東葛病院総合診療専門研修プログラム
2.総合診療専門研修はどのように行われるのか
1)研修の流れ:総合診療専門研修は、卒後3年目からの専門研修3年間で構成されます。
- ①1年次修了時には、患者の情報を過不足なく明確に指導医や関連職種に報告し、健康問題を迅速かつ正確に同定することを目標とします。主たる研修の場は東葛病院における総合診療専門研修Ⅱとなります。
- ②2年次修了時には、診断や治療プロセスも標準的で患者を取り巻く背景も安定しているような比較的単純な健康問題に対して、的確なマネジメントを提供することを目標とします。主たる研修の場は東葛病院と愛友会記念病院における救急科・小児科研修および内科となります。
- ③3年次修了時には、多疾患合併で診断や治療プロセスに困難さがあったり、患者を取り巻く背景も疾患に影響したりしているような複雑な健康問題に対しても的確なマネジメントを提供することができ、かつ指導できることを目標とします。主たる研修の場は連携施設での総合診療専門研修Ⅰおよび東葛病院での領域別選択研修となります。
- ④また、総合診療専門医は日常遭遇する疾病と傷害等に対する適切な初期対応と必要に応じた継続的な診療を提供するだけでなく、地域のニーズを踏まえた疾病の予防、介護、看取りなど保健・医療・介護・福祉活動に取り組むことが求められますので、18ヶ月以上の総合診療専門研修ⅠおよびⅡにおいては、後に示す地域ケアの学びを重点的に展開することとなります。
- ⑤3年間の研修の修了判定には以下の3つの要件が審査されます。
- 1)定められたローテート研修を全て履修していること
- 2)専攻医自身による自己評価と省察の記録、作成した経験省察研修録を通じて、到達目標がカリキュラムに定められた基準に到達していること
- 3)研修手帳に記録された経験目標が全てカリキュラムに定められた基準に到達していること
様々な研修の場において、定められた到達目標と経験目標を常に意識しながら、同じ症候や疾患、更には検査・治療手技を経験する中で、徐々にそのレベルを高めていき、一般的なケースで、自ら判断して対応あるいは実施できることを目指していくこととなります。
2)専門研修における学び方
専攻医の研修は臨床現場での学習、臨床現場を離れた学習、自己学習の大きく3つに分かれます。それぞれの学び方に習熟し、生涯に渡って学習していく基盤とすることが求められます。
①臨床現場での学習
職務を通じた学習を基盤とし、診療経験から生じる疑問に対してEBMの方法論に則って文献等を通じた知識の収集と批判的吟味を行うプロセスと、総合診療の様々な理論やモデルを踏まえながら経験そのものを省察して能力向上を図るプロセスを両輪とします。その際、学習履歴の記録と自己省察の記録を経験省察診療録作成という形で全研修課程において実施します。場に応じた教育方略は下記の通りです。
- (ア)外来医療
- 経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。外来診察中に指導医への症例提示と教育的フィードバックを受ける外来教育法(プリセプティング)、などを実施します。また、指導医による定期的な診療録レビューによる評価、更には、症例カンファレンスを通じた臨床推論や総合診療の専門的アプローチに関する議論などを通じて、総合診療への理解を深めていきます。また、技能領域については、習熟度に応じた指導を提供します。
- (イ)在宅医療
- 経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。初期は経験ある指導医の診療に同行して診療の枠組みを理解し、次第に独立して訪問診療を提供し経験をつみます。外来医療と同じく、症例カンファレンスを通じて学びを深め、多職種と連携して提供される在宅医療に特徴的な多職種カンファレンスについても積極的に参加し、連携の方法を学びます。
- (ウ)病棟医療
- 経験目標を参考に幅広い経験症例を確保します。入院担当患者の症例提示と教育的フィードバックを受ける回診及び多職種を含む病棟カンファレンスを通じて診断・検査・治療・退院支援・地域連携のプロセスに関する理解を深めます。指導医による診療録レビューや手技の学習法は外来と同様です。
- (エ)救急医療
- 経験目標を参考に救急外来で幅広い経験症例を確保します。外来診療に準じた教育方略となりますが、特に救急においては迅速な判断が求められるため救急特有の意思決定プロセスを重視します。また、救急処置全般については技能領域の教育方略(シミュレーションや直接観察指導等)が必要となり、特に、指導医と共に処置にあたるなかから経験を積みます。
- (オ)地域ケア
- 地域医師会の活動を通じて、地域の実地医家と交流することで、地域包括ケアへ参画し、自らの診療を支えるネットワークの形成を図り、日々の診療の基盤とします。さらには産業保健活動、学校保健活動等を学び、それらの活動に参画します。参画した経験を指導医と共に振り返り、その意義や改善点を理解します。
②臨床現場を離れた学習
- ・総合診療の様々な理論やモデル、組織運営マネジメント、総合診療領域の研究と教育については、関連する学会および団体の学術集会やセミナー、研修会へ参加し、研修カリキュラムの基本的事項を履修します。
- ・臨床現場で経験数の少ない手技などはシミュレーション機器を活用して学びます。
- ・医療倫理、医療安全、感染対策、保健活動、地域医療活動等については、基幹施設である東葛病院が開催する各種講習会や学術集団会等、日本医師会の生涯教育制度や関連する学会の学術集会等を通じて学習を進めます。地域医師会における生涯教育の講演会は、診療に関わる情報を学ぶ場としてのほか、診療上の意見交換等を通じて人格を陶冶する場として活用します。
③自己学習
研修カリキュラムにおける経験目標は原則的に自プログラムでの経験を必要としますが、やむを得ず経験を十分に得られない項目については、総合診療領域の各種テキストやWeb教材、更には日本医師会生涯教育制度及び関連のある学会等におけるe-learning教材、医療専門雑誌、各学会が作成するガイドライン等を適宜活用しながら、幅広く学習します。
3)専門研修における研究
専門研修プログラムでは、最先端の医学・医療を理解すること及び科学的思考法を体得することが、医師としての幅を広げるために重要です。また、専攻医は原則として学術活動に携わる必要があり、学術大会等での発表(筆頭に限る)および論文発表(共同著者を含む)を行うこととします。
本研修PGでは、東葛病院が開催する学術集団会等で演題発表を行い、臨床研究に携わる機会を提供します。研究発表についても経験ある指導医からの支援を提供します。
4)研修の週間計画および年間計画
基幹施設 東葛病院
総合診療科(総合診療専門研修Ⅱ)
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 英文抄読会 | 総合診療学習会 | 救急症例検討会 | 日当直 病棟診療 救急外来 講習会・学会など |
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腹部超音波検査研修 | 総合診療外来 | 教育回診/病棟 | 救急外来 | 訪問診療 | |||
午後 | 病棟 入院患者診療 |
病棟 多職種カンファ |
病棟 入院患者診療 |
病棟 入院患者診療 |
病棟 院長回診 |
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担当患者の病態に応じた診療/オンコール/当直など | |||||||
医局CC | 研修医 CC/CPC |
内科
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 英文抄読会 | 総合診療学習会 | 救急症例検討会 | 消化器抄読会 | 日当直 病棟診療 救急外来 講習会・学会など |
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上部消化管 内視鏡検査研修 |
総合内科外来 退院フォロー外来 |
腹部超音波検査研修 | 病棟 入院患者診療 |
訪問診療 | |||
午後 | 消化器カンファ 病棟 |
病棟 入院患者診療 |
病棟 入院患者診療 |
救急外来 | 下部消化管 内視鏡検査研修 |
||
担当患者の病態に応じた診療/オンコール/当直など | |||||||
医局CC | 研修医 CC/CPC |
小児科
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 小児英文抄読会 | 英文抄読会 | 救急症例検討会 | 日当直 病棟診療 小児科一般外来 講習会・学会など |
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新生児健診 小児科一般外来 |
病棟 入院患者診療 |
小児科一般外来 | 病棟 入院患者診療 |
訪問診療 | |||
午後 | 病棟 入院患者診療 |
乳児健診 | 病棟 入院患者診療 |
救急外来 | ワクチン外来 | ||
担当患者の病態に応じた診療/オンコール/当直など | |||||||
医局CC | 研修医 CC/CPC |
救急科
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
午前 | 英文抄読会 | 救急症例検討会 | 日当直 病棟診療 講習会・学会など |
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救急外来 | 心臓超音波検査研修 | 救急外来 | 救急外来 | 訪問診療 | |||
午後 | 救急外来 | 救急外来 | 救急外来 | 腹部超音波検査研修 | 救急外来 | ||
担当患者の病態に応じた診療/オンコール/当直など | |||||||
医局CC | 研修医 CC/CPC |
連携施設 愛友会記念病院(小児科)
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 小児英文抄読会 | 英文抄読会 | 救急症例検討会 | 日当直 病棟診療 小児科一般外来 講習会・学会など |
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新生児健診 小児科一般外来 |
病棟 入院患者診療 |
小児科一般外来 | 病棟 入院患者診療 |
訪問診療 | |||
午後 | 病棟 入院患者診療 |
乳児健診 | 病棟 入院患者診療 |
救急外来 | ワクチン外来 | ||
担当患者の病態に応じた診療/オンコール/当直など | |||||||
医局CC | 研修医 CC/CPC |
連携施設 代々木病院(総合診療専門研修Ⅰ)
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 総合診療症例検討会 | 総合診療症例検討会 | 日当直 病棟診療 救急待機 講習会・学会など |
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病棟 入院患者診療 |
一般外来 | 教育回診/病棟 | 東葛病院 小児科外来 |
病棟 入院患者診療 |
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午後 | 病棟 救急待機 |
病棟 多職種カンファ |
病棟 入院患者診療 |
訪問診療 | 病棟 救急待機 |
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担当患者の病態に応じた診療/オンコール/当直/東葛病院夜間救急外来など | |||||||
医局 CC/CPC |
連携施設 東葛病院付属診療所・あびこ診療所・野田南部診療所・おおくぼ戸山診療所 新松戸診療所(総合診療専門研修Ⅰ)
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 外来 訪問診療待機 代々木病院当直 講習会・学会など |
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外来 | 外来 | 東葛病院 小児科外来 |
外来 | 外来 | |||
午後 | 外来 外来カンファ |
訪問診療 | 訪問診療 | 訪問診療 在宅カンファ |
訪問診療 | ||
訪問診療待機/代々木病院当直/東葛病院夜間救急外来など | |||||||
東葛病院 CPC |
連携施設 みさと協立病院(選択研修・精神科)
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 文献抄読会 | 日当直 病棟診療 講習会・学会など |
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病棟カンファ 入院患者診療 |
患者会 ミーティング 振り返り |
病棟カンファ 入院患者診療 |
病棟カンファ レクリエーション |
病棟カンファ 病棟医長回診 |
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午後 | 病棟カンファ 散歩・お茶 |
新患外来 | 多職種カンファ PICUお茶会 |
外来新患カンファ アルコールミーティング |
レクリエーション 地域精神保健ネット |
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担当患者の病態に応じた診療/オンコール/当直など | |||||||
東葛病院 CPC |
東葛病院夜間救急外来 |
連携施設 道南勤医協 函館陵北病院(総合診療専門研修Ⅰ)
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 症例・薬剤カンファ | 病棟業務 外来講習会・学会など |
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病棟業務 | 病棟業務 | 総合診療外来 | 総合診療外来 | 病棟業務 | |||
午後 | 訪問診療総回診 | 病棟回診 救急対応 |
病棟回 診救急対応 |
訪問診療 | 病棟回診 救急対応 |
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抄読会 | 病棟カンファ |
*平日当直(1~2回/週)、土日の日直・宿直(1回/月)、在宅支援当番週1回
連携施設 道北勤医協 宗谷医院(総合診療専門研修Ⅰ)、医療生協さいたま生活協同組合秩父生協病院
週間スケジュール例月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | |
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午前 | 訪問診療・看護打ち合わせ | 外来 訪問診療待機 講習会・学会など |
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外来 | 外来 | 外来 | 外来 | 外来 | |||
午後 | 訪問診療 | 訪問診療 | 訪問診療 | 訪問診療 | 訪問診療 | ||
外来振り返り | 外来振り返り | 夕方診療 | 多職種カンファ 外来振り返り |
平日待機(隔週)、土日の待機(隔週)
(※へき地を連携施設から外すか、連携施設として残して希望があれば行ける形にするか要検討)
本研修PGに関連した全体行事の年度スケジュール
SR1:1年次専攻医、SR2:2年次専攻医、SR3:3年次専攻医
全体行事予定 | |
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4月 | ・SR1:研修開始。専攻医および指導医に提出用資料の配布 ・SR2、SR3、研修修了予定者:前年度分の研修記録が記載された研修手帳を月末まで提出 ・指導医・プログラム統括責任者:前年度の指導実績報告の提出 |
5月 | ・第1回総合診療専門研修プログラム管理委員会:研修実施状況評価、ローテート予定確認、修了判定 |
6月 | ・研修修了者:専門医認定審査書類を日本専門医機構へ提出 ・日本プライマリ・ケア連合学会参加(発表)(開催時期は要確認) |
7月 | ・研修修了者:専門医認定審査(筆記試験、実技試験) ・次年度専攻医の公募および説明会開催 |
8月 | ・日本プライマリ・ケア連合学会ブロック支部地方会演題公募(詳細は要確認) |
9月 | ・第2回総合診療専門研修プログラム管理委員会:研修実施状況評価 ・専攻医公募締切(9月末) |
10月 | ・日本プライマリ・ケア連合学会ブロック支部地方会参加(発表)(開催時期は要確認) ・SR1、SR2、SR3:研修手帳の記載整理(中間報告) ・次年度専攻医採用審査(書類及び面接) ・全日本民医連・医療福祉生協連共催 臨床研究交流会参加(発表) |
11月 | ・SR1、SR2、SR3:研修手帳の提出(中間報告) ・TMR経験省察研修録発表会 |
12月 | ・第3回総合診療専門研修プログラム管理委員会:研修実施状況評価、採用予定者の承認 ・TMR青年医師学術運動交流集会参加(発表) |
1月 | ・地協ブロック支部経験省察研修録発表会 |
2月 | ・他領域合同の専門研修報告会 ・東葛病院医療活動研究会参加(発表) |
3月 | ・その年度の研修修了 ・SR1、SR2、SR3:研修手帳の作成(年次報告)(書類は翌月に提出) ・SR1、SR2、SR3:研修プログラム評価報告の作成(書類は翌月に提出) ・指導医・統括責任者:指導実績報告の作成(書類は翌月に提出) ・研修修了式 |