東葛病院内科専門研修プログラム
3.専門研修の方法
1)臨床現場での学習【整備基準13】
内科領域の専門知識は、広範な分野を横断的に研修し、各種の疾患経験とその省察とによって獲得されます。内科領域を70疾患群(経験すべき病態等を含む)に分類し、それぞれに提示されているいずれかの疾患を順次経験します。この過程によって専門医に必要な知識、技術・技能を修得します。代表的なものについては病歴要約や症例報告として記載します。また、自らが経験することのできなかった症例については、カンファレンスや自己学習によって知識を補足します。これらを通じて、遭遇する事が稀な疾患であっても類縁疾患の経験と自己学習によって適切な診療を行えるようにします。
- ①内科専攻医は、担当指導医、上級医の指導のもと、主担当医として、入院患者と外来患者の診療を行ない、内科専門医を目指して研鑽します。主担当医として、入院から退院、その後の外来通院や訪問診療も含めた診断・治療の流れを通じて、一人一人の患者の全身状態、社会的背景・療養環境調整をも包括する全人的医療を実践します。
- ②定期的に開催されるカンファレンスを通じて、担当症例の病態や診断過程の理解を深め、多面的な見方や最新の情報を学びます。また、プレゼンターとして情報検索およびコミュニケーション能力を高めます。
- ③退院患者フォロー外来と総合内科外来(主に初診)を少なくても週1単位、3年間の研修期間を通じて経験を積みます。
- ④救急外来で救急診療の経験を積みます。
- ⑤訪問診療の単位を持つことで在宅医療と地域包括ケアの経験を積みます。
- ⑥当直医として時間外の救急外来と病棟急変などの経験を積みます。
- ⑦必要に応じて、Subspecialty領域の検査を担当します。
2)臨床現場を離れた学習【整備基準14】
- ①内科領域の救急対応、②最新のエビデンスや病態理解・治療法の理解、③標準的な医療安全や感染防御に関する事項、④医療倫理、臨床研究、利益相反に関する事項、⑤専攻医の指導・評価方法に関する事項、などについて、以下の方法で研鑽します。
- ②定期的(毎週1回程度)に開催する医局での抄読会
- ③医療倫理・医療安全・感染対策に関する講習会(東葛病院2017年度実績6回)
※年2 回以上受講します。 - ④地域参加型CPC(内科系2017年度実績10回)
- ⑤研修施設群合同カンファレンス(2017年度:年1回開催)
※合同カンファレンスおよび各連携施設のカンファレンスについては、基幹施設である東葛病院内科専門研修委員会が把握し、定期的にE-mailなどで専攻医に周知し、出席を促します。 - ⑥地域参加型のカンファレンス(2019年度:年2回開催予定)
- ⑦JMECC受講(2019年度:年1回開催予定)
※専門研修1年もしくは2年までに1回受講します。 - ⑧学術集団会(下記5の「学術活動に関する研修計画」参照)
- ⑨各種指導医講習会、JMECC指導者講習会
- など
3)自己学習【整備基準15】
「研修カリキュラム項目表」では、知識に関する到達レベルを A「病態の理解と合わせて十分に深く知っている」と B「概念を理解し、意味を説明できる」に分類、 技術・技能に関する到達レベルをA「複数回の経験を経て、安全に実施できる、または判定できる」、 B「経験は少数例だが、指導者の立ち会いのもとで安全に実施できる、または判定できる」、 C「経験はないが、自己学習で内容と判断根拠を理解できる」に分類、さらに、 症例に関する到達レベルを A「主担当医として自ら経験した」、B「間接的に経験している(実症例をチームとして経験した、または症例検討会を通して経験した)」、C「レクチャー、セミナー、学会が公認するセルフスタディやコンピューターシミュレーションで学習した」と分類しています。(「研修カリキュラム項目表」参照)
自身の経験がなくても自己学習すべき項目については、以下の方法で学習します。
- ①内科系学会が行っているセミナーのDVD やオンデマンドの配信
- ②日本内科学会雑誌にあるセルフトレーニング問題
- ③日本内科学会が行っているセルフトレーニング問題 など
4)リサーチマインドの養成計画【整備基準6,12,30】
内科専攻医に求められる姿勢とは、単に症例を経験することにとどまらず、これらを自ら深めてゆく姿勢です。この能力は自己研鑽を生涯にわたって続けていく際に不可欠となります。
東葛病院内科専門研修施設群は基幹施設、連携施設、特別連携施設のいずれにおいても、
- ①患者から学ぶ姿勢を基本とする。
- ②科学的な根拠に基づいた診断、治療を行う(EBM; evidence based medicine)。
- ③最新の知識、技能を常にアップデートする(生涯学習)。
- ④診断や治療のevidence の構築・病態の理解につながる研究を行う。
- ⑤症例報告を通じて深い洞察力を磨く。
- ①初期研修医あるいは医学部学生の指導を行う。
- ②後輩専攻医の指導を行う。
- ③他職種のスタッフを尊重し、指導を行う。
5)学術活動に関する研修計画【整備基準12】
東葛病院内科専門研修施設群は基幹病院、連携病院、特別連携病院のいずれにおいても、
- ①内科系の学術集会や企画に年2 回以上参加します。
※日本内科学会本部または支部主催の生涯教育講演会、年次講演会、CPC および内科系Subspecialty 学会の学術講演会・講習会を推奨します。 - ②経験症例についての文献検索を行い、症例報告を行います。
- ③臨床的疑問を抽出して臨床研究を行います。
- ④内科学に通じる基礎研究を行います。
内科専攻医は内科学会地方会や内科系学会などへの演題発表あるいは論文発表を、筆頭者として、専門研修3年間のうちに2回以上行います。
また、東葛病院の学術研究委員会が開催する学術集団会にて臨床研究に関する演題発表を行ない、学会・論文発表の推進、生涯研修の充実をはかります。
なお、専攻医が、社会人大学院などを希望する場合でも、東葛病院内科専門研修プログラムの修了認定基準を満たせるようにバランスを持った研修を推奨します。
6)コア・コンピテンシーの研修計画【整備基準7】
「コンピテンシー」とは観察可能な能力で、知識、技能、態度が複合された能力です。これは観察可能であることから、その習得を測定し、評価することが可能です。その中で中核となる、コア・コンピテンシーは倫理観・社会性です。
東葛病院内科専門研修施設群は基幹施設、連携施設、特別連携施設のいずれにおいても指導医、上級医とともに下記①~⑩について研鑽を行ない、内科専門医として高い倫理観と社会性を獲得します。
- ①患者とのコミュニケーション能力
- ②患者中心の医療の実践
- ③患者から学ぶ姿勢
- ④自己省察の姿勢
- ⑤医の倫理への配慮
- ⑥医療安全への配慮
- ⑦公益に資する医師としての責務に対する自律性(プロフェッショナリズム)
- ⑧地域医療保健活動への参画
- ⑨他職種を含めた医療関係者とのコミュニケーション能力
- ⑩後輩医師への指導
※教えることが自らの学びにつながる経験を通し、先輩からだけではなく同期の専攻医、後輩、他職種のスタッフをはじめとした様々な医療関係者からも常に学ぶ姿勢を身につけます。
7)地域医療における施設群の役割【整備基準11,28,29】
内科領域では、多岐にわたる疾患群を経験するための研修は必須です。東葛病院内科専門研修施設群は千葉県東葛北部医療圏、近隣医療圏および首都圏の医療機関から構成されています。
東葛病院は,千葉県東葛医療圏の流山市において中心的な急性期病院であるとともに、回復期・慢性期の病棟も持つケアミックスの病院であり、地域の医療・介護・福祉連携の中核的な病院です。地域に根ざした第一線の病院だからこそ、コモンディジーズから稀な疾患の経験はもちろん、超高齢社会を反映し複数の病態を持った患者の診療経験もでき、高次病院や地域病院との病病連携や診療所との病診連携も経験できます。臨床研究や症例報告などの学術活動の素養も身につけます。
連携施設、特別連携施設には、内科専攻医の多様な希望・将来像に対応し、地域医療や全人的医療を組み合わせて、急性期医療、慢性期医療および患者の生活に根ざした地域医療を経験できることを目的に、東葛病院と同規模で地域の中心的な急性期病院である船橋二和病院、みさと健和病院、立川相互病院、および地域密着型病院であるみさと協立病院、代々木病院、王子生協病院、小豆沢病院、大泉生協病院、中野共立病院、大田病院、城南病院、より地域に密着して地域医療を展開している東葛病院付属流山セントラルパーク駅前診療所、東葛病院付属診療所、あびこ診療所、野田南部診療所で構成しています。
東葛病院と同規模の急性期病院では、異なる地域と医療機能の環境のなかで症例と技能の経験を広げ、地域の第一線医療機関での診療経験をより深く研修します。また、臨床研究や症例報告などの学術活動の素養を積み重ねます。
地域密着型病院と診療所では、より地域に根ざした医療、地域包括ケア、在宅医療などを中心とした研修を行ないます。
特別連携施設であるみさと協立病院、代々木病院、王子生協病院、小豆沢病院、中野共立病院、城南病院、東葛病院付属流山セントラルパーク駅前診療所、東葛病院付属診療所、あびこ診療所、野田南部診療所での研修は、東葛病院の内科専門研修プログラム管理委員会と内科研修委員会とが管理と指導の責任をにないます。東葛病院の担当指導医が、特別連携施設の上級医とともに専攻医の研修指導にあたり、指導の質を保ちます。
初期臨床研修の連携施設でもあり、最も距離が離れている城南病院は茨城県にありますが、東葛病院から電車を利用して、1時間30分程度の移動時間であり、移動や連携は十分に可能です。
8)地域医療に関する研修計画【整備基準28】
東葛病院内科専門研修施設群の内科専門研修では、症例をある時点で経験するということだけではなく、主担当医として、入院から退院、その後の外来通院から在宅医療まで可能な範囲で経時的に、診断・治療の流れを通じて、一人一人の患者の全身状態、社会的背景・療養環境調整をも包括する全人的医療を実践し、個々の患者に最適な医療を提供する計画を立て実行する能力の修得を目標としています。
主担当医として診療・経験する患者を通じて、高次病院や地域病院との病病連携や診療所との病診連携も経験できます。
9)ローテート例【整備基準16,32】
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |
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専攻医
1年目 |
総合内科病棟
研修医指導 屋根瓦1枚目(オプション) |
内科ローテート
循環器/HCU |
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総合内科外来/救急外来/入院患者フォロー外来/訪問診療 | ||||||||||||
専攻医
2年目 |
内科ローテート
消化器/腎臓・透析/回復期・慢性期病棟 |
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総合内科外来/救急外来/入院患者フォロー外来/訪問診療 | ||||||||||||
専攻医
3年目 |
連携施設
立川相互病院(呼吸器・代謝) |
連携施設
大泉生協病院 |
特別連携施設
代々木病院/野田南部診療所 |
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ワンデイバック(総合内科外来/入院患者フォロー外来/訪問診療など) |
図1.東葛病院内科専門研修プログラム(ローテート例)
基幹施設である東葛病院で2年間、連携施設および特別連携施設で1年間、計3年間の専門研修を行います。連携施設と特別連携施設の選択・調整は、専攻医の希望や将来像、研修到達の評価なども踏まえて行ないます。
なお、専攻医の希望と研修到達度によってはSubspecialty研修を位置づけることも可能です。その際の指導と評価はSubspecialty指導医が行います。