東葛病院内科専門研修プログラム
2.プログラムの目標
1)専門研修後の成果【整備基準3】
内科専門医の使命は、1)高い倫理観を持ち、2)最新の標準的医療を実践し、3)安全な医療を心がけ、4)プロフェッショナリズムに基づく患者中心の医療を展開することです。
内科専門医のかかわる場は多岐にわたりますが、それぞれの場に応じて、1)地域医療における内科領域の診療医(かかりつけ医)、2)内科系救急医療の専門医、3)病院での総合内科(Generality)の専門医、4)総合内科的視点を持ったSubspecialistとしての役割を果たし、地域住民、国民の信頼を獲得します。それぞれのキャリア形成やライフステージ、あるいは医療環境によって求められる内科専門医像は単一でなく、その環境に応じて役割を果たすことができ、必要に応じた可塑性のある幅広い内科専門医を多く輩出することが求められています。
東葛病院内科専門研修施設群の内科専門医研修では、プロフェッショナリズムと人格の涵養に勤めるとともに、Generalなマインドを持ち、医療の社会性への理解を深め、地域の医療ニーズに応えうる総合的な力量と、内科専門医として以下の質を備えた医師を育成します。
- ①内科的慢性疾患に対して、生活指導まで視野に入れた良質な健康管理・予防医学およびコモンディジーズに対する診療ができる高レベルのプライマリケアの視点を備えた一般内科専門医
- ②内科系急性・救急疾患に対してトリアージを含めた適切な対応ができる内科系救急医療の専門医
- ③高次病院・高度先進病院での内科系診療で、内科系の全領域に広い知識・洞察力を持ち、身体・精神の統合(全身)的・機能的視野から診断・治療を行う能力を備えた一般・総合内科(generality)の専門医
- ④患者の人権を尊重し、患者の抱える問題を全人的に捉え、多職種協働のチーム医療を実践し、問題解決にあたることのできる優れた主治医能力を持つ内科専門医
- ⑤継続した在宅医療研修とヘルスプロモーション活動を通じて、医療・介護・福祉のネットワークへの理解を深め、高齢者のトータルマネージメント能力と地域志向性をもった地域の医療水準の向上に寄与できる内科専門医 そして、千葉県東葛北部医療圏に限定せず、超高齢社会を迎えた日本のいずれの医療機関でも不安なく内科診療にあたる実力を獲得します。また、希望者はSubspecialty領域の研修や高度・先進医療、大学院などでの研究を開始する準備を整えうる経験をできることも、東葛病院内科専門研修施設群での研修が果たすべき成果です。
2)到達目標(修得すべき知識・技能・態度など)
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①専門知識とは(「内科研修カリキュラム項目表」参照)【整備基準4】
専門知識の範囲(分野)は、「総合内科」、「消化器」、「循環器」、「内分泌」、「代謝」、「腎臓」、「呼吸器」、「血液」、「神経」、「アレルギー」、「膠原病および類縁疾患」、「感染症」、ならびに「救急」で構成されます。
「内科研修カリキュラム項目表」に記載されている、これらの分野における「解剖と機能」、「病態生理」、「身体診察」、「専門的検査」、「治療」、「疾患」などを目標(到達レベル)とします。
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②専門技能とは(「技術・技能評価手帳」参照)【整備基準5】
内科領域の「技能」は、幅広い疾患を網羅した知識と経験とに裏付けをされた医療面接、身体診察、検査結果の解釈、ならびに科学的根拠に基づいた幅の広い診断・治療方針決定を指します。さらに全人的に患者・家族と関わってゆくことや他のSubspecialty専門医へのコンサルテーション能力とが加わります。これらは、特定の手技の修得や経験数によって表現することはできません。
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③専門知識・専門技能の習得計画【整備基準8~10,16】
到達目標( 別表1「東葛病院 疾患群 症例 病歴要約 到達目標」参照)
3年間で、主担当医として「研修手帳(疾患群項目表)」に定める全70 疾患群を経験し、200症例以上経験することを目標とします。
内科領域研修を幅広く行うため、内科領域の疾患をどのように受け持ち研修を進めるかについては多様性があります。そこで、専門研修(専攻医)年限ごとに内科専門医に求められる知識・技能・態度の研修プロセス、その他の研修を行なうフィールドや学会への演題発表などは以下のように設定します。
○専門研修(専攻医)1年目
- ・症例:「研修手帳(疾患群項目表)」に定める70疾患群のうち、少なくとも20疾患群、60症例以上を経験し、J-OSLERにその研修内容を登録します。以下、全ての専攻医の登録状況については担当指導医の評価と承認が行われます。
- ・専門研修修了に必要な病歴要約を10症例以上記載してJ-OSLERに登録します。
- ・技能:研修中の疾患群について、診断と治療に必要な身体診察、検査所見解釈、および治療方針決定を指導医、上級医とともに行うことができます。
- ・態度:専攻医自身の自己評価と、指導医、上級医および他職種のスタッフによる360 度評価を複数回行って、態度の評価および担当指導医によるフィードバックを行います。
- ・その他
最初の6カ月は東葛病院の総合内科病棟で研修を行い、その後、3~6カ月の期間で内科各領域のローテート研修を開始します。
総合内科病棟での研修期間に、初期研修医への研修指導(屋根瓦の1枚目)を行ないます。(1~3年目のいずれかでのオプション)。東葛病院での初診を中心とした総合内科外来、連携施設での入院患者フォロー外来や訪問診療の単位を持ち、在宅も含めた地域医療の研修を行います。
救急外来の単位を持ち、当直の経験とあわせて救急医療の研修を行います。
内科学会地方会への演題発表を行います。
○専門研修(専攻医)2年目
- ・症例:「研修手帳(疾患群項目表)」に定める70疾患群のうち、通算で少なくとも45疾患群、120症例以上の経験をし、J-OSLERにその研修内容を登録します。
- ・専門研修修了に必要な病歴要約をすべて記載してJ-OSLERへの登録を終了します。
- ・技能:研修中の疾患群について、診断と治療に必要な身体診察、検査所見解釈、および治療方針決定を指導医、上級医の監督下で行うことができます。
- ・態度:専攻医自身の自己評価と、指導医、上級医および他職種のスタッフによる360 度評価を複数回行って態度の評価を行います。専門研修(専攻医)1 年次に行った評価についての省察と改善とが図られたか否かを指導医がフィードバックします。
- ・その他
3~6カ月の期間で内科各領域のローテート研修を行います。
引き続き総合内科外来、救急外来、入院患者フォロー外来、訪問診療の単位を持ちます。
1~3カ月の期間、回復リハ・療養・地域包括ケアなどの病棟を経験することで、急性期後の回復期・慢性期の疾患の理解を深め、介護保険等の各種制度の活用、地域の開業医や医療・福祉施設との連携・協力を行ない、在宅復帰のマネジメントに習熟します。
内科学会地方会への演題発表を行います。
○専門研修(専攻医)3年目
- ・症例:主担当医として「研修手帳(疾患群項目表)」に定める全70 疾患群、200症例以上の経験を目標とします。修了認定には、主担当医として通算で最低56疾患群、160 症例以上(外来症例は1 割まで含むことができます)を経験し、J-OSLERにその研修内容を登録します。
- ・専攻医として適切な経験と知識の修得ができることを指導医が確認します。
- ・すでに専門研修2年次までに登録を終えた病歴要約は、日本内科学会病歴要約評価ボード(仮称)による査読を受けます。査読者の評価を受け、より良いものへ改訂します。ただし、改訂に値しない内容の場合は、その年度の受理を認められないことに留意します。
- ・技能:内科領域全般について、診断と治療に必要な身体診察、検査所見解釈、および治療方針決定を自立して行うことができます。
- ・態度:専攻医自身の自己評価と、指導医、上級医および他職種のスタッフによる360 度評価を複数回行って態度の評価を行います。専門研修(専攻医)2年次に行った評価についての省察と改善とが図られたか否かを指導医がフィードバックします。また、内科専門医としてふさわしい態度、プロフェッショナリズム、自己学習能力を修得しているか否かを指導医が専攻医と面談し、さらなる改善を図ります。
- ・その他
連携施設・特別連携施設において1年間の内科専門研修を行います。
地域と医療機能が違う同規模の急性期病院で症例や技能の経験を広げ、より地域に密着した中小病院や診療所で首都圏の地域医療について研修します。
東葛病院へのワンデイバックを位置付け、外来診療・訪問診療などを継続します。
内科学会地方会への演題発表を行います。
専門研修修了には、すべての病歴要約29症例の受理と、少なくとも70 疾患群中の56 疾患群、160 症例以上の経験を必要とします。J-OSLERへの登録と指導医の評価と承認とによって目標を達成します。
東葛病院内科専門研修施設群の内科専門研修では、「研修カリキュラム項目表」の知識、技術・技能の修得は必要不可欠なものであり、修得までの期間は3年間(基幹施設2年間+連携・特別連携施設1年間)としますが、修得が不十分な場合は研修期間を延長します。一方でカリキュラムの知識、技術・技能を修得したと認められた専攻医には、希望に応じてSubspecialty領域の研修を開始することが可能です。その際の指導と評価はSubspecialty指導医が行います。