東葛の健康 No.372(2015年7月号)

医療は権利として等しく国民に
制度「改正」で負担増と規制緩和

5月27日、「医療保険制度改革関連法(略称)」が成立しました。国の医療の大前提である皆保険制度に大きな穴をあけ、医療の市場化がすすむと心配の声が上がっています。(編集部)

値上げと徴収強化
医療保険制度改革関連法の主な中身
「改正」項目 法のねらいと影響
国民健康保険 都道府県が財政運営⇒保険料値上げ、徴収強化などで、地域医療の崩壊が進む
医療費適正化計画 地域医療構想に合わせた目標設定⇒病床削減など
後期高齢者医療 保険料への影響⇒「軽減特例」の廃止で患者負担増
入院給食 1食260円が段階的に460円へ。患者負担増で受診抑制と重症化
紹介状なしの大病院受診 ⇒定額負担5千円~1万円へ。患者負担増で受診抑制と重症化
患者申し出療養制度創設 ⇒安全・有効性が不確かな保険外診療、混合診療の全面解禁をねらう
協会けんぽ  国庫補助率下限の引き下げ⇒16 .4%から13%で中小企業の運営に大きな打撃
国保組合 国庫補助見直しで32%⇒13~32%⇒患者負担増で受診抑制と重症化

この「法改正」の最大の問題点は、国民健康保険の財政運営を都道府県に移すことによって、国保料がさらに上昇することです。今でも高すぎる保険料のため保険証の取り上げなど事実上の無保険者もいる中で、国保加入者がまともに医療を受けられない状況が予想されます。運営主体の都道府県を司令塔に、強力な給付費削減がおこなわれ、地域医療の崩壊が進むことも懸念されます。

受診抑制と重症化

協会けんぽの国庫補助削減は,厳しい経営の中小企業の運営に、大きな打撃をあたえます。さらに入院給食費の段階的引き上げや、紹介状なしの大病院受診時の定額負担、後期高齢者医療制度の保険料の特例軽減の廃止は患者負担をさらに増やし、受診抑制と重症化をもたらすことが予想されます。また患者申し出療養制度の新設は、混合診療の全面解禁をねらったものと考えます
「社会保障削減が前提で、患者の負担増と医療の規制緩和が国の姿勢。国民の血のにじむ努力で培った皆保険制度が崩される。引き続き地域の人々と声をあげていきたい」と大野義一朗流山社保協会長が話します。後半ではこのような日本の医療の現状に対し、キューバの医療・社会保障事情を視察した山入端研修医が話します。

山入端医師がキューバの医療を視察 すべての国民が支えあい心豊かな国
制度と質は先進国同等
キューバ保健省の建物

キューバ保健省の建物

3月初旬、全日本民医連の企画でキューバへ医療視察に行ってきました。介護、福祉、教育に関しても学びましたが、ここでは医療の分野にしぼってお伝えします。
キューバはチェ・ゲバラたちの革命以降、社会保障を充実させる方向を一切崩さずに歩み、医療費はなにがあってもすべて無料です。国土は日本の本州の一回り小さいくらい、人口は10分の1の約1200万人で、医師は75000人程です。日本に換算すると医師が約75万人いる計算で、日本の倍以上の人数です。
医療体制は、家庭医に相当するファミリードクター、中規模病院にあたるポリクリニコ、そして大病院の3層構造となっており、それが地域で割り振られ、すべての国民にかかりつけ医が存在しています。何か問題が生じれば家族とドクターが一緒にポリクリニコに紹介受診しにいき、専門的な介入が必要な際に大病院にかかる仕組みです。経済的に貧しく、熱帯に属するカリブ海の島国ですが、医療制度と質は先進国と同等と言えます。

国民が大切にされる国
視察の移動中。キューバの街並み

視察の移動中。キューバの街並み

キューバは社会保障がすべて無料です。もちろん国の負担額も軽くはありません。しかし、先端医療が全医療費に占める負担は2割弱で、国として健康を増進できる環境整備が医療費を節約する一番の手立てと考えて取り組んでいます。
自殺者やホームレスもいない、皆が支えあって笑顔で暮らす毎日。すべての国民が大切にされている心豊かな国を目の当たりにしてきました。

子育て応援コラムKids’n Baby’s(きっずんべいび~ず)⑥
赤ちゃんの歯磨き

東葛歯科 歯科衛生士 近越明美

上の歯が生えたら準備を

生後6カ月頃から下の前歯が生え始めます。歯磨きを始める準備を始めましょう。赤ちゃんに口の中を触られることに慣れてもらうために、指で軽く口唇、歯肉、頬の内側等に触れておくと良いでしょう。下の歯が大分見えてきたら、授乳や離乳食の後にそっとガーゼで歯を拭きましょう。また徐々に遊び感覚で歯ブラシに慣れさせていきましょう。上の歯が生えてきたら、授乳と同じ姿勢で歯ブラシで優しくしそっと歯を磨き始めましょう。力を入れて磨くと、歯肉や上唇小帯(口唇をめくると見える中央のスジ)に当たり、痛くて嫌がってしまい、歯磨き嫌いの原因になってしまいます。上唇小帯に指を乗せて保護しながら磨くのも良いでしょう。

機嫌よい時に

歯磨きは機嫌の悪い時は避け、機嫌のよい時に遊びながら楽しく行いましょう。くれぐれも優しくそっと磨いてあげてください。歯磨きが終わったらたくさん褒めてあげることもお忘れなく。

クスリあ・れ・こ・れ<隔月掲載>
お薬の飲み合わせと安心服薬~お薬と食物成分、サプリメントなどの組み合わせ

薬剤部 篠田 千尋 薬剤師

お薬は他の薬、サプリメント、食品などとの組み合わせにより、効果が強く出たり弱まったりすることがあります。以下に幾つかのお薬の飲み合わせを示します。

・グレープフルーツジュースとエリスロマイシン(抗生物質)、ニフェジピン(降圧剤)など
グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分により、効果が強くなり副作用が起こる可能性のある薬が幾つかあります。ただし同じ系統の薬だからと言って、効果が強く出るとは限りません。

・アルコールと睡眠薬
アルコールと睡眠薬を一緒に飲むと効果が強く出る可能性があります。その結果、翌日に眠気を持ち越したり、重篤な昏睡状態になることもあります。

・ビタミンKを含む食品とワルファリン
ビタミンKを含む食品を食べるとワルファリンの効果を弱めます。特に納豆は少しでも食べると効果が落ちてしまいます。

・牛乳と一部の抗生物質
テトラサイクリン系、ニューキノロン系と言われる抗生物質は、カルシウムを含む牛乳と一緒に飲むと、抗生物質の効果を弱める可能性があります。
上記以外にも薬の効果が強く出たり弱まったりする組み合わせはあり、程度も様々です。お薬をもらうときには飲み合わせの事も含め、薬剤師に分からない事は是非聞いてください。

熱中症に充分ご注意下さい

HPH推進委員会 間中 加津子 看護師

熱中症かな?と思ったら

連日の暑さで体がだるく感じていませんか?それは熱中症のサインかもしれません。もし、めまいや立ちくらみ、頭痛や吐き気、ボーとするなどの症状がでたら

  • ①涼しい場所へ移動し体を休める。
  • ②ゆっくり水分と少量の塩分をとる。
  • ③服をゆるめ、ぬれタオルで体をふく。
  • ④首や脇、足の付け根など太い血管が通るところを冷やす。
  • ⑤症状の改善がみられない場合は医療機関を受診する。
  • ⑥会話がおかしい・歩けないなど症状が重い場合はすぐに救急車を呼び、意識がもうろうとしている場合は、無理に水分をとらず、体を冷やします。慌てず落ち着いて行動することが大切です。

また、ご高齢の方は喉の渇きや暑さを感じにくくなり、熱中症の危険性が高くなります。水分摂取と服装の工夫で体温を調節し、バランスのよい食事と十分な睡眠で体調を整え、室温28℃以下にして過ごしやすい環境を作りましょう。

シリーズけんさ102【血液検査】

検査課 臨床検査技師 古澤 章雄

今回から、数回に分けて血液検査についてお話します。
血液検査は、細胞成分の検査と液体成分の検査に分けられます。
細胞成分の検査は、白血球・赤血球・血小板などの量や質を調べる検査です。
液体成分の検査は、血液を遠心分離機にかけて、細胞成分を沈め、うわずみ液を使って検査します。このうわずみ液は、血清または血漿と呼ばれ、数多くの項目を調べることが出来ます。
実際に採血をすると、人によっては、フタの色や長さが違う試験管を何種類か採取されるかと思います。これは、採取された血液が、固まらないようにする薬が、検査する項目によって違う為、何本かに分けて採血します。
血液検査の値は、食事・運動・採血時刻などによっても変化します。一般的に採血時刻は、なるべく早朝空腹時に行います。また、年齢、性別により基準値が違ったり、検査した施設や検査方法により正常範囲に違いがありますので、結果の正しい読み方、解釈には専門知識が必要です。数値だけで病気の診断が出来るわけではありませんので、自分で判断しないで、疑問があったり、検査値に異常がある場合は、担当の先生にお尋ねください。

沖縄辺野古支援・連帯行動に職員6名が参加
「基地」で分断され続ける沖縄県民

外来透析 森上 恵子 看護師

5月29~31日、新基地の建設計画に反対する沖縄の運動を支援・連帯する活動に職員6名で参加した森上看護師が手記を寄せてくれました。(編集部)

約19年前名護市辺野古に米軍基地をつくる事が表面化した時、防衛庁(当時)の人々が名護に住み込んで各家庭、中小零細企業、漁協をしらみつぶしに(税金を投入して)買収してまわった。その結果1997年の(基地を造るか否かの)名護市民投票の頃から意見が割れて隣同士が口をきかない状態になったと聞く。
名護市辺野古の漁港をもつ漁協は金で買収され基地建設賛成にまわった。しかしその周囲は反対のまま。またカヌーに乗って抗議行動をする市民の横で、一日5万円で日本政府に買われた漁民が一日中船を浮べ抗議行動をする市民を見張り海上保安庁への連絡役をしている。

辺野古座り込みテント村の看板

辺野古座り込みテント村の看板

ただただ美しい沖縄の自然と風土を壊さずに、戦争に加担せず、平和な日常を営み続けたいと願う)沖縄の素敵な人々が基地を造らないで欲しいと願い抗議行動をしている。
その当たり前の抗議行動を圧倒的な力と数を動員して押さえ込むのは、同じ沖縄県民である(税金で働いている)沖縄警察や機動隊や海上保安庁の人々。同じ沖縄県民でありながら基地をめぐって分断され続けている。
私たち医療、福祉の仕事は命を守り、笑顔のある日常を大切にする仕事だ。沖縄上陸戦では、実際に銃弾が飛び交う中、地面に死人がゴロゴロするなかで赤い血の泥水を飲まなければ生き延びて来れなかった「反戦おばぁ」島袋文子さん(85)の言葉は重い。「国を守るだなんて言う人(安倍政権)は血の泥水をすすってから言ってごらん。自衛隊を戦場に行かせて格好いいのか、面白いのか。その目で見てから辺野古に基地を造ると言ってごらん。」

いのちと人権の現場から
人口の3割が被災したネパール大地震

S・サントス医師

S・サントス医師

私の出身地のネパールは世界の屋根であるヒマラヤの国です。南のインドプレートと北のユーラシアプレートが衝突し、山脈が形成され、現在も隆起し続けています。この二つのプレートの相対速度は約45㎜/年であり、そのため世界的にネパールは地震活動が活発な地域の一つです。

カトマンズに近いバクタブル地域の被災

カトマンズに近いバクタブル地域の被災

4月25日に発生したネパール大地震の規模(M7・8)は1934年の地震(M8・1)に次ぐ2番目の規模でした。死者数は8500人を超え、負傷者は約1万4千人超。ネパール全土で家屋被害は20万戸が全壊、18万戸が半壊、学校関連施設575棟が全壊、969棟が半壊しました。カトマンズ市内の多くの世界遺産も倒壊しました。ネパールの人口の30%に当たる800万人が被災したと言われています。

S・サントス医師

多くの世界遺産も倒壊した

現在、ネパール政府は生存者救出から被災者支援へと軸足を移しています。きれいな飲み水・食べ物・住む家・安全な教室の確保が緊急の課題です。私も、復興のために募金を集めており、先日合計205,000円をネパールに送りました。出身校のOBの会であるEGBOSAを通じて集まったお金を、被害地域の学校や学生達の早期復旧のために支援として当てています。
被災者復興には多くの時間、人とお金が必要です。引き続き皆様のご支援で、ネパールが立ち上がる力をつけさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

緊急アピール 命を守ることと、戦争に反対することは一体だ!
私たち医師は、戦争法案(安全保障関連法案)に反対です

2015年6月17日 東葛病院医局一同

現在、国会では安全保障関連法案が審議されています。
この法案は、自衛隊を海外の戦争に派兵するための戦争法案というべきものです。
国会の審議でわかってきたその内容は、憲法9条に反する違憲立法であること(註1,2)、アメリカが始める戦争に自動的に巻き込まれてしまうこと(註3)、過去の日本の戦争を「間違った戦争」といえない政権が推進している危険性(註4)などが明らかになってきました。
また、一括して審議されている関連11法案のなかには、軍事使用できる特定公共施設として、空港、港とともに病院(日赤病院、国立病院、その他の病院)が含まれており、医療分野に大きくかかわる問題となっています。
法案反対の世論が高まってきています(註5,6,7)。しかし、政府は、6月24日までの会期を延期しても、米国に約束した「今年の夏での成立」に固執しており、予断を許しません。
私たち医師は、命を守る責務を誇りとして働いています。戦争は、わたしたちが日々守ろうとしている命を奪う、最悪の害悪です。これを放置することは、目の前の患者を放置することと同様、医師の存在意義を否定することにつながります。
私たちはこの戦争法案に断固反対します。そして、平和と命を守るために、思想信条の違いを越えて一丸となって力を合わせることを、皆さんに呼びかけるものです。

  • 註1:憲法学者のアンケート(朝日新聞)101人の回答で、安保法制案は「憲法違反91人、違憲の疑い8人、合憲2人」
  • 註2:国会参考人3名全員が違憲と明言
  • 註3:米国が開始したイラク戦争の口実「大量破壊兵器」は米国の「ねつ造」でした。国連決議のないままでアメリカが先制攻撃(グレナダ侵略、リビア爆撃、パナマ侵略、ベトナム戦争など)。日本政府は、これら米国の戦争に一度も反対したことがありません。
  • 註4:ポツダム宣言(日本の戦争は、「侵略戦争」であり「間違った戦争であった」という内容)を、首相は認めず、読んだこともないと。
  • 註5:法案廃棄を求める地方議会の意見書可決(青森県外ヶ浜町、岩手県一戸町、高知県本山町、沖縄県大宜味村)
  • 註6:地方各紙が社説・論説で批判(愛媛新聞、琉球新聞、南日本新聞、北海道新聞、東京新聞、福井新聞、信濃毎日新聞、新潟日報、茨城新聞、高知新聞)
  • 註7:世論調査 「今国会での法案成立に賛成30%、反対59%」(読売)

東葛病院・付属診療所の医療活動(2015年5月分)
付属診療所1日平均外来患者数 723人
東葛病院 1日平均救急・夜間外来患者数 65人
1日平均入院患者数 281人
手術件数 95件
主な検査 血管造影 28件
内視鏡 476件
CT 956件
MRI 298件
心電図 945件
腹部エコー 361件
心エコー 238件
救急患者数 2023件
内 救急車搬入件数 262件

掲載日:2015年7月1日/更新日:2024年10月25日

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