに大きく分けられ、その病因も炎症性疾患、感染症、代謝疾患、腫瘍など多岐にわたります。
東葛病院では、これらの診断は皮疹の視診を基本に、ダーモスコピーやドプラーエコーを含めた体表エコー、CT・MRIなどの画像検査や、皮膚生検などが可能です。正確な診断に基づき行われ、ペンレステープなどの薬物、バイポーラー、手術、炭酸ガスレーザー、液体窒素、硝酸銀などを完備していて治療します。
皮膚科医の常勤はいませんが、常勤の内科や外科の医師と協力しながら治療できる皮膚疾患(類天疱瘡(るいてんほうそう)、薬疹、帯状疱疹、蜂窩織炎(ほうかしきえん)、熱傷など)については当院で入院治療をしています。
当科は慈恵医大柏病院皮膚科と密に連携していて、皮膚がんなど高度な外科的手術を要する疾患は、慈恵柏で入院治療し、退院後は引き続き当科で治療しています。
皮膚腫瘍の診断、治療、予防
エコーゼリーの使用で皮膚表面から乱反射が抑えられ、肉眼で認識できない表皮から真皮上層までの構造を透見できる。
今回、皮膚腫瘍について述べます。「できもの」や「しこり」で受診される患者様は多くいらしゃいます。受診される経緯は様々で1㎜も満たない「できもの」に今日気付いたとあせった様子で受診される人がいる一方で、かなり前から「できもの」に気付いていたが、放置して、拡大・潰瘍化し、そこから出血し、痛みも伴い、これでは大変!という状態になって受診される人など様々です。
皮膚がんも早期発見が大事です。どんな進行がんも最初は早期がんだったのです。皮膚がんも種類によっては発見が遅れるとリンパ節や内臓へ転移を起こし、生命に影響を及ぼします。
健康診断や人間ドックを受けても皮膚腫瘍の項目はなく、皮膚がんの早期発見には役立ちません。
皮膚腫瘍に共通していえるのは、皮膚表面に出ているので自分で気づけるのです。全身皮膚を見て、背中など見えにくい部位は家族に見てもらい、少なくとも1㎝以上ある「できもの」、「しこり」があったり、それ以下でも徐々に拡大する場合は皮膚科専門医による診断を受けることをおすすめします。
皮膚がんの多くは直接日光が当たる部分(顔、頭、腕、手など)に好発します。そして、予防には日焼け止めクリームを塗るなど紫外線対策は万全にしましょう。
皮膚がん診断に威力発揮ダーモスコピー
皮膚がんで予後が悪いとされる「ほくろのがん」(悪性黒色腫、メラノーマ)も早期のうちに適切に治療されれば治癒します。皮膚腫瘍で皮膚科を受診されると、視診と同時に、ダーモスコピーという特殊な光学機器を用いて観察されます。
これは無侵襲(むしんしゅう)な診断法で、保険適応になっています。病変部を拡大して観察でき、エコーゼリーを使用することで皮膚表面からの乱反射が抑えられ、肉眼では認識できない表皮から真皮上層までの構造を透見することができます。特に,「ほくろ」の良性悪性の鑑別診断には大いに有用です。
肉眼では認識できない表皮から真皮上層の構造まで透見できる光学機器ダーモスコピー
皮膚疾患は皮膚科専門医に
最後に、皮膚の病気は皮膚科以外の医師が治療することもよくあります。皮膚科の病気にはよく似ているがまったく違った病気であったり、同じ病気でも薬を使い分けたりしなくてはなりませんが、それができるのは皮膚科専門医です。
日本皮膚科学会のホームページからその医師、医院を調べられます。皮膚疾患は、皮膚科専門医に受診することをおすすめします。
皮膚がんは増加傾向にある。基底細胞がんが最も発生数が多い。
クスリ あ・れ・こ・れ 「紫外線対策と日焼け止め選び」 <隔月掲載>
あなたの肌を守りたい
薬剤師 橋本 遵
紫外線(UV)は5月から夏にかけピークになります。紫外線から私たちの肌を守ってくれるのが日焼け止めです。日焼け止めにはPAとSPFという表示がありますが意味をご存知でしょうか。地上に届く紫外線はUVAとUVBです。
UVAは、しみ、しわ、皮膚がんなどの原因になります。
UVBは肌を黒くする日焼けの原因になります。
UVAから保護する効果の値がPA+です。+が多いほど保護力があり、肌への負担、刺激は+++までなら心配いりません。
UVBから保護する効果の値がSPF値です。日焼け止めを1㎠当たり2㎎ずつ塗った時にどれだけ日焼けするのを遅らせることが出来るかの指標です。SPF1を20分として換算しますのでSPF30では600分(=10時間)日焼けを抑えてくれるということです。実際はこの量で塗ると肌が白くなってしまうので薄く塗る人が多く、理論値より持続時間が短くなります。また、汗で落ちてしまうので、何度も塗り直すことが大切です。日常生活ではSPF30ぐらいでも十分です。
酸化チタン、酸化亜鉛、ノンケミカルや紫外線吸収剤不使用と書いてある日焼け止めの方が肌に優しいと言われています。
これから外出する機会が増える時期ですが、目先の楽しさで紫外線対策を怠ってはいけません。すぐに影響が現れなくても、確実に肌へのダメージは蓄積されます。日頃からしっかりとケアを行いましょう。
紫外線の性質と保護する効果の目安
- UVA=真皮に到達。ガラスを透過する
- UVB=表皮に影響。ガラスは遮断する
- PA+=日常生活・散歩・買物時など
- PA++=野外軽いスポーツ・レジャーの時
- PA+++=炎天下・日差し強い場・過敏な肌
- SPF5〜30=日常時
- SPF10〜35=野外軽運動
- SPF25〜50+=炎天下・日差しの強い場・過敏な肌
シリーズけんさ80
頸動脈エコー検査
臨床検査技師 室伏 延江
今回は、頸動脈(けいどうみゃく)エコー検査の紹介です。
頸動脈は、首の左右・顎の下あたりにあるドクドク触れる血管です。この太い血管の様子を、超音波で調べていきます。
頸動脈は、心臓から送り出された血液によって、脳に酸素や栄養を運ぶ働きをしています。
高血圧・高脂血症・糖尿病・喫煙などの生活習慣病があると、動脈硬化によって血流が悪くなり、プラークと呼ばれるコレステロールなどの塊が血管の壁に張り付き、血管の通り道を狭くします。また、このプラークが剥れ脳内に流れると、脳の細い血管が詰まり脳梗塞を起こします。
頸動脈は首の表面にあり、他の血管に比べて超音波で見やすい血管です。この血管は動脈硬化の好発部位(一番、出やすい場所)で、この動脈が狭くなったり、詰っていると、全身の他の血管にも動脈硬化があると予測されます。
血管が詰まると、重要な臓器に血液が行かなくなります。
自覚症状がなくても超音波検査により、動脈硬化が早期発見できます。体表面から見る超音波検査は苦痛もなく、被曝することもありません。
重大な病気にならないため、予防や治療のために、頸動脈エコー検査は有用です。
次回は、頸動脈エコー検査の内容をお話しします。
医療福祉相談室 生活保護の実態調査 ~生活保護の実態と削減問題~
生活知れば、削減など出来ないはず!
全日本民医連の全国の加盟医療機関は生活保護の生活聞き取り調査を行いました。きっかけは、今、盛んに生活保護バッシングが行われ、政府が生活保護費を3年間で8%、670億円削減するとし、制度開始以来の改悪に96%の受給世帯が減額の影響を受ける!と不安の声が上がっていることからです。
「生活保護受給者は税金で本当に楽な生活をしているでしょうか?本当に仕事を怠けているのでしょうか?」
マスメディア報道などもあり、誤解も広がっていることから現場の実態を調査しました。
東葛病院では医療福祉相談室が調査。
Aさんは、老朽アパートに住み、陽当りが悪く暗くて新聞も読めない。節約のため昼間は外へ。日没後は暖房節約のため布団をかぶって寝てしまう。
Bさんは、水洗トイレが壊れ、直せずバケツで流している。衣類は買わず、食費を切り詰め、冠婚葬祭や親戚付き合いも出来ない。
Cさんは、保護から抜けたいが、持病、年齢で…。仕事がない。
調査では、いかに生活を切詰め生活しているかを痛感しました。
生活保護の受給となった理由の多くは、無年金、低年金。病気や不況などで失業し困窮する人。個人の力ではどうにもならない背景があります。「低収入でも生保を受けない世帯もある」「もらい過ぎ」という「逆転現象」を削減の理由にしていますが「低収入で受給資格があるのに受給してない世帯」こそ救うべきです。調査結果は、自治体との懇談や、改悪阻止の運動に反映させていきます。
東葛病院・付属診療所の医療活動(2013年3月分)
付属診療所1日平均外来患者数 | 814人 | ||
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東葛病院 | 1日平均救急・夜間外来患者数 | 49人 | |
1日平均入院患者数 | 304人 | ||
手術件数 | 116件 | ||
主な検査 | 血管造影 | 26件 | |
内視鏡 | 442件 | ||
CT | 834件 | ||
MRI | 285件 | ||
心電図 | 948件 | ||
腹部エコー | 416件 | ||
心エコー | 266件 | ||
救急患者数 | 1524件 | ||
内 救急車搬入件数 | 219件 |
掲載日:2013年5月1日/更新日:2024年10月25日