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目 次

東葛病院総合診療専門研修プログラム

3.専攻医の到達目標(修得すべき知識・技能・態度など)

1)専門知識

総合診療の専門知識は以下の6領域で構成されます。

  • ①地域住民が抱える健康問題には単に生物医学的問題のみではなく、患者自身の健康観や病いの経験が絡み合い、患者を取り巻く家族、地域社会、文化などの環境(コンテクスト)が関与していることを含めて全人的に理解し、患者、家族が豊かな人生を送れるように、コミュニケーションを重視した診療・ケアを提供する。
  • ②総合診療の現場では、疾患のごく初期の未分化で多様な訴えに対する適切な臨床推論にもとづく診断・治療から、複数の慢性疾患の管理や複雑な健康問題に対する対処、さらには健康増進や予防医療まで、多様な健康問題に対する包括的なアプローチが求められる。そうした包括的なアプローチは断片的に提供されるのではなく、地域に対する医療機関としての継続性、さらには診療の継続性にもとづく患者・医師の信頼関係を通じて、一貫性をもった統合的な形で提供される。
  • ③多様な健康問題に的確に対応するためには、地域の多職種との良好な連携体制の中での適切なリーダーシップの発揮に加えて、医療機関同士あるいは医療・介護サービス間での円滑な切れ目ない連携も欠かせない。さらに、所属する医療機関内の良好な連携のとれた運営体制に貢献する必要がある。
  • ④地域包括ケア推進の担い手として積極的な役割を果たしつつ、医療機関を受診していない人も含む全住民を対象とした保健・医療・介護・福祉事業への積極的な参画と同時に、地域ニーズに応じた優先度の高い健康関連問題の積極的な把握と体系的なアプローチを通じて、地域全体の健康向上に寄与する。
  • ⑤総合診療専門医は日本の総合診療の現場が外来・救急・病棟・在宅と多様であることを踏まえて、各現場で多様な対応能力を発揮すると共に、ニーズの変化に対応して自ら学習・変容する能力が求められる。
  • ⑥繰り返し必要となる知識を身につけ、臨床疫学的知見を基盤としながらも、常に重大ないし緊急な病態に注意した推論を実践する。

2)専門技能(診察、検査、診断、処置、手術など)

総合診療の専門技能は以下の5領域で構成されます。

  • ①外来・救急・病棟・在宅という多様な総合診療の現場で遭遇する一般的な症候及び疾患への評価及び治療に必要な身体診察および検査・治療手技
  • ②患者との円滑な対話と患者・医師の信頼関係の構築を土台として、患者中心の医療面接を行い、複雑な人間関係や環境の問題に対応するためのコミュニケーション技法
  • ③診療情報の継続性を保ち、自己省察や学術的利用に耐えうるように、過不足なく適切な診療記録を記載し、他の医療・介護・福祉関連施設に紹介するときには、患者の診療情報を適切に診療情報提供書へ記載して速やかに情報提供することができる能力
  • ④生涯学習のために、情報技術(IT)を適切に用いたり、地域ニーズに応じた技能の修練を行ったり、人的ネットワークを構築することができる能力
  • ⑤診療所・中小病院において基本的な医療機器や人材などの管理ができ、スタッフとの協働において適切なリーダーシップの提供を通じてチームの力を最大限に発揮させる能力

3)経験すべき疾患・病態

以下の経験目標については一律に症例数で規定しておらず、各項目に応じた到達段階を満たすことが求められます。(研修手帳参照)

なお、この項目以降での経験の要求水準としては、「一般的なケースで、自ら判断して対応あるいは実施できたこと」とします。

①以下に示す一般的な症候に対し、臨床推論に基づく鑑別診断および、他の専門医へのコンサルテーションを含む初期対応を適切に実施し、問題解決に結びつける経験をする。(全て必須)

ショック 急性中毒 意識障害 疲労・全身倦怠感 心肺停止
呼吸困難 身体機能の低下 不眠 食欲不振 体重減少・るいそう
体重増加・肥満 浮腫 リンパ節腫脹 発疹 黄疸
発熱 認知脳の障害 頭痛 めまい 失神
言語障害 けいれん発作 視力障害・視野狭窄 目の充血 聴力障害・耳痛
鼻漏・鼻閉 鼻出血 嗄声 胸痛 動悸
咳・痰 咽頭痛 誤嚥 誤飲 嚥下困難
吐血・下血 嘔気・嘔吐 胸やけ 腹痛 便通異常
肛門・会陰部痛 熱傷 外傷 褥瘡 背部痛
腰痛 関節痛 歩行障害 四肢のしびれ 肉眼的血尿
排尿障害(尿失禁・排尿困難)   乏尿・尿閉 多尿 不安
気分の障害(うつ) 興奮   女性特有の訴え・症状 妊婦の訴え    
    成長・発達の障害    
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②以下に示す一般的な疾患・病態について、必要に応じて他の専門医・医療職と連携をとりながら、適切なマネジメントを経験する。(必須項目のカテゴリーのみ掲載)

貧血 脳・脊髄血管障害 脳・脊髄外傷 変性疾患 脳炎・脊髄炎
一次性頭痛 湿疹・皮膚炎群 蕁麻疹 薬疹 皮膚感染症
骨折 関節・靭帯の損傷及び障害   骨粗鬆症 脊柱障害
心不全 狭心症・心筋梗塞   不整脈 動脈疾患
静脈・リンパ管疾患 高血圧症 呼吸不全 呼吸器感染症  
閉塞性・拘束性肺疾患   異常呼吸 胸膜・縦隔・横隔膜疾患  
食道・胃・十二指腸疾患   小腸・大腸疾患 胆嚢・胆管疾患 肝疾患
膵臓疾患 腹壁・腹膜疾患 腎不全 全身疾患による腎障害  
泌尿器科的腎・尿路疾患   妊婦・授乳婦・褥婦のケア    
女性生殖器およびその関連疾患   男性生殖器疾患 甲状腺疾患 糖代謝異常
脂質異常症 蛋白および核酸代謝異常   角結膜炎 中耳炎
急性・慢性副鼻腔炎   アレルギー性鼻炎 認知症  
依存症(アルコール依存、ニコチン依存)   うつ病 不安障害  
身体症状症(身体表現性障害)   適応障害 不眠症  
ウイルス感染症 細菌感染症 膠原病とその合併症   中毒
アナフィラキシー 熱傷 小児ウイルス感染 小児細菌感染症 小児喘息
小児虐待の評価 高齢者総合機能評価 老年症候群 維持治療期の悪性腫瘍  
緩和ケア        
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※詳細は資料「研修目標および研修の場」を参照

4) 経験すべき診察・検査等

以下に示す、総合診療の現場で遭遇する一般的な症候及び疾患への評価および治療に必要な身体診察および検査を経験します。なお、下記の経験目標については一律に症例数や経験数で規定しておらず、各項目に応じた到達段階を満たすことが求められます。(研修手帳参照)

(ア)身体診察
①小児の一般的身体診察および乳幼児の発達スクリーニング診察
②成人患者への身体診察(直腸、前立腺、陰茎、精巣、鼠径、乳房、筋骨格系、神経系、皮膚を含む)
③高齢患者への高齢者機能評価を目的とした身体診察(歩行機能、転倒・骨折リスク評価など)や認知機能検査(HDS-R、MMSEなど)
④耳鏡・鼻鏡・眼底鏡による診察
⑤死亡診断を実施し、死亡診断書を作成
(イ)検査
①各種の採血法(静脈血・動脈血)、簡易機器による血液検査・簡易血糖測定・簡易凝固能検査
②採尿法(導尿法を含む)
③注射法(皮内・皮下・筋肉・静脈注射・点滴・成人および小児の静脈確保法、中心静脈確保法を含む)
④穿刺法(腰椎・膝関節・肩関節・胸腔・腹腔・骨髄を含む)
⑤単純X線検査(胸部・腹部・KUB・骨格系を中心に)
⑥心電図検査・ホルター心電図検査・負荷心電図検査
⑦超音波検査(腹部・表在・心臓・下肢静脈)
⑧生体標本(喀痰、尿、皮膚等)に対する顕微鏡的診断
⑨呼吸機能検査
⑩オージオメトリーによる聴力評価および視力検査表による視力評価
⑪消化管内視鏡(上部、下部)
⑫造影検査(胃透視、注腸透視、DIP)
⑬頭・頚・胸部単純CT、腹部単純・造影CT、頭部MRI/MRA

※詳細は資料「研修目標及び研修の場」を参照

5) 経験すべき手術・処置等

以下に示す、総合診療の現場で遭遇する一般的な症候および疾患への評価および治療に必要な治療手技を経験します。なお、下記については一律に経験数で規定しておらず、各項目に応じた到達段階を満たすことが求められます。(研修手帳参照)

(ア)救急処置
①新生児、幼児、小児の心肺蘇生法(PALS)
②成人心肺蘇生法(ICLSまたはACLS)または内科救急・ICLS講習会(JMECC)、外傷救急(JATEC)
③病院前外傷救護法(PTLS)
(イ)薬物治療
①使用頻度の多い薬剤の副作用・相互作用・形状・薬価・保険適応を理解して処方することができる。
②適切な処方箋を記載し発行できる。
③処方、調剤方法の工夫ができる。
④調剤薬局との連携ができる。
⑤麻薬管理ができる。
(ウ)治療手技・小手術
簡単な切開・異物摘出・ドレナージ 止血・縫合法及び閉鎖療法
簡単な脱臼の整復 局所麻酔(手指のブロック注射を含む)
トリガーポイント注射 関節注射(膝関節・肩関節等)
静脈ルート確保および輸液管理(IVHを含む) 経鼻胃管及びイレウス管の挿入と管理
胃瘻カテーテルの交換と管理  
導尿及び尿道留置カテーテル・膀胱瘻カテーテルの留置及び交換  
褥瘡に対する被覆治療及びデブリードマン 在宅酸素療法の導入と管理
人工呼吸器の導入と管理  
輸血法(血液型・交差適合試験の判定や在宅輸血のガイドラインを含む)  
各種ブロック注射(仙骨硬膜外ブロック・正中神経ブロック等)  
小手術(局所麻酔下での簡単な切開・摘出・止血・縫合法滅菌・消毒法)  
包帯・テーピング・副木・ギプス等による固定法 穿刺法(胸腔穿刺・腹腔穿刺・骨髄穿刺等)
鼻出血の一時的止血 耳垢除去、外耳道異物除去
咽喉頭異物の除去(間接喉頭鏡、上部消化管内視鏡などを使用)  
睫毛抜去  
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※詳細は資料「研修目標及び研修の場」を参照

6) 地域医療の経験について

(ア)適切な医療・介護連携を行うために、介護保険制度の仕組みやケアプランに即した各種サービスの実際、更には、介護保険制度における医師の役割および医療・介護連携の重要性を理解して下記の活動を地域で経験する。
①介護認定審査に必要な主治医意見書の作成
②各種の居宅介護サービスおよび施設介護サービスについて、患者・家族に説明し、その適応を判断
③ケアカンファレンスにおいて、必要な場合には進行役を担い、医師の立場から適切にアドバイスを提供
④グループホーム、老健施設、特別養護老人ホームなどの施設入居者の日常的な健康管理を実施
⑤施設入居者の急性期の対応と入院適応の判断を、医療機関と連携して実施
(イ)地域の医師会や行政と協力し、地域包括ケアの推進や地域での保健・予防活動に寄与するために、以下の活動を経験する。
①特定健康診査の事後指導
②特定保健指導への協力
③各種がん検診での要精査者に対する説明と指導
④保育所、幼稚園、小学校、中学校において、健診や教育などの保健活動に協力
⑤産業保健活動に協力
⑥健康教室(高血圧教室・糖尿病教室・高脂血症教室など)の企画・運営に協力
(ウ)主治医として在宅医療の看取りを含む10症例以上を経験する。
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